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食事は男爵とすることが多くなった。

相変わらず長いテーブルで、距離を離している。

しきたりなのかもしれない。静かに食事ができるのは、悪いことではなさそう。

時々視線が合ったりして、今、なにを思っているのだろうとか、考えてしまう。

料理はいつも豪華で、ビュッフェのようにいくつもの大皿が用意されている。使用人が一人分に盛り付けて運んできてくれる。

「ディレーヌ産・カモ肉のワインソース煮でございます」

宮廷のお姫様の気分は満喫している。

食後のティーは、執事のアーゼルトがいつも美味しく作ってくれる。

「お気に召しましたか?」

そんな気遣いに惹かれていく私。


ある朝、サラサが部屋にやってきた。

「お体の調子はいかがですか?」

と、訊ねてきた。

「特に、いつもと変わりはないけれど」

サラサは安心した顔をした。

実は、男爵が食あたりになったようで、医者が来ているという。

洗練された料理でも、個人の体質に合わない食材もあるようで。

異国から仕入れた調味料が原因とか。


私が部屋に見舞いに訪れると、男爵は薬を飲み眠っていた。


私は、アーゼルトと廊下を歩いた。

「しばらく安静にとのことです」

その時、思い出した。

病気が治るというお母様の水晶棒。あれを握れば。

後で、取りに行こう。

そんなことを思っていると、アーゼルトの足が止まった。

まだ知らない部屋がいくつもある。

「どうぞ」

その部屋に入った。


これって!!


絵画、肖像画の部屋だった。

歴代当主の絵が飾られていた。


私は、一人の女性の絵を見た。

「これはもしかしたら」

「レスキュート様の母、エルメルダ様でございます」

想像していた通り、綺麗な人。

「レスキュート様を大変愛されておられました」

なぜか、アーゼルトの瞳も光った。 涙? んなわけないか?



部屋を出て上の階を歩く。

男爵が子供の頃遊んでいた部屋を案内するというのだが、途中漆黒の扉を発見する。


これ!?


「その扉は開けてはなりません!!」

アーゼルトにしては強い口調に驚いた。

「開かずの扉となっております」

こういう城にもおとぎ話のような部屋があるんだ。


その時は黙って通り過ぎた。

その先にあるのが、子供部屋だった。

かわいらしい飾りのついた扉を開ける。

男爵が子供時代遊んでいたおもちゃ箱のような部屋だった。

動物のぬいぐるみ、人形、小さな滑り台……ここで遊ぶ子供の姿を想像してみた。

男爵が子供の頃……無邪気な笑顔……そしてお母様の愛~




私は一人、迷路に向かっていた。

男爵の病気はまだ回復していなかった。

病気を治すため、治癒力のある水晶棒を取りに来た。

入口で立ち止まる。

無事帰れるだろうか……でも、行くしかない。



子供用に作られたとはいえ、やはり迷路。

宝箱のある部屋はどこ?

松明の灯が、道しるべ。


ウォォーー

また聞こえてくる。

夜、寝室まで聞こえてくる狼の鳴き声。

放し飼いにしているというから、どこにいてもおかしくない。


ウォッォッォ

近くから聞こえてくる。

こんな場所で狼に襲われたら。


はやく宝箱を見つけて、水晶棒を持って男爵のもとに戻ろう。


また行き止まりだ。

松明だけを頼りに歩く。他に方法はない。


ん?

ウォンウォォ

近づいてくる!!

逃げるしかない。

気配が……獣が追いかけてくる!!

ヤダ……助けて!!


背中に感じる。小さな足音……四つ足で駆けてくる。

段々近くに……。

ウォ!!


キャァァー

しゃがみ込んでしまう。


「ギンロウ!!」

誰の声?

ゆっくり振り返った。

「エミリア様」

「アーゼルトさん」


「大丈夫ですか?」

助かった。

あれ!?


アーゼルトの足元に犬が???

「それって、狼では??」

「ギンロウです。男爵のお飼いになっている」

銀狼って、狼じゃなかったの?

アーゼルトはギンロウの頭を撫でている。

「狼のような声が……」

「犬の鳴き声ですよ。ただ、洞窟の中で吠えると反響して独特の鳴き声に聞こえるようで」


なんか、脱力感が……。


疲れを感じている。

「もう大丈夫だから」

目の前にアーゼルトが立っている。

私は、アーゼルトの胸にもたれてしまった。

アーゼルトは、黙って私の肩を抱いてくれた。


が、私にはやらねばならないことが。

「宝箱を探しているんです。男爵の病気を治すために」

「水晶棒のことなら知っています。行きましょう」

アーゼルトはギンロウを連れて歩き出した。


「あった!! これよ」

宝箱を見つけた。

その中には水晶棒が……。

私たちは男爵のもとに戻ることにした。

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