初夜後でも変わらない
「はい次~」
翌日、早速若い貴族王族の獣人達を鍛えると言う名目でイジメまくる俺の姿があった。
基礎トレーニングとか全く知らないし、そう言うのはプロに任せてとにかく実戦を積め。っと言う感じで俺の孫、約200人を同時に相手している。
いや……子供が多ければ孫も多いね。
どうやら今日の訓練でシリウスが分家の子供も全員呼んで来いと言ったらしく、ほとんど俺の孫ばっかり集まってきてしまったらしい。
それだけ貴族の女の子達を抱いたと言う証拠なのだが……うん。下ネタだけで伝説作れたかも知れねぇ。
「ふ!」
「ユウ嬢。もう少し相手を自分のペースに持ってくる事を意識した方が良いですな。体力と防御力に自信があるのは分かりましたが、それでも楽に戦うには相手を自分のペースに引きずり込む技術が必要です。この様に」
そしてユウはシリウスの私兵団がユウの相手をしてくれている。
シリウスの私兵団はぶっちゃけると爺さん婆さんばっかりの引退した者達ばっかりの集団だった。
200歳を超えてもまだ戦闘意欲がある者達を選出し、シリウスの護衛及び戦闘技術を学ばせる教官の立ち位置でここに居るらしい。
しかし今回は俺が若い連中を相手にしているので暇な彼らにユウの指導をお願いしたのだ。
ユウは魔物とばかり戦っているので対人戦での技術がほとんどない。ポラリス騎士団の剣技は使えるがどうも型を見る限り対人と言うよりも対魔物と言う印象の強い型ばかりであり対人戦の型はあまり見られない。
この訓練が始まる前にユウと軽く試合をし、型にはまった動きと型にはまらない戦闘方法のどちらがユウに合っているか聞いてみると型にはまっている方が良いと結論付けられた。
と言っても俺はずっとソロで剣道の型のような戦い方、そしてこの世界の騎士団に伝わる型のような戦い方は全然してこなかった。
あえて言うなら冒険者の剣、型にはまらず生き残るための剣術と言う物に近いらしいので俺ではユウの指導には出来ないので彼らに任せた。
獣人達は戦い方に関してはかなりのプロ集団。
魔物を倒したり、ポラリスがいつ攻め込んできてもいい様に対人戦も常に準備している。
最も戦い方に柔軟な種族と言えるかもしれない。
人間だと対人特化か魔物特化かはっきり分けていてどちらも出来る者は少ないし、ドラゴンの様な種族は武器を使わないからユウの事を指導できない。
つまり型にはまった戦い方を学ぶにはこの獣人の国が最もいいと俺も考えていた。
と言ってもユウが本当に型にはまった戦い方と、型にはまらない戦い方のどちらがいいか見極める事ができなかったから彼らに任せたのだけど。
「ユウの方は順調そうだな。そしてお前ら俺の血を引いてるんだろ?もう少し驚かせてくれ」
ライオンの貴族の腹を蹴り飛ばしながら俺は呟く。
俺の血を引いているから多少強いと聞いていたが、ぶっちゃけレベルが高いだけで戦闘経験がろくにない。
平均でレベル70前後と言うのはそれなりに良い方である。
だがそれに比べて戦闘技術は中の下、及第点行っていればいい方だ。
実際俺に攻撃する前から心が折れていると言うか、俺の試合を知っているからか思いっ切り攻撃する事すら出来ていない。
これじゃいくらやっても意味ないよな~っと感じながら一撃で仕留める。
全員腹パンしてうずくまっているのを確認してからこんなもんかとため息を吐く。
「それでどうでしたか!ナナシ様との夜は!!」
「あの強い方と交わったのですから、それはきっと激しい夜を過ごしたのでしょう!!」
「レナ様が待ち続けた方との初夜なのです。それはきっと夢のような時間だったのでしょ!?」
「えっと、その、くぅ~ん」
ちなみにレナは奥様方に囲まれていた。
コイバナと言う物は年齢に関係なく盛り上がる物らしい。そのためレナが昨日の夜に俺と交わった事は即行でバレ、質問攻めにあっていた。
レナは困りながら、恥ずかしがりながら俺の事をチラチラ見ているが好きにしろとしか言いようがない。
恥ずかしいなら言わなければいいし、自慢したいと言うのであれば言えばいい。
俺の無関心な反応をどうとらえたのか分からないが、レナはぽつぽつと話し出す。
「その……思っていた以上に甘くて、優しかったです」
「優しかったのですか?少し意外ですね」
「ええ。あれだけの試合を見せていたのですから、夜の方も激しいとばかり思っていました」
「それでそれで!甘いとはどういう事でしょう?」
「その、最初から激しい訳じゃなくて、キスをされて、頭を撫でてもらってから甘やかしてもらってから初めてを捧げました」
「「「「「キャー!!」」」」」
奥様方がキャーキャー言ってる……
「その後は……尻尾の付け根や耳の根元を撫でてもらいながらするキスはその、砂糖菓子よりも甘く感じて、それでもしつこくなく、いつまでもキスをしていたいと感じる様な……そんな甘さで……」
「キャー!!キャー!!」
「レナ様!?その表情はずるいですよ!!」
「そうです!!完全に乙女の表情じゃないですか!!」
「だ、だってずっと思い続けた人とようやく交わる事ができたのですから嬉しいと感じるのは当然です!!」
「それでそれで!続きはどうなんです!?どんな風に交わったのですか!!」
「それはその……最初は甘いだけだったのが時間と共に激しくなっていき……甘くて、刺激的で……ナナシ様と私の境界線があいまいになってしまった様な感覚になり……ああ、交わるって本当に1つになるって意味だったんだと知りました」
顔を真っ赤にしながら説明するレナの姿に、奥様方はとうとうキャーですらなくそれぞれの動物の鳴き声に変わってしまった。
その声は完全に発情期の動物の鳴き声であり、やかましいにも程がある。
レナに関しては自分で説明しながら恥ずかしくなったのか、狼の姿になって俺の元に駆け寄ってくる。
俺はレナを抱き上げながらよしよしと落ち着かせる。レナは俺の胸に顔をうずめて悶絶していた。
そこにレナの弟、シリウスがやってきた。
「ようやく姉上に春が来たのはよろしいですが、あまり騒ぎ過ぎないようおねがいします」
「俺じゃなくてあっちの奥様方に言え。きっかけはレナだが騒がしいのはあっちだ」
どんどんレナの声が小さくなる中、反比例して奥様方の声がどんどん大きくなる。
俺の耳でもレナの声が聞こえなくなるほど小さくなったと言うのに、奥様方はさらにキャーキャーと盛り上がる。
それを見たシリウスは苦笑いをしながら言う。
「彼女達はずっと姉上の恋愛に興味があったからのう。姉上自身もこの日を待ちわびていた訳ですし」
「レナが待ってたのは分かるが、奥様方がレナの恋愛に興味があったって言うのは何でだ?」
「姉上は昔からナナシ様と結婚すると言ってずっと待っておられたわけですから、それが美化されて貴族の娘達から最も一途な方っとそのように評価されておるのですじゃ」
「美化は酷いと思います」
「そうです!レナ様は他の者達を一切排除し、ずっと清い身で居続けたのですから!!」
「私達では300年も待てませんよ」
こちらの話を聞いていたのか奥様方が抗議に来た。
レナはあわあわしながら止めようとするが、奥様方の勢いは止まらない。
「いくら発情期が来てもレナ様は強靭な精神力で他の雄と交わる事なく今日この日まで純潔を守る続けてきたのです!それを美化などと言う言葉で片付けてはいけません!!」
「そうです!レナ様は美しさだけではなく力も一級品。お母様から聞きましたが若き日にナナシ様に相応しい女になるため、旅をしていたと聞きましたわ!!」
「それだけではなく料理や裁縫など本来であれば使用人が覚える事も覚えて……」
「それだけではなくいつあってもいい様にと美しさに磨きをかけ続け……」
「その上でレナ様に言い寄る雄たちをバッタばったとなぎ倒し!!」
「300年後の今!ついに結ばれたのです!!」
スゲー暴走している感じがするが、レナは顔を真っ赤にするだけで何も言わない。
それとも言えないのか?恥ずかし過ぎて。
「な、ナナシ様。た、確かに料理とか裁縫も努力しましたが、彼女達は大袈裟に言っているだけで――」
「何をおっしゃいます!!レナ様の恋は国中が知っている事です!!」
「最も一途な方、最も尊き方と言われているのですよ!!」
「そんな事を言われても……」
レナは奥様方の勢いにのまれ、たじたじになっているのをシリウスは何か考えている。
「どしたのシリウス?」
「……ふむ。いや、老後の楽しみとして娯楽に力を注いているのですが、これは娯楽に出来るのではないかと一考しておりました」
「何する気だよ」
「姉上の恋物語で1つ舞台などどうかと」
それを聞いた大半の反応は面白そうだと興味津々な感じ。
で、唯一1人だけ絶望しているのが当然レナだ。
「シリウス!?あなた何を言っているの!!」
「良いではありませんか。姉上もこの先ナナシ様と共に旅をする身、ならその前に名を残すべきでしょう」
「演劇で名を残してもしょうがないでしょ!!」
「いえ、きっと姉上の名は永遠に残ります。恋物語の実在人物として」
「シリウス!!」
レナが怒ってシリウスに襲い掛かるが以外とシリウスの逃げ足が速い。
それに子供の頃から鬼ごっこをしていたからか、レナの動きを事前に察知してレナの攻撃を避ける避ける。
シリウスも王族だが結構レベル高いんじゃないか?
なんて思いながらもそろそろ時間だから行くか。
「ナナシ、どこに行く?」
「例のトラ親子と一発ヤってくる」
「晩御飯の前には帰ってくる」
「りょうか~い」
さて。
もうしばらくしたらこの国を出て次の旅に行くが、どうするかな~。