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また、単位を落としそう。

夜、寮の部屋で考え込んだ。

なんの成果もなく、帰国するなんて……。

マーティスさんへの思い。届けたいのに……。

大きな刺激があれば、感情が芽生える。

そんな都合のいい出来なんて……。


また明日考えよう。

眠ってしまった。


なんか……苦しい。

悪夢? 獣に追いかけられる夢。


ん?

煙?

臭いが???


目を覚ますと、どたばたと物音がする。


とんとんとドアを叩く音。

完全に目が覚めていない。

とんとんと音がする。うるさいくらい。


ドアを開けると、すごい煙が……。

はっ!!

「火事です。逃げて」

入居者の女性はそう言って、他の部屋に向かった。


とりあえず、服を着替えると、タオルだけ持って部屋を飛び出した。

ここは三階。

下からも煙が上がってくる。

持ってきたタオルを口にあてた。

みんな逃げたようだけど。

2階からも火が出ていた。

なんとか1階まで下りた。


あれ?!

人が倒れている。

煙が充満していた。

私は、タオルで口をおさえ、低姿勢で近づいた。

息はある。助けないと。


「誰かいますか?」

レスキュー隊が来た。

「こっちです」

一人のレスキュー隊が、火の中を潜って助けに来てくれた。

「この人を先に」

「あなたは?」

「私は一人で走れますから、はやく、この人を」

レスキュー隊は負傷者を背中に担いで、出口に向かった。


私も……。

はっ!

タオルに火がついた。

慌てて、振り払う。

その時、柱が倒れてきた。

「おーーーい」

レスキュー隊が大声で叫ぶ。

「行ってください」

私も叫んだ。


火のまわりがはやい。周囲に燃え移り……。

火の海となった。

こんなところで……これが運命だなんて……。

熱い……。


大きな音がした。

人の影?


マーティスさん?

レスキュー隊のマーティスさんだった。

「大丈夫かーー」

意外にしっかりした声。

「ここよ。でも、来ないで、もう無理」

「諦めるな」

怒られた。いつもの彼じゃない。


炎の向こう、姿が見えてきた。

「無理しないで、あなたまで死んでしまう」

「俺は……俺は、君を助ける」

力強い声。これがあのマーティスさん?

感情を失った国民の声?


「絶対に助けるからぁーーー」

マーティスさん、蘇った?


気を失いかけている。

「しっかり、負けちゃだめだ」

駆け寄るマーティスさん、その温もりを感じながら……倒れ込んだ。



病院で目を覚ました私。

レモーネさんとカノック先生の顔が見られた。

「よかった。無事で」

「私は……」

「彼が助け出してくれたんだ」

と、カノック先生。

その後ろに、サフラ先生とマーティスさんが立っていた。


「マーティスさん」

「命がけの救出だったらしい」


「どうしても助けたかった。君のことを……」

そう言って笑った。

「初めて見た、マーティスさんの笑顔」


「心を取り戻したみたいよ」

「サフラ先生、私がマーティスさんの心を?」

サフラ先生とマーティスさん、一緒に私の顔を見て頷いた。

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