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帰宅

 頭の先から股まで両断した光の神は悲鳴を上げる事すらなく激しい光を放った。

 つい目を腕で覆って光が落ち着くのを待つと、そこは大聖堂の屋上だった。

 大聖堂の屋上には俺とユウ、戦いを見ていた法王、そして見知らぬ男が膝をついて息を荒げている。


 男は脂汗を流しながらフラフラと無理矢理立ち上がろうとする。

 男の顔は清潔感はあるが目の下に大きな隈を作り、不健康そうに見えた。

 それこそマンガで大袈裟に書かれている何日も徹夜したブラック企業のサラリーマンみたいだ。

 服装もスーツではあるが何日も洗っていないように見えるほどヨレヨレで、明らかにくたびれている。

 この状況で俺達以外の人物は1人しか思いつかないが、一応確認してみる。


「お前、もしかして光の神か?」

「…………だから、なんだ」


 不健康そうな男改め、光の神は俺の事を憎しみに満ちた表情で睨み付ける。

 だが足元はフラフラでいまにも転びそうなほどだ。

 そんな光の神を慌てて支えた法王。

 光の神は少し驚いたような表情をしたが、法王は当然という態度で言う。


「私はあなた様の信者です」

「…………助かる」


 光の神は少し照れ臭そうだったがおとなしく法王の肩を借りる。


「で、なんで生きてんの?確かに手ごたえはあったはずだが」

「私は神。この世から光という概念がなくならない限り不滅」

「なるほど。それじゃこの後は……どうしようかね。正義の神を閉じ込めてたところに閉じ込めてやろうか」


 俺が思いついて言うと、法王が前に出た。


「この方は我々の神であり、私達を導こうとしてくれた方です。力はありませんが、精一杯の抵抗はさせていただきます」

「勇気は認めるけど、それは実力があってこそだ。力のない正義は無力なだけだ」


 無慈悲に言うと法王は悔しそうにするが、それでも光の神の前に出る。

 良い覚悟だし、殺すと後が面倒くさそうなんだよな……

 まぁ無視して殺してもいいけど、それなら次の手を打つだけだ。

 そう思っているとちょうどいいタイミングで正義の神が現れた。


 わざとらしいくらいに神々しい雰囲気を出しながら空から降りてくる。

 他の連中から見れば素晴らしい光景なのかもしれないが、俺の目にはあまりにも派手な演出に苦笑いしているようにしか見えない。


「あれって正義の神?何で今更来たの?」

「いいから黙ってみてろ。いいとこ食わせてやるんだから」


 そう言いながら指を唇に当てた。

 ユウは理解はできていないけど何か理由があるんだろうと黙った。

 そして光の神は正義の神の事を非常に強く睨み付ける。

 その表情はまるで親の仇を見るかのようで、目は吊り上がり、歯をむき出しにしてまるで獣だ。

 そんな光の神を見ながら正義の神は言う。


「久しぶりですね、光の神」

「今更何しに来た!!何もしない偽善の神め!!」

「私にとっての善行が何もしない事だと悟っただけですよ」

「何もしない事が善行だと!?それを偽善と言うのだ!!何もせずただ眺めていただけの貴様が気に入らないからこそ我が前に出てきたのだ!!何もしない貴様のどこが正義だ!!」


 光の神は正義の神に向かって大声で叫ぶ。

 その声にはただ怒りだけではなく、悲しみのような物も感じる。

 おそらく正義の神が人間のために行動しない事が本当に気に入らなかったんだろう。

 もう光の神の目に俺達は映っていないようで、正義の神の事しか映っていない。


「私にだって色々考えがあって動けなかったのですが……」

「そんなもの理由になっていない!!なぜ人間を助けようとしなかった!!」

「……人間だけを助けるわけにはいかないんですよ。他の獣人も、人魚も、全て大切な存在なのです。ですから人間だけを救うというあなたの考えには共感できません。もう少し――」

「なぜ彼らを守ってはいけない!!彼らこそ我々神々を崇拝してくれる存在であり、他の者達とは違い真面目に信仰してくれている!!そんな彼らに幸福を与えて何が悪い!!」


 叫び続ける光の神。

 さて、シナリオだとここら辺からだと思うんだが……


「…………では真実をお伝えしてもよろしいのですね」

「一体何の真実だ!」

「あなたは正義ではなくただの光であることを」

「貴様が動かないから私が人間達を救済しようとしただけだ!!これが正義でなければ何という!!」

「……分かりました。貴方が全てを照らす光ではないのであれば、残念ですが正義を実行させていただきます」


 そう正義の神が光の神に向かって手をかざすと、一瞬で光の神を極大の魔力が包んだ。


「神様!!」


 法王はそう叫んだが、光の神は一瞬でいなくなった。

 殺したのかと思ったが光の神はそんなことできるのか?

 あの甘そうな顔が俺の頭の中で浮かぶが、今の正義の神からはその心配はなさそうだ。

 いつもの優しそうな表情は消え、どこか悪の女神に似た冷徹な表情を見せていた。


「これで終わり?」

「いや、ここからが本番」


 ユウがそう聞くので俺はシナリオの事をユウに話す。


「正義の神側からの頼みでな、ポラリスの連中を無駄に殺さないように言われてたんだよ。その一環としてちょっとお遊戯を頼んでおいた」

「お遊戯?」

「ポラリスの連中をどうにかしたいのであれば正義の神が前に出て連中を説得しろって内容だ。まぁ内容は侵略だけど」

「侵略?正義の神が侵略出来るの?」

「出来ると言うか、出来るようにした。悪の女神と一緒に原稿を書いて光の神に叩きこませた。これでポラリスは光の神から正義の神の物になるはずだ」


 つまりポラリスという巨大宗教組織の乗っ取りを実行したのだ。

 もちろんこれに関して正義の神は顔をしかめたが、俺と悪の女神はノリノリで原稿を書き上げた。

 あれだけの巨大組織をこちら側に奪う事が出来るのであればこれほど価値のあるものはない。

 俺は裏から支配するつもりはないが、裏で協力体制はしてあげるつもりだ。

 簡単に言えばポラリスには対応しきれない事をこちらで対応する感じ。


 で、ここからが正義の神の演技力しだい。

 悪の女神は演技力がなくても大丈夫だと言っていたが、本当に大丈夫なんだろうか?

 正義の神は魔法でポラリスの領土全体にテレビ放送のまねごとをしている。

 簡単に言うと光の神は偽物で、自分こそが本物の正義の神である。だから今度から自分の言葉を聞いてねって感じの事を仰々しく言ってるだけ。


 俺は疲れたのでそろそろお暇させてもらう。


『みんなは無事か?』

『全員無事です』


 俺の問いかけに答えたのはレナだ。


『被害はどうだ』

『まだズメイが重傷ですが命に係わるほどではないかと。元々防御力と生命力が強いのが功をそうしました。現在はネクストが治療をしています』

『なら家に帰って祝勝会だ。ユウも取り戻した』

『ではお待ちしています』


 ズメイの奴はやっぱり生き残ってたか。

 まぁそう簡単に死ぬような奴ではないが、一応神の攻撃を食らったのだから心配した。

 なんて思っていると空から愛車がドラゴンの姿で飛んできた。

 俺の隣にユウがいることで安心したのか、ドラゴンの姿からバイクの姿に変わる。


「それじゃあユウ。家に帰るぞ」

「あ、ちょっとだけ我儘いい?」

「なんだよ」

「バイクで帰らない?ちょっと遠いけどさ……」


 ユウがそんな事を言うのはちょっと意外だ。

 でもここから家まではかなり遠い。

 バイクで今日中に到着するのは非常に難しい。


「……そうだな。それじゃ少しそこら辺とばして気分転換してから帰るか」

「うん!」


 ユウはそう言いながらバイクに乗った。

 もちろん運転は俺なのでユウは俺の後ろでしがみ付く。

 こうして俺達は光の神相手に勝利したのだった。

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