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教皇との会話 後

 教皇から不思議な事を聞かれてしまった。

 俺は茶をまた飲んで置いてから言う。


「いや、別に悪い事が楽しいからやってるって訳じゃないんだけど」

「ではなぜ悪い事をするのです?周りには悪い事をしない、悪い事はしてはいけないっと言う方達ばかりなので悪い事をする人が珍しいのです。快楽のためではないのですか?」

「まぁ面白半分でやってたこともあるよ。でも全部が全部そうかって聞かれるとそうでもないからな~」

「ではなぜ悪い事をするのです?しない方がいいと神も周囲の方もみんな言います」


 何だろう。

 どっかで似たようなやり取りをした気がするな……

 でもなぜ悪い事をするのか、それが何故快楽に繋がっているのかは言える。

 だから軽く話しておくのも悪くない。


「別に俺だって最初から悪い事だけやってきた訳じゃねぇぞ。途中から好奇心でやってみたくなっただけだ」

「好奇心、ですか?」

「ああ。そりゃ普通は悪い事、ルールを破る行為ってのは無駄に敵を増やす行為でもあるからやらない方が賢いってのは当然だ。でもそれがルール内で行っても問題のない行為だったら?俺はそれを確かめてみたかった」

「ルール内。善の中に悪は存在できないようにしていますが?」

「それじゃ聞くけど酒と煙草ってどう思う?」

「酒とたばこですか。我々はワインを飲みますし、煙草に関しては吸っている者もそれなりにいます。悪とは言えないのでは?」

「それじゃ知ってるか?酒には中毒性があるし、煙草は中毒性の他に癌、病を発症しやすくする効果がある。それを知った俺の地元じゃ酒はともかく煙草の方はかなり規制がかかったよ。みんな煙草を吸わずに健康的になりましょうって名目でな」


 俺がそう言うと教皇は目をパチパチと開けたり閉じたりして多分驚いている。


ワインと煙草にそんな悪性が?」

「あるよ。だから最初はそれらを試してみる事が俺にとって最初の悪い事。酒に関してはガバガバ飲んでるわけじゃないから今も飲んでるけど、煙草は口に合わなかったから吸ってない。そんなところから始まって今じゃあれこれ悪い事してるって訳」

「きっかけが好奇心と言うところは分かりました。でもなぜ続けるのです」

「どうせなにしたって誰かから見れば悪い事だからな、それじゃお前は酒の悪性を知ったからと言って酒を飲むのをやめるか?それとも知りながらもほどほどに使う続けるか?俺はほどほどに使い続ける道を選んだ。要はそれだけ」


 俺が完結だという感じで言うと教皇は少し考えながら言う。


「この世に善だけを取り入れようと努力しているのですが、それに関してもコウネリウスに面白い事を言っていましたね」

「あ~、平和の話か?」

「それもですがあなたにとって善悪の在り方を聞いてみたいです」

「在り方ってんなもん目の前にあって当然の物だろ?」


 むしろ善悪の在り方について問いかけられる、そのものに疑問を隠せなかった俺は質問し返すような言い方になってしまった。

 だから俺にとって当たり前の事を言う。


「人間は善と悪、どちらも持っている状態が正常だと思ってる。善だけの存在で自分自身をないがしろにして他人を助けるのもおかしいし、かといって誰からも悪だと指を突き付けられる存在も知らない」

「私は知っているぞ。貴様だ」

「ジャンヌ。口を挟まないように」

「確かに聖女から見れば俺は悪だろうが、他の連中から見れば俺は善だ。特に獣人からは大っ嫌いなポラリスの連中を殺すいいやつだと思われてる。だから獣人の国では仲良くやってる」

「それがあなたにとっての善悪の在り方なのですね」

「大体そんな感じ。お前らの聖獣の独り占めだって他人から見れば悪だろ?」

「そんなことはありません。ユニコーン達は――」

「身内から悪だなんて言われるわけねぇだろ。全員それでいいと思って行動してるんだから悪だなんて声が出るわけないだろ。第三者からの声を聴け。でないと本当に善か悪かなんて分かる訳ねぇだろ」


 当然の事を言っているのに教皇は考えるそぶりを見せる。

 俺はため息をついた後に言う。


「俺の行動だって基本的に第三者から悪だと言われても仕方のない事ばかりしているのは認める。というか認めたうえで行動し続けている。でもお前達は自分達の中だけで、お前達の言う教本の中だけの善悪で動いている。神様が認めたからこれは善、神様が認めないから悪。もっと言えば神様の存在を認めない奴は善悪を見定める必要もない?そんなんじゃ誰もつい来ねぇよ」


 俺は俺の中で当たり前の事を言う。

 前の世界ではすでに宗教と法律は別々の物として見ていたからこその視点なんだと思う。

 むしろ宗教と法律が一緒になっている方が怖いと感じる。

 彼らの宗教の教本を読まず、神様が何を禁じているのか、何をよいとしているのか知らないから無自覚に罪を犯していました。なんてなったらとんでもない事になる。

 これだから宗教国家は怖いんだ。


「……法と宗教は別であるべきだと。ナナシ様はそうおっしゃるのですね」

「そう言ったつもりだよ。それから聞いておきたいが、お前達の神様はどんな子が好きなんだ?」

「どんな子?」

「それこそ教本に書いてあるんじゃないか?あるんだろ?あなた達はこんな風になりなさいって言うのが」

「神の教えでは我々人間は清い者でないとならない。神を親のように思い、赤ん坊のように清い者が好ましいと教本には書かれています」

「うっわ、ロリコンかよ。いや、赤ん坊が良いって事はそれ以上か?とりあえず俺はその神と絶対に仲良くなれそうにない」

「その理由は?」

「だって赤ん坊を犯すなんて変態以外の何者でもないだろ。あ~こわ」


 久しぶりに鳥肌が立った。

 寒くもないのに両腕をさすり、鳥肌が落ち着くようにひたすら擦る。

 それを聞いた聖女は怒鳴る。


「我らの神を貴様の目線で決めるな!!神が赤ん坊を犯すなどとあり得ないだろ!!」

「その理由は?」

「神は我々を我が子のように愛しているという話であり、貴様のような下劣な話ではない!!」

「仮に神様が本当に赤ん坊を犯したいと思っていたら?」

「それこそあり得ない!!神がそのような下劣な視線を送るわけがないだろう!!」

「もうちょっと俺に合わせて言ってみて」

「神はロリコンではない!!」

「ではロリコンが変態な理由は?」

「…………何?」

「ロリコンが変態な理由。言ってみてよ」


 突然の話題の変化に戸惑う聖女だったが、普通に言う。


「当然だろ。赤ん坊が可愛いと思っても性的に捉えるはずがないではないか」

「そう思う理由は?」

「……普通はそうだろ」

「もうちょい具体的に言ってほしかったけど、俺の答えは簡単だ。孕む事が出来ないし、孕んだとしても赤ん坊を産めるとは思えないからだ」

「またそうやって――」

「最後まで話を聞け。いいか、俺達普通の人間が性的に変態だと感じる理由の1つは繁殖出来るか出来ないかだ。男と女なら子供が出来る。どちらかが病気だったり遺伝子に異常がない限りはな。でも男同士、女同士と言う同性同士では繁殖出来ない。無意味な性交だ。だからそいつらの精神は異常だと言って俺達は排除しようとしてきた。それこそ宗教的な方面や社会的な風刺でも何でもだ。

 ロリコン、小児性愛ってのは簡単に言えば俺がさっき言ったように孕む事が出来ない未成熟な相手に対して性的な感情を覚える、もしくは子供を孕む事が出来る時期になったけど安全に赤ん坊を産む事が出来ない相手に対して性的な感情を覚える。だから変態と言って排除しようとしてきた。

 これに関しては俺は真っ当だと思うぞ。孕めない子供に性的な興奮なんてしたことないし、犯してみたいなんて思った事がない。

 こんな感じで具体的に言ってほしかったな」


 俺の言葉に聖女だまり、教皇は吟味するかのように目を閉じた。

 そして教皇の方から俺に質問する。


「教本には真っ白なキャンパスほど美しい物はないと書かれています。あなたはどう思いますか」

「?それただの紙じゃん。何が綺麗なのか全く分からん」


 でもまぁ光の神と言う奴の性格は何となく分かった。

 あいつは潔癖症だ。

 どこまでも真っ白な物が好きで、少しでも汚れた物を嫌う。

 おそらく赤ん坊が好きだとか、真っ白い紙が好きだとかそんな事を言っているのであれば多分そんな方向性だと思う。

 ユウの事をあの牢屋の前にずっといさせたのは本物の善の神を閉じ込めておくだけではなく、ユウ自身を外界と切り離すための行為だったんだろう。


 無垢な存在。

 つまり何の知識もなく、何の知恵もない状態を光の神は美しいと言っているわけだ。


 全く。

 どこまでも俺とは違うな。


「お前達が崇める光の神は哀れだ。俺に言えるのはそんなところだ」

「哀れ、ですか?」

「俺は価値があると思った物は他人の評価なんて一切気にしない。自分が良いと持ったのならどんな落書きだろうとも手に入れよう。たとえ1度ゴミ箱の中に入れられた物だったとしても俺は拾う。俺にとって何も描いていない紙はただの紙、出来はどうであれその紙にどんな絵を描くかが大切だと思う。ただの白い紙を美しいという光の神は本当に見る目がないらしい」


 とにかくこれで分かった。

 光の神と言う奴はまだ何も手を付けられていない物、生まれて間のない者を好むようだ。

 確かに俺だって普通に成長し、善人として生きた者の事を美しいと思うかもしれないが、それは周囲の存在に触れたうえで白を保った場合だ。

 俺だって雪景色とかは嫌いじゃない。

 まだ誰も踏み込んでいない綺麗な雪原を美しいと感じる。

 でもその雪原は本当に白いだけではなく、森の中だったら木が雪をかぶっているかもしれないし、もしかしたら動物の足跡があるかもしれない。

 どれだけ白かったとしても、完全な白は実現不可能だ。

 でもそれが美しいと俺は思う。


 俺は立ち上がり『強欲』を起動させて図書館内にある封印指定の魔導書や呪われた武具を全て奪った。

 それと同時に警報がポラリス中に鳴り響くが俺と教皇だけは動じずうるさいサイレンの中普通に話す。


「いい話し合いだった。お前達が崇める神について色々分かった気がする」

「こちらもいいお話が出来たと思います。あなたの事を知れてよかった」


 そう話し合いが終わった後、転移して愛の国に帰らず、もう少しだけ『怠惰』について調べようと次は檻の国に向かうのだった。

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