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リブラを目指す

 名前もよく知らないこの薄汚い街を歩いていると、早速カモが来た。

 相手は3人のゴロツキで顔中に傷のある無駄に筋肉だけはあるおっさんだ。向こうから見れば俺の方がカモなんだろうが、実力差があり過ぎる。


「おい坊主。大人しくしてりゃ痛い目に遭わないで済むぜ」


 下品な笑みを浮かべながらにじり寄ってくるおっさん達だが、俺はため息をついた後に一番近くのおっさんの股を蹴り上げた。

 足に感じたのは2つの丸い物がぐちゃりと潰れる感触。靴越しとは言え気持ち悪いったらありゃしない。

 おっさんは股間を抑えながら泡拭いてぶっ倒れている間に他の2人は急いで逃げようとしたが、『傲慢』の空間魔法で近距離でテレポートを繰り返して同じように股を蹴り上げて気絶させた。


「ふん。見た目でしか強い弱いを捕らえられないってのは哀れだな。精々哀れな姿で生き残ってくれや」


 気絶しているおっさん達から金目の物と解体用の包丁だけを奪い取り、その場を去る。

 この現場を見ていた連中は多く居るが、俺と目が合うとすぐに視線を逸らして関わらない様にする。そして気絶しているおっさん達はみすぼらしい恰好のガキ共がおっさん達から余った身ぐるみをはぎ取っていく。

 あっと言う間に裸にされたおっさん達は最後に見知らぬおっさん達の手によってどこかに引きずられていった。さっき相手したおっさんよりは強そうだが、所詮は普通の人から見れば強いぐらいのレベル。プレイヤー換算だと10ぐらいって所か。


 このゲームは1度きりと言う事もありプレイヤーのレベルを上げるのは簡単ではない。1度の死で全データがぶっ飛ぶのだから慎重になるのは仕方がない。

 リアリティーを追求した結果とよく言われるが、プレイヤーからすればただのクソ仕様だ。

 でも今半殺しにした感触で何となく分かった。

 これは現実リアルであり、遊戯ゲームではない。

 いくらVRで触った感覚や痛みが感じると言っても何というか、全て膜越しに触っている感じがしたというか、直接触っている感じがしなかった。だと言うのに今のは靴越しとは言えはっきりと相手を蹴り上げた感触がしっかりと届いてきたのだから多分現実だ。


 それにしても……やっぱり大した額は入ってねぇな。

 一応冒険者としてやってきたであろう連中だったが、財布の中に入っているのは3人合わせて1万円ほど、この世界の冒険者の収入って低いんだっけ?それともあいつらが弱すぎて稼げてないだけか?


 俺はため息をついてから古着屋の前を通りながら『強欲』を発動、俺に合う服を奪いながら装備した。

 その後も店の前を通るたびに『強欲』を発動させて食料や武器などを奪い続ける。スキルがあるからこそスリ感覚でポンポンアイテムを奪う事が出来るが、最初の頃はアニメの銀行強盗みたいに一軒一軒飛び込んで奪ったもんだ。

 そんな風に思い出しながら町の外に向かう。


 歩きながら分かったとこだが、どうやらマップはまた一から更新し直さなければならない。

 前はこのゲームの世界中を歩き回ったのですでにマップは完成していたのだが、一度死んだからかもう一度最初からマップを作り直さないといけない様だ。

 と言っても最初から最強の大罪系スキルを所持しているし、特に傲慢の空間把握スキルのおかげで少し歩いただけでかなりの広範囲をマッピングする事が出来る。

 俺を中心に9900メートルマッピングできるのだから他のプレイヤーに比べればより正確に、広範囲で精密にマッピング出来るので取りこぼす事はほぼない。


 そう言えば……他にもプレイヤーは存在するのだろうか。

 定番と言えば定番だが、俺以外のプレイヤーが敵として現れる可能性は考えておかなければならない。味方になる可能性も全くないとは言えないが、俺の事を知っていれば仲間になろうとするやつはいないだろう。

 まぁ今回の件があまりにも特殊過ぎて他のプレイヤーが居るかいないかする分からないが、俺達がゲームで行なってきた行動がそのままゲームにも影響を受けている可能性は非常に高い。


 実際俺が殺された理由はこの世界で俺が好き勝手にし過ぎたせいだ。

 見栄えのいい令嬢や姫を無責任に抱き、性的な快楽に溺れていたのが理由だ。だからその親の貴族達から刺客を送り込まれてきた。まぁそいつらは全員返り討ちにしてぶっ殺したけど。

 最大の罪は当時の教皇をぶっ殺した事だが、その他にも恨まれていた事が多い。


 俺ほどレベルが高くなかったけれど、俺の事を倒そうとした6人のプレイヤーが居たな……あいつらどうなってるんだろ。

 あいつらのレベルはおそらく50~60前後と言う所だろう。俺を捕まえたのもこいつ等だし、俺ほどではなくてもそれなりに強かった事を覚えている。

 というか俺と同じようにレベルカンストしてた奴っているのか?ただでさえ一度死んだだけで新しいアバターの制作から始めないといけなくなるため、どうしても慎重にならざる負えない。

 だから基本的に高ランクと言われるプレイヤーのほとんどのレベルは50から60ぐらい。単体で弱くても連携でどうにか倒すのが主流だ。

 でもあの子供のいうことが正しければ300年経過しているわけだし、あいつらの事は深く考えなくてもいいだろう。

 まさかほかのプレイヤーも300年後の世界をプレイしているわけじゃないだろうな。


 俺はマッピングのため、あえて歩きながらリブラに向かうのだった。


 ――


 街の外に出て俺の記憶を頼りにリブラに向かってまっすぐ進む。

 すでにどこかの森の中であくびをしながら歩いてる。

 このゲームの世界は本当に広大だ。普通なら馬を使ったり、車を使ったりして移動するところだが今は愛車も全部金庫の中だしな……


 例の銀行は金から宝石、武具だけではなく大き目の車やバイクまで最高の状態で保存してくれる。

 ファンタジー世界なのになんで車があるのかだって?だってそういう科学文明が発達した国があるんだもん。


 海底資源をもとに発展してきたディープブルーという国で小さな島が密集した国が存在する。

 そこにはファンタジーというよりもSFチックな世界観であり、様々なゴーレム、そしてキメラ研究が行われている。

 ゴーレムに関してはほとんどロボットだ。ディープブルーの技師たちが作った戦闘用ロボットであり、うまくいけば軍の正式装備として販売することもできるほどの力の入れようだ。

 ちなみに動かし方は最初からプログラミングされているタイプや、ラジコンのように遠隔操作するタイプ、アニメのように操縦者が乗り込んで操作するタイプの3つが作られている。


 主に作られているのは遠隔操作タイプと乗り込むタイプ。プログラミング系だとプログラミングされていない動きに付いて行けないためにネタ程度にした作られていない。

 元々ゴーレムその物があまり特別ではない。工場生産による流れ作業で、量産しやすいことが最低基準だし、特別な一点物となると、どれだけ性能が良くても金がかかるため採用されない。

 もっと言うと強力なスキルを持った個人の方が圧倒的に強いので、乗り込み用のゴーレムは力のない人のための兵器という位置に居る。


 そんな国で俺も1台だけ強力な愛車を作ってもらったのだが、まだ動くよな?ずっと金庫の中に入っていたと思うとその辺が不安だ。

 ガソリンの代わりにMPを消費して走る事が出来るのでガス欠になる事はないが、300年も使っていなかったと考えるとやはり不安になる。


 空間転移のスキルを使えば移動も簡単になるが、跳躍した間の空間はマッピングされないのでこの世界を隙間なくマッピングするにはこうして地味に移動している方が確実だ。

 だからこそ愛車が欲しいんだよな……楽だし、早いし、ダラダラできるし。

 あ~、死ぬ前に装備してたアイテム以外全部金庫に預けなきゃよかったかな~。どうせリスタートできない訳だし、全部持って暴れた方がよかったかな。

 そう思いながらダラダラと歩くのだった。

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