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ポラリスに潜入

 愛車に乗って突っ走る事1週間後の夜。ようやくポラリスに到着した。


「う~ん。やっぱり端から中心に向かうとなると遠いな~」


 背伸びをしながらポラリスの首都が見える崖の上そんなことをつぶやいた。

 愛車は元々ドラゴンで馬に比べると非常に速い。それ以前にバイクになっているのだから馬より早いのは当然だが、時速200キロ以上飛ばして走ってきたのに1週間もかかったのだから本当に遠い。


 ポラリスはこの大陸のほぼ中心に作られた宗教大国だ。

 そのため大陸の端から来てもほぼ歩いて1年かかるかどうかという距離だ。機械文明、より正確には化学が発展した大陸とは文明レベルがめちゃくちゃ低いので新幹線で簡単にとはいかない。

 しかもこの大陸で1番の宗教という事だけあってプライドが無駄に高い。基本的にすべて命令でえばり腐っているのだから手に負えない。

 素直に欲しい技術は下さいと頭を下げるのが筋だろうに。

 傲慢なだけで大した力は……無いわけでもないか。


 この大陸最大の宗教という事だけあり、どっかの国の王族よりも偉いと言われるのが枢機卿と言われる連中だ。戦闘能力に関してはろくにないが、口が達者で各国のパワーバランスを裏で操っていると言われる。

 そしてこの大陸で1番強い騎士団が聖国にいる極星騎士団ポラリス・ナイツ

 見習い騎士の頃から厳しい訓練を受け、この世界の厳しいレベリング設定の中で唯一平均的にレベル40を維持している騎士団だ。見習いでもレベル10前後、これはこの世界の住人にとっては非常に高いレベルである。プレイヤーから見るとそろそろ新人を卒業できるレベルか。

 そんな一般プレイヤーのレベルが30前後なのだから非常に強い。


 まぁ教皇を守る最上級の騎士、極点騎士ザ・ナイツはレベル90だから化け物と言っていい。

 教皇をぶっ殺して『傲慢』を得るときは本当に苦労したな……レベルは86と少し低いが既にほかの大罪スキルは手に入れたので多少低くても大丈夫かな?と下見程度に乗り込んだのだが簡単に殺されかけた。

 何故そんな格上に生き延びたかと言うと、彼らの最大の仕事は教皇の護衛だからだ。

 神の言葉を聞き、神の言葉を伝える別名神の口、なんて言われている教皇の神託は本当に神様の言葉を伝えるために存在しているからそんな彼、もしくは彼女を殺されてはならないと言うのが理由。


 あまり詳しい話は知らないが、俺が殺されるまでに新しい教皇は誕生しなかった。

 理由は神の言葉を聞くスキルが存在し、そのスキル所有者を見つけることが出来ていなかったからと言われている。

 確かスキル名はそのまんま『神託』。ランダムで選ばれるそうだが、前教皇の最後の言葉は必ず次の『神託』所有者が誰なのかを伝えるらしい。

 途中で殺された、つまり次の『神託』所有者が誰なのか不明なまま消えてしまったので、しばらく教皇が不在のまま維持する必要があったと聞く。


 まぁあれから300年経ってるから見ず知らずの誰かなのは確実だけどね。

 俺がぶっ殺したのは白いひげをきれいにまっすぐ伸ばした爺さんだったが、今の教皇ってどんな人だろ?半分はお飾りらしいから子供だったりしてね!な~んて勝手に予想してみたり。

 まぁ今回は教皇には何の用事もないからスルーする。

 すでに『傲慢』の空間把握能力で大雑把にだが俺のアイテムがどこにあるのか、そして俺をこの世界に引きずり込んできた神様の目的の男の子がどこにいるのか大体わかった。


 俺のアイテムがある場所は……禁書庫だな。なんで禁書庫?と思ったが理由はすぐに思いついく。

 俺の武器アイテム、つまり呪われたアイテムを補完するのにちょうどいいからだ。

 禁書庫には基本的に危険な魔導書、悪魔を召喚する方法が書いてあるものだったり、使うとマジで世界が終わるレベルの魔導書を使えないように厳重に封印を施してあるからだ。

 俺の呪われたアイテムもその中の1つとして厳重に封印してあるんだろう。俺にとって封印はあってないような物だがセキュリティーがどんなもんなのか、ちょっと気になる。


 そして問題は男の子がいると思われる場所。

 男の子がいるのは地下1キロ先にある個室、独房とでもいった方がいいのかもしれないな。そこに閉じ込められているのはまだいい。

 だが問題はその前に何者かが待ち構えていることだ。

 おそらく騎士団の誰かなんだろうが、1人だけのようなので神様を閉じ込めている場所を守っている相手なのだから並の相手ではないだろう。

 それにどんな結界を使っているのか、俺の『傲慢』でも直接転移できない結界で独房ごと守られている。最初は傲慢の転移スキルで直接行って、直接救出しようと思っていたのだが、これではできない。

 そんな結界が存在することすら初めての経験なので慎重に動くべきだろうな。


 とりあえず俺がこれからする行動はこんな感じ。

 まず傲慢のスキルが使える禁書庫に転移して俺のガチ装備を取り返す。そのあとに騎士の目の前に転移して騎士を無視して結界だけを破壊する。その後男の子を救出して転移を繰り返して逃げる。

 これが大雑把な流れ。

 まぁ禁書庫に侵入する事すら普通出来ないのだが、俺の場合はできるのでそれでいいのだ。


 と言う訳で愛車をしまい、早速禁書庫に転移した。

 禁書庫の中はファンタジー系の図書館のように浮いた本棚に見た目は普通にしまわれている。

 だがその本棚そのものが1つの結界に守られており、あとは危険レベルごとにその禁書そのものに何重もの小規模な結界で守られている。

 小規模と言っても効果は抜群だ。

 最低でも上級魔法の中でも攻撃に特化した魔法を食らっても壊れない結界を使っているのだからその本気度がよく分かる。

 と言ってもこの禁書庫の本全てと言う訳でもない。

 原本、つまりどっかの作者が直筆で書いた貴重な本もこの禁書庫の中に保管されているのでその場合は状態維持の結界を張られていると言う噂だ。


 そんな禁書庫の中で感じた俺を呼ぶような気配。

 その気配に従って禁書庫の中を奥に奥に進んでいくと、そこには禁書庫の中では異質な物が飾られている。

 片方は黒い服。上下黒くて一見地味だがコートだが、赤い線が血のように複数の線が入っている。

 コートと内服、ロングズボン、とある服屋に作ってもらった特注だ。彼女曰くこれが俺に似合うそうだ。俺が出来るだけ派手過ぎない感じがいいと言ったらこれをこしらえてくれた。なので服のワンポイントに赤い線を入れてくれた。

 俺が血のようだと言ったらちょっと引かれたけど。


 そしてもう1本。それは漆黒の刀。

 俺の愛刀である刀の名前は極夜。

 刀の刃も、刀身もすべて日の光に当てても一切反射することないほど真っ黒であり、最初に俺が見つけてどんどん強くしていった呪われた刀だ。

 最初は骨董屋で偶然見つけた『錆びた元妖刀』と言うアイテムで赤錆がくっついており、紙を切る事すらできないほどになまくらとなっていたが、何となくこいつを復活させたらどれぐらい強くなるのかと興味を持って鍛え上げ続けている間に俺の愛刀となった。


 だから他の武器を使って戦うときも一応あったが、その時は大抵刀では攻撃し辛い物理攻撃がダメージとなる相手ばかり。呪われた大剣とかで斬ると言うよりは叩き潰していたと言った方が正しい。

 なのでそんな敵以外は基本的に極夜ばかり使っていた。

 まぁ人間相手なら大抵は切り殺せるし、ゴーレムとか金属をまとっているモンスターとかばっかりだったな。鉱物系のモンスターは売るとかなりの値になるから懐的にはよかったんだけど、極夜とは相性が悪かったんだよな……


 さて、そんな俺の一張羅と愛刀をどのように奪い返すかと言うと『強欲』のスキルを使えば簡単だ。

 まずは念のために鑑定。この2つが誰の所有物であるか確認をとる。

 そして無事、聖国の物であると判定が出たので強欲を発動させた。

 強欲のスキルを発動させるには1つの条件が存在する。それは自身が所有していない物、という条件だ。


 何でそんなことが条件なのかだって?

 どうやらこの『強欲』は奪うことに特化したスキルのようだ。奪うと言う行為は自身が所有していないものに限定されているらしく、自分の物を奪うという事はできない。

 よく分からないだろうから例え話をしよう。


 例えば俺が極夜を落とし、相手に取られたとする。この場合極夜の所有権はまだ俺の物であり、相手は俺の武器を奪ったと言うよりはまだ手にしただけという事になる。

 この所有権と言うものはどうやら失ってから24時間経過しないと判定されないらしい。実際泥棒をした時は24時間以内に相手に返却しなかったら盗んだことになるとプレイヤー間のルールとなっている。と手誰かが落とした財布や小さなアイテムだったとしても、プレイヤーからすれば落ちてるものを拾っただけ、ではなく落ちている物を盗んだという判定を受けるわけだ。


 この泥棒の判断を基準としているのか相手が俺の物を拾ったとしても所有権はまだ俺にあり、俺が俺の物を奪うという矛盾を回避しているわけだ。

 それからこの間行ったリブラの中にあるアイテムを強欲で奪うという事はできない。

 これも金庫に保管しているのは俺の物であり、その場に預けているため、所有権は俺にあるので金庫内の物を強欲で奪うという事はできないのだ。


 だから鑑定で俺の物であるかどうかを確認した。

 仮に300年経っても俺の物と判定されたら実力行使でこの結界を壊さないといけないので無駄に時間を食う事になるのでできれば避けたかったからだ。

 鑑定の結果すでに俺の物ではないと判断されたので、早速強欲で俺のアイテムを奪い返す。

 服一式と俺の愛刀。極夜の方から迎えに来るのが遅いと言っているかのように呪いを俺にぶつける。

 常人なら即死レベルの呪いだが俺には効かない。だって状態異常無効があるもんね~。


 だが俺が2つのアイテムを奪ったとき、予想通り警報が鳴った。

 よくあるスパイ映画とかでしくじって赤いランプとうるさい警報音が鳴るタイプ。結界そのものは強固であるけれど、1つ防御力は低いが結構便利な結界がある。

 それは中の物がなくなった時に警報が鳴るようになっている結界だ。

 解除しようと思えば解除する事も出来たが、この方が次の場所に向かう際にいい囮になりそうだからあえてそのまんま警報を鳴らすようにしておいた。


 これでうまくいけば騎士達のほとんどをこっちに注目させることが出来るだろう。なんせ禁書庫だもんな。奪われると非常にヤバいブツが山のようにあるんだから大真面目に行わないといけない。

 そして俺は本命、つまり男の子を助けるために彼が多分とらわれているであろう部屋の前に転移した。


 あ、その前に当然着替えを。装備は持っているだけでは意味がないよ!


 転移した先は当然と言えば当然なのかもしれないが、一歩手前の廊下は無機質で何もない。

 長方形に切られた石を積み上げられたとしか言いようがない廊下。光源は一切なくたいまつによる明かりや魔法による光も一切ない。

 そんな廊下の先にある部屋は鉄製の扉で閉じられており、適当に言ったが本当に独房のような印象を受ける。

 もしくは厳重な金庫とでも言ったところか。重そうな鉄の扉であり、本当に人の手で開けることが出来るのかすら怪しい。


 そんな扉の前にいるのは正直言って意外な騎士だった。


「…………子供?」


 そんな風にしか見えない、非常に幼い騎士。より正確に言うと髪を尻辺りまで伸ばした女の子だ。

 女の子と言える年齢一桁、ギリギリ中学生に見えない事もない……ような感じの幼い少女。そんな女の子がこの扉の向こうにいる誰かを奪われないようにしているのなら驚愕だ。


 地下であり、一切の光源がないはずの廊下で女のは俺に向かって斬りかかってきた。

 ここに居るという事は当然戦えるという事なんだろうが、スピードは対処できるな。

 女の子が持つ武器はレイピアと言われる針のようなタイプの剣。スピードが出やすく、軽いのが扱いやすいとは言い切れない。

 その理由は細長いので耐久力が低いという事と、剣が曲がってしまう可能性が非常に高い事。それなりの経験値を積めば細くて曲がりやすい性質を利用し、曲がった状態で正確に刺してくる事などもできるがこの子はどうなんだろう?


 あ、できた。曲がったレイピアで正確に俺の心臓を刺そうとしてきた。狙いは悪くないし、素人だといきなり頭や首を狙うが、本当に戦闘経験が多いプレイヤーは滅多に頭を狙わない。

 その理由は的が小さいからだ。

 頭よりもはるかに大きい的である胴体を狙った方が確実にダメージを負わせることが出来るし、女の子と俺の身長差ではレイピアを俺の首に届かせるだけでも一苦労する。

 だから素直に俺の胴体を狙って来たのだからそれなりに経験値があると思っておいた方がいい。


 だが俺の目的はあくまでも奥にいる男の子だ。

 俺は女の子の剣を居合で払いながら扉と結界を破壊するために斬撃に様々な効果とバフを乗せて結界にぶち当てた。

 それなりに頑丈そうな結界なので多少本気で攻撃したのに一切壊れる気配がない!?

 大罪系のスキルを使ってなかったけどそれでもレベル99の攻撃だぞ!大抵の結界は力尽くで破壊できるはずなんですけど!!

 地味にショックだ……こんな結界存在とは……300年の時間経過の内に結界の技術が向上したのか?浦島太郎の気分ってこんな感じだったのかな……


 そう思いながらも後ろから女の子が俺の事を殺そうとレイピアを振るうが簡単に躱せる。

 あ~もう!この結界を破壊する事を考えているのに邪魔をされるとさすがに気に入らない。

 子供を殺すのは何となく気が乗らないので半殺し程度でいいか。うまく気絶してくれれば楽なんだけどな。


 そう思いながら極夜を鞘に入れた状態のまま女の子の頭を狙う。

 これで殴れば多分気絶するだろ。そう思って攻撃したのにこちらを見ずに回避された。

 女の子は見事な動きて空中でひねって回転しながらまた俺と顔を合わせるように着地し、レイピアを構える。

 今のは……予知系のスキルのか?もしくは危険察知系の直感スキル。

 なんだか攻撃は下手なくせして逃げるのだけは上手だな。


 ならこれならどうよ。

 そう思って攻撃した方法は簡単。短い転移で女の子の背後をとり、鞘に入った状態の極夜で殴るだけ。

 なのにまた避けられた。

 初見でこれをかわした奴は初めてだぞ。しかもしゃがんで俺にレイピアで突き刺そうとするし、相手のスキをついて戦うタイプか?

 それなら攻撃が下手で納得。こういうタイプって暗殺者タイプと言うか、真正面から戦う事って滅多にないんだよな。だから基本的に受け手、逃げて隙を作って一撃必殺を狙う。


 あ~これ面倒だわ。

 とりあえず憤怒で俺の力を倍にしてごり押ししてやろうか。

 仮にあの部屋を守るために他の部屋や土地が利用されている可能性はないとは言い切れないし、その方が強力な結界を張ることが出来る。


 次に憤怒で強化した身体能力で襲うと女の子の周辺に結界が張られた。

 どうせ砕けるだろうと思って思いっきり殴ったが、こっちもビクともしない!?

 表情に出さず、連続で攻撃してみるが砕ける様子はない。女の子の周り、360度全体を攻撃してみたが完全にノーダメージだ。


 だが1つ弱点も発見した。

 俺の後ろの結界が、男の子を封じている結界が解除されている。

 つまりこの結界はこの女の子のスキルによって張られているという事が予想できる。これほどまでに強力なスキルは知らなかったが、結界特化のスキルを所有しているんだろう。

 しかしその制限として結界が張れるのは1つの範囲内だけ。

 どれほどの面積を覆うことが出来るのかは分からないがここまで強力だと面積でも制限がある方が自然だ。


 だから俺は憤怒を使用したまま女の子と部屋を同時に攻撃する。

 片手を女の子に向け、もう片方を部屋に向けて魔力砲撃で攻撃する。

 魔力砲撃は魔力を魔法に変えずに攻撃するもっとも簡単な長距離攻撃であり、自分自身の調整1つでいくらでも威力や距離を調整できるので便利だ。

 部屋の方に与える攻撃を弱めに、女の子に与える攻撃を強めにすることで部屋の解除、もしくは女の子を倒すことが出来ると考えての行動だ。


 しかし女の子は俺の攻撃を見切りながら部屋の前にたどり着き、部屋ごと女の子も結界の中に引きこもってしまった。

 とりあえず今の行動で危険察知系のスキルではなく、予知系のスキルを持っていることは判明したな。


 予知系のスキルと危険察知系のスキルの違いはその見え方だ。

 予知系のスキルは次に来る攻撃の軌道や種類などが見える。どこの角度から攻撃が来るのか、どんな攻撃が来るのか目に見えるし、予知系だと自身の死角だろうがすべて見える。

 その代わり様々な情報が一気に頭の中に強制的に入ってくるので非常に頭が痛くなると聞いたことがある。

 その代わりどんな攻撃が来るのか、どの種類の攻撃が来るのか明確に分かるのが大きなメリットだろう。

 しかし弱点がまったく無いわけではない。

 それこそ目に見えない攻撃、例えば状態異常を起こす魔眼系スキルが天敵と言える。視線から攻撃が来るのは分かるが、どのような効果が起こるのかは分からないからだ。

 あくまでも予知できるのはどんな攻撃が来るのか見えるだけ。その後の状態異常までは見ることが出来ない。

 ちなみに風系の攻撃は同じように無色だが、砂などによって動きが分かるらしい。


 危険察知系のスキルは何となく分かる程度の物。

 何となくこちらから攻撃が来る。しかしどのような攻撃が来るのか分からないのが危険察知系のスキルだ。

 予知系よりもあやふやでどのような攻撃が来るのか分からないが、どれだけ多くの攻撃が来ても何となくなので頭が痛くなるようなことは無い。

 しかし経験を積めば大雑把にはどんな攻撃が来るのか察することはできるようになる。


 なのでまとめると予知系スキルは強力ではあるがデメリットも大きい。察知系のスキルはプレイヤースキルが求められるスキルと言える。

 俺の場合は察知系スキルなので相手からどのような攻撃が来るのか何となく分かるぐらい。でも戦いの危険値はかなり稼いでいるので何となくでも大体の攻撃の軌道は分かる。


 さて。

 女の子が結界の中に引きこもってしまったが、これをどう攻略するか……

 この結界は力尽くでは破壊できない結界だし、スキル系だとすると壊すのは難しいかな……

 どう攻略するか考えてみるが、こうなると強欲で何か奪えるか試してみるか?

 強欲の場合ほとんど運なんだよな……さすがにギャグマンガみたいに装飾品を奪うっては逆に難しすぎるけど。


 とりあえず俺は女の子に向かって強欲を発動。

 すると何かを奪った感覚があった。だが掌には何もない。

 これは……スキル系を奪ったか?でも少し違ったような……

 感覚としては鎖をつかんだような感覚。でもこれって確か……


 そう思っていると結界が解除された。

 そして女の子はレイピアを腰に戻し、トコトコとこちらに近寄ってきた。

 その表情は全くの無表情でただじっと俺の事を見上げる。

 これは……やっぱりか?


 今の強欲で手につかんだ感覚は相手の奴隷を手に入れた時の感覚だった。

 いや~たまに悪党と戦うときはあるし、その時に奴隷を前に出して戦う奴らがいたんだよ。その時に強欲を発動すると奴隷を奪うことが出来たんだよね。

 やっぱりあの感覚だったか……


 しかし1つ疑問が残る。

 奴隷を奪う際にはその奴隷の主人から奴隷を奪う、と言う行為をしなければならないわけだ。だが俺は女の子に向かって使ったのに女の子が手に入ると言うのはおかしい。

 女の子の主人は誰だ?そもそも女の子が奴隷だったとはどういうことだ?この子は騎士じゃないのか?


 様々な疑問が思い浮かぶ中、女の子は無表情のまま俺のそばでじっとする。

 とりあえず何もしないし、結界も解除しているのでまぁいいか。


 なんだかよく分からない感じで勝った?みたいなのでとりあえず男の子を助けるとしよう。

 扉にカギはかかっておらず、重たいだけで引いたら普通に開いた。

 その奥にいるのは鉄製の十字架に鎖でぐるぐる巻きにされている少年がいた。目にアイマスクをされ、鎖で縛られた姿はキリストの姿にも見ている気がするが、本当に幼い男の子。さすがに子供が鎖でぐるぐる巻きにされているのは見ていていい気分がしない。

 とりあえずこの男の子を外に連れ出してあとは……あの神様が出てくるかどうかなんだよな……

 鎖を極夜で切り裂き、男の子を開放して肩に担ぐ。


「…………う……き、みは」

「ただの誘拐犯だ。おとなしく誘拐されろ」

「は、はは…………へん……なの」


 男の子はそう呟いて気絶するように俺に身を任せた。

 それじゃ俺はこの子を連れて……

 そう思っていると女の子が俺の事をじっと見ている。

 この子の主になってしまったのだから面倒を見ないといけないだろう。


「ついてくるか?」


 俺がそう聞くと女の子は何も言わずにただ頷いた。

 何か攻撃するそぶりもだますようなそぶりもないので俺は連れていくことした。

 ………………自分から爆弾抱えているような気がするのは気のせいじゃないと思う。

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