祝勝会後
「そんじゃ長い話は無しにして、乾杯!!」
「「「「「カンパーイ!!」」」」」
料理が出来た後俺達はさっそく祝勝会を始めた。
自分達で作った料理だけではなく、悪の女神にやらせた寿司の出前、配達されたピザなど、とにかく大量の料理をテーブルの上に並べてそれぞれ思い思いに食べている。
そんな俺達の中心にいるのはもちろんユウだ。
助け出せただけではなく、身体も急成長し女性らしい体付きになったのだから注目を集めるのは自然な事だろう。
「ユウ。ずいぶん急に成長しましたね」
「レナさん。うん。これで守られるだけじゃなくなったよ。これでちょっとは戦えるかも」
「それはいい心意気です。ですがそう簡単に追い越されるほど弱くはありません」
「それでも少しは追いつけるよう頑張ってるもん」
なんて話しているユウとレナを見ているとホッとする。
ようやくいつもの日常が戻ってきたことを実感するというか、そんな感じ。
俺も料理を適当に食っているとまた悪の女神がこっちに来た。
「まだなんかあるのかよ」
「何も。ただ大罪人と呼ばれた男が求めた物が、ちょっと探せばすぐに見つかりそうなもので満足しているのが意外なだけ」
「俺自身意外だよ。お前にこっちに来ないかと聞かれた時は前と変わらない生活をするとばっかり思ってたからな。どっかで悪事を働いて、他人に迷惑かけながら自分1人楽しむ生き方。仲間も家族も作らず悠々自適に過ごす、そう思ってたんだけどな~」
それを変えたのはユウと出会ってから。
初めて仲間と言うか放っておけない奴が出来て、そいつは赤ん坊の様に何も知らないからつい世話をしてしまって、『愛』って何だ~って言うから一緒に考えたり。
子育てってこういう事なんだろうな~っと思ってしまった。
だから今俺がこうして家でみんなと居るのはユウと出会ったからだ。
ユウと出会っていなければこうしてのんびり過ごしていなかっただろう。
「そして今度は元法王もやってくると。さらに賑やかになるのか」
「そのうち1人はあなたに恨みを持っているけどね」
「誰だよ?」
「聖女ちゃん。もうすぐあなたの子供を産みそうなの。正直その子のためにこっちに来るのを待っているようなものよ」
「へ~。そう言えばあの戦争で聖女ちゃん見かけなかったけど、妊婦だったから戦争を回避してたのか」
色々納得。
あいつらが信じる神がいたとはいえ、犯された怒りがある聖女が俺に襲ってこないのは違和感があった。
だが妊娠していたことは知っていたし、少し考えればすぐに分かる事だったかもしれない。
「俺の子だから俺が育ててもいいとは言ったが、聖女も一緒に来るとは思わなかった」
「一緒は嫌?」
「別に。ただ夫婦としてやっていくのは無理だろうからってだけだ。それに赤ん坊がいればユウ達にもいい刺激になるだろうし、結婚した後のいい予行練習になると思う」
「子供作る気あったんだ」
「当然だろ。というか300年前だって子供作る気でしか犯したことないぞ。だからこそほとんどの貴族令嬢が俺の子を孕んだわけだし」
「ところで貴族令嬢を狙ってた理由は?」
「どうせなら血統がいい方が良いかな~とか、どうせなら綺麗な方いいよねって軽い理由だぞ」
「あ~。当時は貴族の女の子達の方がスタイルよかったものね」
「そうそう。漫画やアニメみたいに平民や奴隷でスタイルのいい奴なんて全然いなかったからな」
簡単に言うと貧富の差という奴で、人間の平民や奴隷は満足な食事をとる事が出来ず背が低かったり、女性らしい体付きになっていない事の方が多かった。
別に太っている女性が好きと言う訳ではないが、かといって栄養が足りてない貧相な身体を抱く趣味もない。
痩せてる女の子が嫌いと言う訳ではないが、不健康に痩せてるのはな……
「スレンダーな女の子も嫌いじゃないんだけどな……」
「この世界で健康的に育っている女の子なんて滅多にいないから。貧民は本当に貧しい暮らしをしてるから」
「この世界想像以上に貧富の差が激しいよな。だからこそ稼いだんだけど」
「稼ぐというよりは奪ってきた、があなたにとって正しいんじゃない」
「否定するつもりはねぇよ。でもま、本当にこの世界で手っ取り早く金を稼いだり食料を得るには罪を犯す方が早かったからな」
それだけこの世界はまだまだ日本には遠く及ばないという事なんだろう。
何よりこの世界は人間だけではない人種が多くいるのに全くと言っていいほど協力体制が出来ていない。
まぁそれをやるのは政治家さん達の仕事だし、俺は絶対首突っ込まないけど。
「善人よりも悪人の方が得をする世界。それがこの不平等な世界だから」
「神様がそれ言っていいのかよ」
「事実だからどうしようもないでしょ」
「でも神様が口に出していい物でもない」
「その現実を変えるのは人類たちの頑張り次第。この世界がどう転ぶかは今を生きてる人たちに任せっきりにして、私達はそれをのんびりテレビを見る感覚で見守っていればいいのよ」
「それに関してはそのままでいてほしい所だ。光の神のように干渉されるのはごめんだ」
「そうね。もう二度とこんな事が出来ないようにするつもりだから」
「旦那を閉じ込められるのはもう二度と嫌だって事か?」
「それもあるけど、ナナシに頼りっぱなしの世界は面白くないから。これ以上過去の人間を使うようなことはしたくないわ」
そう言うと酒を取りに悪の女神は去った。
旦那である正義の神はポラリスの改変に忙しいみたいだし、あまり長い時間付き合う気は元々なかったのだろう。
俺達は祝勝会を楽しむのだった。
――
その日の夜。
何故かユウが俺のベッドの上にいた。
珍しくレナ達はおらず、ユウだけが俺のベッドの上にいる。
枕を両手で抱え込むようにしながら女の子座りをして何か期待しているような、恥ずかしがっているような表情でいた。
「どうした、こんな時間に」
「えっと、その。この間の答え、聞きたくって……」
枕で口元を隠しながら言うユウは本当に女になったんだと初めて自覚した。
そしてこの間の答えと今の態度、予想はつくがユウを落ち着かせるためにわざとふざけた事を言う。
「あ~この間の答えな。別に明日でもいいんじゃないか?」
「ひ、人が勇気を出して言ってるんだから今答えてよ!!」
ユウは恥ずかしさからか顔を真っ赤にしながら言う。
でもこればっかりはきちんと聞いて確認してからじゃないとお互いに傷付けることになる。
だから俺は聞く。
「答えるのはいいが、俺の場合それだけじゃ済まないって事は分かってるんだろうな」
「う、うん。一応……」
「覚悟できてるのか」
「い、一応……レナさん達から色々聞いた……」
「そうか。それじゃ言うぞ」
「う、うん!」
ガチガチに緊張しているユウに俺は真面目に言う。
「正直最初の頃は娘とか、親戚の女の子程度にしか思ってなかった。色々知らない事の方が多すぎるし、ぶっちゃけ世間知らずすぎて放っておけなかったって言う方が正しいと思う。でもお前のおかげで今こうして平穏な時間を過ごす事が出来てる。お前と出会う事が出来なかったら300年前と変わらず馬鹿な事して周りに迷惑をかけるだけだったと思う。だからユウ、俺を変えたのはお前だ。そんなお前といつまでも一緒に居たい。俺もお前の事を愛してる」
そう言うとユウは静かに涙を流した。
少し涙のせいで鼻をすすっていたが、まぁ喜んでいるようなので良しとする。
「ほれティッシュ」
「ありがとう……」
鼻をかんだユウは照れくさそうに俺から視線を逸らす。
後はまぁ……成り行き任せか。
「他のメンバーは多分気を使ってくれてるんだろ?でも急ぐ必要はないし、落ち着いてからでいいか?」
「あ、出来ればその……やっぱりエッチな事はしてほしい……」
「そうなの?焦る事はないぞ」
「で、でもやっぱりこういうのはうまくいった日にした方が良いってレナさん達も言ってたから……」
「まぁ雰囲気は出るわな。で、本当にするの?」
「し、したい……です」
ユウが顔を真っ赤にして枕で顔を隠すので俺はユウの頭を撫でる。
するとユウは安心したのか、顔を上げて気持ちよさそうに撫でられる。
そうしている間に自然と目が合い、キスをした。




