2話:天城彩香がゼクトと一緒にアヴァロンの町にやってきた
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※以下、[ ]内は人力の補助。
「でけぇ……」
目の前に広がる巨大な町を見上げる。
石造りの建物が立ち並び、中央広場では露店が開かれている。
「すごい賑わいだな……」
俺達は町の大通りを歩く。
「ここは交易の拠点となっている町だからね」
隣を歩くゼクトが言う。
「そうなんだ?」
「うん。この町は様々な場所から商人が集まる場所なんだ。ほら、あそこを見てごらん」
ゼクトは人通りの多い道を指差す。
「あっ……なんか人がたくさん集まってるな」
俺は目を凝らす。
大きな馬車の周りに大勢の人達が集まっていた。
「あれは?」
「行商団だよ。色んな国を渡り歩いて商品を売っているんだ」
「へえ〜」
「興味があるなら行ってみるかい? 今の時期だと珍しい品物が手に入ると思うよ」
「じゃあ行ってみようかな!」
「よしっ。それじゃあ行こうか」
ゼクトと並んで歩き出すと、周りの人達がこちらを振り向く。
そしてヒソヒソと話し始めた。
(やっぱり目立ってるのか?)
周りからの視線を感じながら歩いていると、行商団の元についた。
ゼクトは手を上げて声をかける。
「こんにちは。今日も盛況ですね」
「おお、これはこれはゼクトさん。おかげさまで繁盛していますよ」
「それは良かったです。ところで、今回はどのような商品をお持ちですか?」
「そうですねぇ……。まずはこれを見て下さい」
商人は袋の中から小さな木箱を取り出す。
「この中には魔導具が入っているんです」
「ほう……魔導具ですか?」
「はい。これがあれば魔力が無くても魔法を発動できるんですよ」
「なんと……それは凄まじい発明じゃないですか!」
ゼクトが興奮した様子で言う。
「まぁ、欠点もあるのですけどね……」
商人は苦笑いを浮かべた。
「欠点とは一体?」
「実はですね。その魔導具には魔力が必要ない代わりに、発動させる為の条件が必要なんですよ」
「条件……ですか?」
「はい。例えば『火属性』だったら、対象に向けて炎を発生させる必要があるんです」
「なるほど……」
「他にも、特定の音に反応して爆発したりとか、そういった制約もあるんですよ」
「ふむ……なかなか難しい物なんですね」
「まぁ、でも使い勝手は良いですよ。それに魔導具は安いものですしね」
商人の言葉を聞いたゼクトが顎に手を当て考える素振りを見せる。
「確かにそれは魅力的だ。しかし、問題は価格の方でしょう?」
「いえいえ、そこまで高くはないですよ。金貨一枚あれば十分買える値段ですからね」
[金貨一枚……どれくらいの価値かは分からないが、俺からすると金貨というのは一枚でも十分高いように聞こえる。]
[「そういえばゼクト、今いくらくらい持ってるんだ?」]
「そうだね……。一応一万枚くらいはあるかな」
「いちまん!? そんなにあるのか!?」
「うん。アヴァロンに来る時に、色々と買い揃えたかったからね」
「すげぇな……[それにしても一万枚なんて、どこにしまってるんだ?]」
「秘密だよ」
ゼクトは口角を上げる。
「うぐっ……。そう言われると気になるな……」
「まぁ、機会があったら教えるよ」
「ちぇ〜。いつか教えてくれよな」
[一万枚も持っているのが本当なら、ゼクトが欲しそうにしている金貨一枚の魔導具とやらは余裕で買えそうだな。]
[「で、それ買うのか?」]
「どうしようかな……」
ゼクトは腕を組んで悩み始める。
「ちなみにどんな効果がある魔導具なんだ?」
「『収納』という効果だよ」
「収納?」
「そう。魔導具の中に空間を作り出して物を入れられるんだよ」
「へぇ〜」
俺は改めて商人が持つ木箱を見る。
(便利な道具だな)
[悩んだ結果、ゼクトはこの魔導具を買]おうと決めたようだ。
商人と交渉を始めた。
「では、金貨一枚でいいですかな?」
「はい。お願いします」
ゼクトがポケットから財布を取り出し、中から金貨を一枚のせる。
「まいどあり〜」
商人は木箱をゼクトへと渡す。
「ありがとうございます」
「いえいえ。また来てくださいね」
商人は笑顔で言った。
「はい。是非とも」
[「そういえば彩香ちゃん、何か気になるものは見つけたかい?」]
ゼクトが話しかけてきた。
「んー……特に無いかな」
俺は適当に答える。
「そっか」
[行商団の元を離れると、]ゼクトが歩きながら聞いてきた。
「それで、彩香ちゃんは何が欲しいんだい? 僕がお金を出すからなんでも言ってよ」
「んー……」
正直言うと何も思いつかない。
「あっ、じゃあ甘いお菓子を買ってくれ!」
「ふふっ。甘いお菓子か……いいよ」
ゼクトは笑って了承してくれた。
「やったぜ!」
ゼクトと一緒に屋台へと向かう。
「おじさん、串焼きを一本ずつください」
ゼクトが店主に声をかける。
「あいよ。一本で銅貨一枚だ」
「わかりました」
ゼクトがポケットから取り出した硬貨を渡す。
「ほれ、お釣りだ」
「ありがとう」
「ところで兄さん。その嬢ちゃんはあんたの恋人か?」
「ええ、そうですよ」
「おい、ゼクト。そういう冗談は……」
「こりゃ驚いた。まさかこんな小さな子が恋人とはね……」
店主が目を丸くする。
「いやいや、子供ではありませんよ」
「そうなんですか?」
「はい。僕の愛しい人です」
「はははっ。そうですか。それなら納得です」
「あのさ……」
「なんだい?」
[「お前本気で言ってるのか……?」]
「もちろんだとも!」
ゼクトは爽やかな笑みを浮かべた。
[俺はその瞬間、とてつもない程に身の危険を感じ始める。]
「まぁ、若い内は色々あるだろうが頑張れや」
「ええ、頑張ってきます」
「おう、達者でな」
「では失礼します」
ゼクトは俺の手を取り走り出す。
「ちょっ、待って……!」
ゼクトに引っ張られながらも走る。
「はぁ……はぁ……」
ゼクトが急に立ち止まる。
息を整えてから周りを見回す。
「ここどこだ……?」
そこは薄暗い路地裏だった。
「アヴァロンの町の外れにある路地だよ」
ゼクトが答えてくれる。
「なんでそんなところに……?」
「君がいきなり逃げようとするからだろ?」
ゼクトは首を傾げる。
「いや、だって……あんな事を言われたら逃げたくなるだろ……」
「逃げる必要なんてないじゃないか」
「いやいや、大有りだから……」
ゼクトは不思議そうにしている。
「そうかなぁ……」
[妹が病死し、先程まで泣き暮れていた男の取る行動とは到底思えない……。]
「で、結局のところ、何が目的なんだ?」
「ああ、それね」
ゼクトは少し考えてから口を開いた。
「僕と付き合って欲しいんだ」
「断る」
即答してやった。
「うわ、酷い……」
ゼクトが苦笑いしている。
「酷くはないだろ。そもそも俺たちは初対面だし」
「そうだけどさ〜……」
ゼクトが頭を掻いて悩んでいる。
「じゃあ、友達になってくれないかな?」
「無理だな」
俺は即答した。
「どうしてだい?」
「お前は見た目は優男でも中身はただの変態だ。そんな奴と友人になりたいと思うわけがないだろ」
俺は言い切る。
「ぐぬぅ……」
ゼクトが悔しげな表情をする。
「それに、ゼクトのことは信用できない」
「どういうことだい?」
「俺はお前がアイリを殺した犯人だと思う」
「……」
ゼクトは何も言わずに黙っている。
「沈黙は肯定と受け取るがいいか?」
「……」
「構わないよ」
ゼクトがあっさりと認めた。
「やっぱりお前が殺したんだな」
「そうだよ」
ゼクトが微笑む。
[せめて、ただの変態であって欲しかった。]
[実の妹を殺した事をあっさりと認め、ゼクトは悪びれもせず微笑んでいる。]
[心臓の鼓動が急速に速くなっていく。このままでは、俺の命も危ないかもしれない。]
ゼクトがこちらに手を伸ばしてくる。
反射的に俺は後ずさった。
「ふふふっ」
ゼクトが笑う。
「君は本当に面白いねぇ」
「うるさい」
ゼクトが一歩踏み出し、また俺が下がる。
背中が壁にぶつかった。
ゼクトが壁を殴る。
鈍い音が響く。
ゼクトが拳を引く。
「ふふっ」
「なんで笑ってんだよ……」
「いやぁ、可愛い女の子が目の前にいるからね」
「気持ち悪い……」
「ははは」
ゼクトは楽しそうに笑っている。
[散々だ。]
[訳も分からず異世界に転生し、初めて出会った人間の正体がこれだとは。]
[細身な俺では、ゼクトを力で負かす事ができるとは思えない。]
この場から逃げようとしても、おそらくすぐに捕まるだろう。
「どうする?」
「……」
「返事が無いなら、僕の好きにしていいってことだよね?」
ゼクトが距離を詰める。
「やめろ……!」
俺はゼクトを押し退けようと手を伸ばす。
「ダメだよ」
その手を掴まれる。
「痛っ……」
「ああ、ごめんね。大丈夫かい?」
ゼクトは俺の手にキスをした。
「ひっ……!?」
「可愛い声を出すんだねぇ」
ゼクトはニヤリと笑みを浮かべた。
「や、やめろ……!」
「やめない」
ゼクトは俺の手を引っ張って抱き寄せてきた。
[まずい。]
[このままでは最悪な事になりかねない。]
[──俺は思い出した。こうした異世界転生ものの世界では、大抵、転生した人間に特別な力が与えられる事を。]
[俺に与えられた特別な力が何かは分からない……もしかしたら、何も与えられていない事だってあるかもしれない。]
[しかし、今はもうそれに賭けるしか無い。俺は力が発動するよう願うのと同時に、ゼクトを突き飛ばそうとした。すると──]
「ぐへぇ……!!」
俺はゼクトに押し倒され、地面に押し付けられた。
「な、なんで……?」
「ははは、君の願いが通じたんじゃないのか?」
ゼクトが愉快そうに言う。
「そんなはず……」
「じゃあ、俺は今、何を考えているか分かるかな?」
「……」
「ふふ」
ゼクトは俺の顔に手を当てて、自分の顔の方へと近づけていく。
「ま、待ってくれ……」
「嫌だ」
「や、やだ……」
[──その時だった。]
[突如何者かが現れ、ゼクトの身体を]蹴り飛ばした。
「ぐはぁッ……!」
ゼクトは地面を転がっていく。
「え……」
俺は突然の出来事に驚いている。
「あ、あの……」
俺は恐る恐る声をかけた。
「あなたは誰ですか?」
俺がそう聞くと、女性は振り返り、こちらを見て微笑んだ。
「私はアイリと言います」
アイリと名乗る女性がそう言った。
「アイリさん……」
[「──そんなはずがない!アイリは、アイリは俺が殺した!!殺したはずだ!!」]
[地面にうずくまり叫ぶゼクト。アイリはゆっくりと、ゼクトの方を向く。]
「ゼクト様。貴方が私の兄である事は分かっています」
「嘘だ……お前は俺の妹なんかじゃない……!!」
ゼクトは頭を抱えながら首を振る。
「私はゼクト様に妹として扱われていましたが、それは偽りの姿です」
「違う、違うんだ、アイリ……」
「違いません。私には記憶があります。貴方が私の本当のお父様とお母様を殺した事も覚えています」
「ち、違……俺は悪くない、俺は悪くないんだ……!」
ゼクトは頭を掻きむしっている。
「私は勇者になって、この世界を救いたかったんです。なのに、どうしてこんな事に……」
アイリの目から涙が零れ落ちる。
「そいつは……アヴァロンの町の奴らは皆んな悪い奴らなんだ……!俺が殺さないと……!」
ゼクトはフラつきながらも立ち上がる。
「もうやめましょう」
アイリが悲しげにそう言った。
「やめる?やめるわけないだろう……!?」
「なぜ、そこまでして……」
「……」
「答えられないのですね」
「うるさい……うるさいうるさいうるさい!!」
ゼクトは叫び、アイリに飛びかかる。
「危ない!!」
俺は思わず叫んでいた。
ゼクトは剣を振り下ろす。
アイリは避けようとせず、目を瞑ったまま動かない。
アイリは斬られた。血が飛び散る。
「──っ!」
俺は息を呑んだ。
「やった……!」
ゼクトが嬉しそうに声を上げる。しかし、その声はすぐに止んだ。
「──え?」
ゼクトは自分の手を見る。
手からは血が出ていた。
「な、なんで……」
ゼクトは呆然と立ち尽くしている。
そしてゼクトはそのまま倒れた。
「……!?」
ゼクトが倒れると同時に、アイリは目を開いた。
「──っ!!」
俺は驚いている。なぜなら、アイリは無傷だったからだ。
「ど、どういう事……?」
「これが私の力です」
アイリはそう言って微笑んだ。
「わ、訳が分からない……アイリは死んだはず……それなのに、生きている……いや、死んでいない……?」
「ふふ、どうでしょうね」
アイリはいたずらっぽく笑う。
「……とにかく、助かりました」
俺は立ち上がり、服についた砂を払う。
「いえ、いいんですよ」
「本当にありがとうございます。えっと……アイリさん」
「アイリで構いませんよ」
アイリは優しい笑みを浮かべている。
「では、アイリと呼ばせていただきます」
「はい、よろしくお願いします」
[ゼクトの妹、死んだはずのアイリ……。]
[それが、俺の目の前に現れ、俺を助けてくれた。]
[この奇妙な出会いをきっかけに……俺は]アイリと共に、世界を救う旅に出る事になる。