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私は、またこの国を訪れた。今回はホテルに宿泊する。

建国記念のセレモニーがあり、ホテルは客でいっぱいだった。


大通りの周辺に人が集まる。

有力者たちのパレードが始まった。


貴族風の方々が馬車から手を振っている。

私も手を振ってみた。


その馬車の一つに、見覚えのある顔があった。

アーゼルトが馬車に乗っている。

その時、後ろから声をかけられた。

「お帰り、また会えたね」

振り向いた。

え!!

レスキュート男爵だった。


「どういう?」

頭が混乱してきた。


「あの方が、本物のレスキュート男爵なんですよ」


えっ!


一瞬時間が止まった。


え!! つまり入れ替わっていた?


もう一度、馬車の男性を見た。

アーゼルト、いや、本物のレスキュート男爵が、こちらに手を振っている。


「最初に申し上げたはずです、男爵はトリック男爵だと」


ということは、私がいただいたキスは、結局、男爵の唇ではなく、執事のキスだったってこと。


「お城にいた時、エミリア様の本当の心は、執事のアーゼルトを求めていたと思います」

確かに、アーゼルトの肌に触れることも多くて、怖かった時も助けてくれたり、

気持ちはアーゼルトに流れていた。


もっと、素直になれていたら……。


あの時、試験の合格なんて考えず、アーゼルトを選んでいたら……私の手には本物の男爵のキスが残ったのかもしれない。


試験の結果が出た今となっては、本物の男爵との関係もなくなった。

ホテルでゆっくり、頭の中を整理しよう。


そして、家に帰った。



大学に登校する。

また、単位が取れなかった。

私は、大学のキャンパスを歩いていた。

スケートボードの音がする。

振り向いた。

あの男性……。

「どう、異国の恋愛体験は?」

声をかけてきた。

ナンパ男だ。

笑っている。

「僕は、テリウス」

「あっ、白い鳩」

私は、校舎の上空を指さした。

上を向くテリウス。

ささっとその場を離れた。


名前は、テリウスか……ダメ、知らない男は……振り払った。忘れよう。

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