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事件発生?

 おっちゃんに頼んで魔剣の砥ぎ方を教えてもらって1週間、おっちゃんは地面に膝をついてもの凄い暗い雰囲気を出していた。


「そんな……そんなまさかたったの1週間で……」

「これは驚いたね。うちの人も200年くらい修行してようやく研ぐ事が出来たのにたったの1週間で研げるようになるなんてねぇ」


 そう。俺はたったの1週間で魔剣を砥ぐ事が出来るようになっていた。

 魔剣を研ぐ条件はおっちゃんが言うには大きく分けて3つの条件がある。

 1つ目は魔剣を砥いでいる砥石、魔剣専用の最上級砥石である仕上げ砥石を使用する事。

 2つ目は魔剣に飲み込まれない強い意志を持つ事。

 3つ目は魔剣の意思を感じる事。


 魔剣や聖剣を砥ぐ事そのものは普通に技術さえあればいい。

 ただし魔剣は精神的に侵食してくる危険物だし、聖剣は危険物でなくとも気難しい武器だ。

 魔剣の場合は心を許していなければ浸食されて砥ぎ師が魔剣片手に暴れ始めるし、聖剣だといくら擦っても砥げない。

 それに意思があるという事は人間が医者にどこが痛いか言うように教えてくれるのでそこを正せば切れ味はより良くなる。


 で、俺はその3つの条件は最初から持っていたので純粋に砥ぐための技術を学んでいたのだが……おっちゃん曰くもう上出来らしい。

 正直自分ではうまくいっている気がしないが、本当に大丈夫なんだよな?


「それじゃおっちゃん。こいつらの事もう砥いでいいんだな?」

「大丈夫だろうな……おのれ魔剣使い!!」


 そんな事言われてもな……

 とにかく俺はおっちゃんの工房を借りて魔剣を砥ぎ始めた。

 刀や剣、短剣と言ったものはまだマシだが斧や槍となると砥ぐのが大変だ。

 単純な大きさと重さ、これが意外と厄介だ。


 だがそれでも魔剣達が満足するまで黙々と砥ぎ続ける。

 工房から魔剣を砥ぐ音だけが響き、他の音は聞こえない。


 なんて集中して砥いでいる間に残る魔剣は極夜だけになった。

 極夜の事も砥いであげると心地よさそうな雰囲気が流れてくる。

 時々これで合っているのかどうか確認しようとすると、極夜から大丈夫だと言う雰囲気が流れてくる。

 そんな極夜からMPをくれという要望が来たので流し込む。


 正直言って極夜はかなり特殊な魔剣だ。

 以前話したように極夜はとあるクエストで手に入れた魔剣だが、その状態はまさに死にかけの魔剣と言うのにふさわしい状態。

 刃はボロボロで柄の部分もボロボロ、さやはなく一部錆びている。

 そんな極夜を魔剣だからとの理由だけでおっちゃんの所に持ってきて、様々な魔剣のクエストをこなしながら魔剣を奪い、ボロボロの魔剣を新しい魔剣に修復してもらったのが極夜だ。

 だから極夜は様々な魔剣が混じった魔剣である。


 300年前に手にしてからずっと使い続けてきた愛刀。

 たっぷりと俺のMPを食わせると満足した雰囲気を出したのでそれ以上MPを流すのをやめた。


「おっちゃん。確認頼む」

「おう」


 そう言って俺が砥いだ魔剣を1つずつ確認していくおっちゃん。

 極夜を含むすべての魔剣を確認し終えると息を吐きだしながら言った。


「全部よく砥げている。まったく、100年前ならこれ全部俺がやって稼げたっていうのに。勿体ない事をした」

「年ばっかりはどうしようもないだろ。今いくつだっけ?」

「今は800を超えた。仕方ないと言えば仕方ないが、それでもこれだけの魔剣を使える物などそういまい」

「魔剣コレクターだからな。さて、それじゃ代わりにこの魔剣用の砥石を売ってくれ。できるだけ多いと助かる」

「こっちも結構高値なんだがな……今ある分は全部売ってやる。今後欲しくなったらこの店に行け。一応魔剣用の砥石も売ってる」

「助かる。さて、あとはネクストに合う武器を見つけ出さないとな」

「あのエルフの嬢ちゃんか?それなら家のを連れて行くと良い。武器の目利きはあっちの方が上だ」

「おばちゃんが?なら頼んで――」

「親父いるか!?」


 話をしているとドワーフの男が現れた。

 まだ大人になってあまり時間が経った感じのしない男。

 多分300歳くらいのドワーフじゃないだろうか?

 そしておやじって。


「何だバカ息子。俺に何の用だ」

「親父にしか頼めない事が出来たんだよ!町の事本当に興味なんだな。とにかくオヤジの知識が必要な事態になったんだ。鍛冶ギルドにまで来てくれよ」

「鍛冶ギルド?なんだってそんなところに行かなきゃならん。ちゃんと引退するから脱退届も出したはずだ」

「そうじゃなくて、魔剣の事件が起きたんだよ!だから親父が必要なんだよ!!」


 おっちゃんの息子はそう叫んだ。

 魔剣による事件だと?

 時代遅れだ何だと聞いた後にはずいぶん珍しそうな事件だな。


「魔剣だと?このご時世にか?」

「だからみんな珍しいんだって。どこかの盗品の可能性もあるから、すぐに冒険者ギルドに依頼を出すこともできないんだ。ある程度の情報は集まってるから来てくれ」

「分かった。そんなわけだナナシ、悪いがちょっと出かけてくる」

「おっちゃんも気をつけてな」


 俺はそう言ってからおっちゃんを見送った。

 魔剣騒動か。

 ゲームだったころは何度もやったクエストだったな。

 おばちゃんも出てきて不安そうに言う。


「魔剣なんてそう簡単に出てこないのに、いったいどうしたんだろうね」

「おばちゃん。悪いけど俺には300年前の知識しかないんだ。今の時代そんなに魔剣って珍しいのか?」

「珍しいよ。300年前までは少しでも良い剣を作るために魔剣製作に取り組んでいた子も多かったけど、ポラリスが他国を吸収していくにつれて魔剣は危険なだけで実用性がないって変な噂を広げられたせいで売れなくなっちゃったからね。代わりに聖剣が売れるようになったけど、聖剣だってそう簡単に作れるもんじゃない。だから最近は普通の武器を作るようになっちゃったのさ」

「普通の武器ばっかりか……」


 魔剣の生み出し方は2種類ある。


 1つは戦場で生み出されるもの。

 それは最初の頃は普通の武器であり、戦場で多くの命を奪ったり、冒険者が魔物を殺したりしている間に頑丈になり、そして殺すという意志が生まれる。

 そこから殺された人や魔物からの恨み、もしくは途中で死んだ元所有者の意志が武器に宿り魔剣となる。


 もう片方は最初から魔剣として作られた場合。

 鍛冶師が少しでもいい武器を作れるように、混ざりこんだ執念とでもいうべき意志。

 戦場で生み出されたものと比べてほんの少しだけ性能が落ちるが、使い続ければそう変わらない性能となる。

 ただしどこまで成長できるかは鍛冶師の腕次第。


「俺がいたころは魔剣と聖剣、どっちもかなり作られていたと思うけど。これが時代遅れってやつか」

「そうかもしれないね。ギリギリ聖剣を作ってる人はいるけど、そういうのはポラリスの連中に目を付けられるから慎重になっている者もいる。今じゃ聖剣はポラリスが認めた剣、ていうのがここ100年くらいの常識になりつつあるからね……」

「それってもしかして不良品掴まされてる感じ?」

「そうだね。でも聖剣と言っておけば持ち主のやる気も上がるし、嘘でも悪い事ばかりじゃないからね……」


 なんだかポラリスは本当に詐欺師のようなことばっかりやっているような気がする。

 俺が知っている300年前と比べてだから仕方がないのかもしれないが、ドワーフのおっちゃん達から仕事を奪うのは気に入らない。

 俺も結構悪いことしてるがやっぱり規模が違うな。


「さてと、それじゃお嬢ちゃんに合う短剣を見繕ってあげようかね」

「おばちゃん良いのか?店番してなくて?」

「店はとっくにたたんでるから店番なんてもう言わないんだよ。ほらおばちゃんのエスコートしな」

「では旦那様に代わってエスコートとさせていただきます」


 と言うわけでおばちゃんの事をエスコートしながらネクストたちと合流しに向かうのだった。

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