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愛とは?

 ユウが着替えた後、ユウはオシャレな小学生みたいな感じになったのでまぁ見た目に関してはこれでいいだろう。

 その後ベレトと一緒にベレトの屋敷に向かった。

 ベレトの屋敷は意外と見た目はまともで、二階建ての大きな屋敷にしか見えない。

 だが中庭の様子をちゃんと見ると、木をハート型に切り揃えていたり、ピンクで背もたれがハートの形をしたベンチなどハートばっかり。


「美の国の癖にハートばっかりってのは面白みがなさすぎないか?もうちょい他の美術面も見てくれよ」

「私もそれは思ってるんだけどね~。残念ながらやっぱり愛=ハートってイメージはなかなか消せないのよ。消す必要はないけどナナシの言うようにもう少し他の作品が欲しい所ね」


 屋敷に向かいながら言うベレト。

 これじゃあ同じような物ばっかりで面白くないな。

 そして屋敷が開くと。


「「「「「お帰りなさいませ、ベレト様」」」」」


 可愛いメイドさん達がお出迎え。でも全員サキュバスだから当然と言えば当然なんだよね。

 これを見てユウはどう思うか少し不安だったが、特に反応はない。勇者としての仕事として教会の敵を全て抹殺するのが仕事かと思っていたが、流石にそこまで殺伐とした仕事環境ではなかったらしい。

 まぁもしベレトの配下に居るサキュバスたちを殺すようなら俺が主人の命令権で無理矢理止めさせる事も出来るけど。


「ただいまみんな。今日はお客さんが来たから腕によりをかけてちょうだい。それから2人とも私の部屋で過ごさせるから客室は別に使わなくていいわ」

「おいコラ。サラッと人のプライベート潰すな。特にユウとは違う部屋にしておかないとダメだろ」

「あら?性教育は必須よ。愛のある性交と、愛のないただ性欲を発散する性交の違いを教えてあげないと」

「性教育ってそういうのじゃないだろ。病気の感染とか、どうして交わる必要があるのか、そういう事を教えるのが性教育じゃないのか」

「それは全部外国の話。この国じゃ愛のある行為かどうかちゃんと見定める事が性教育なの。愛のない性交なんて私達にとってはただの食事でしかないじゃない」

「お前らの種族から見ればな。とにかくせめてユウだけでも違う部屋を用意してくれ。こいつには早い」

「分かったわよ……多分そこまで気が付いていないと思うけど、いい刺激にはなると思うんだけどな~」


 いい刺激って何だよ。性交で感情を無理矢理引き出す方法でもあるのか?……サキュバスだとありそうで怖いな。

 とにかく俺達はベレトの屋敷でしばらく暮らす事になる。

 屋敷の中は……意外と通路とかは普通だな。でも油断はできない。

 この国のだとラブホみたいなデッカイワンルームが一般的なんだよな。そのせいなのかどうか分からないが、基本的に風呂もトイレもあるが何の悪意かガラス張りである事が多い。

 たまに見つかる普通の部屋と思われる場合もあるけど、マジで滅多にないんだよな……

 ちなみにあまり金のない家でもでっかいベッドだけはおける作りになってる。どこに力注いでるんだよ。


 なので部屋に入るまでは油断できないのがこの国。

 しかも元領主の家なのだからどんな変態ギミックが付いているのかどうか分からないと言う恐怖もある。

 ぱっと見普通に部屋なのにボタン1つでマジックミラーのごとく外から内側を見る事ができたり、シャンプーかと思ったらローション出て来たり、引き出しからエログッズが出てきたりしませんように!!


「ユウ様のお部屋はこちらです」


 そう言われてユウの部屋を覗いてみると、意外と普通だった。


「この部屋は?」

「こちらはまだ小さなお子様のための部屋となっております。なので寂しい部屋となっておりますがお許しください」

「いや、それでいい。本当にそれでいいから」


 そんな未経験の人のための部屋なんてあったんだ。

 まぁ外国からの客が非常に少ないだけで全くいない訳じゃないだろうし、普通に部屋は必須だよな。それにしても小さなお子様のためって言うのもどうかと思うけど。

 部屋の中はリビングと寝室、トイレと風呂場しかないが小さな冷蔵庫もある。開けてみると冷凍庫も付いているみたいなので1人でゴロゴロするには丁度いいだろう。

 ユウには少し広過ぎる様な気がしないでもないが、それぐらいは見逃していいと思う。


 でも確認は必要だ。


「ユウ。この部屋1人で大丈夫か?」

「……べつべつ?」

「あ~うん。本当は俺もユウと一緒に居たいんだけどさ、ベレトが一緒に居ろってうるせぇんだよ。様子はちゃんと見に行くし、ユウが寝るまでは一緒に居るつもりだ」

「そう」


 それだけ言うとベッドの上に座った。

 ただそのまま動かない。マネキンか精巧な人形のようにピクリとも動かない。


「ナナシ♡それじゃ私達の愛の巣を紹介するわね」


 ちょっと心配になって一緒に居ようと思ったがベレトに連れていかれてしまったので仕方なく隣を歩く。


「なぁ俺の方からお前の部屋に行くからさ、普段はユウと一緒に居させてくれよ」

「む~。前のナナシならノリノリで着いて来てくれたのに~。やっぱり勇者ちゃんの事好きなの?」

「だから何でもかんでも恋愛感情に結び付けるなって。ただ俺は今あいつの主人で面倒見なきゃいけないし、今は大人しくしているが勇者だぞ。しかも防御力特化型の負けないけどメチャクチャタフな面倒なタイプ、弱い連中なら負けるぞ。それに元主人の神が何かしてくる可能性はないとは言い切れない」

「……分かったわよ。仕方ないからあの子を寝かしつけた後に夜這いに来てくれたら許してあげる。でも私の部屋がどんなのかは教えておかないとね」


 これでずっとベレトと一緒に居ると言う事は回避できそうだが、ベレトの部屋ってどんな風になってるんだ。


「ここが、私達の愛の巣で~っす!!」


 ベレトの部屋の前に来ると、ベレトは思いっきり両扉を開いた。

 そしてその部屋は!!


「うっわー……マジでラブホじゃん。しかもゲームでしか見た事ないようなハードな奴混じってやがる」


 ゲーム特有の空間圧縮的な感じで詰め込まれた部屋の中には、下品としか言いようがないエログッズから拷問用と言われても納得できるようなハードプレイのためのアイテムがそこら中に揃えられている。

 それでも比較的マシな所はベッドと風呂場だけ、それでもガラス張りでプライベートは一切なし。

 そして少し区画が変わると赤いロウソクに鉄製の手錠、様々な種類のムチ、磔台、縄、釘にカナヅチなどなど、ぶっちゃけ口に出してはいけない様な拷問だか何だか分からないアイテムがあった。


「お前、ドMだからってこんなハードなプレイばっかりしてるのか?ぶっちゃけドン引きだわ」

「や~ねぇ。それは食事用の男の子専用プレイ空間だから、血しぶきとかは全部タダのデザイン。それに最近はあっちじゃなくてこっち使ってるから」

「あっちこっち言われても分かんねぇよ」

「簡単に言うと搾乳機みたいなのを使ってるのよね。女の子場合は普通に搾乳機使ってるんだけど、男の子だとサイズ合わせるのがちょっと女の子に比べて大変なのよね」

「………………その変なの俺達の口に絶対入れさせるなよ。その場合即行で次の国に行く」

「大丈夫大丈夫。そこで搾り取った物は下級のサキュバス、インプの口にしか入らないから。普通のサキュバスになれば自分で精気を搾り取りに行くから」

「使わない道具なら処分しろよ」

「え~?だってナナシってSじゃない。一応使うかな?って思って取っておいたのに。それにあれを使ってナナシにイジメられるのも……」

「興味ないから普通にヤるぞ。あと萎えるからせめて俺の目の届かない所にどけてくれ」

「は~い」


 そう言ってリモコンに触れたかと思うと拷問部屋の様な所だけ壁が降りてきて隠れた。

 正直言って無駄な技術。壁が降りてくるぐらいならさっさと片付ければいいのに。

 そんな風に呆れていると、何故かベレトが俺の服を引っ張る。


「どした?」

「ナナシは前と同じようにイチャラブエッチが良いの?」

「出来ればそうだな。道具とか使って一方的に攻めても面白くないし、お前も気持ちよさそうな表情してると俺も気持ちいいからな」

「そっか……ふふふ」

「なんだよその笑い方。らしくない」

「だって300年前に最悪の人間なんて言われてたナナシがノーマルなのはみんな知らないだろうな~っと思ったらつい」

「知るかそんな事。それより飯だ飯」

「は~い。精の付く料理いっぱいごちそうさせてあげるね♡」

「……ちゃんと美味いんだろうな」


 少し不安になりながらも俺はベレトの部屋から出た。

 そしてユウを向けに行って飯を食った。ちなみに食べた物は一歩間違えればゲテモノと言われてしまいそうな食材込みで精の付く料理が大量に並んだ。

 蛇の唐揚げ、生牡蠣なまがき、ウナギなどなど、とりあえず全部食った。あの赤い飲み物は多分スッポンの血を混ぜた酒だな。

 流石にユウの飯はお子様ランチみたいなラインナップだったがどれもまだユウの舌にはなじまず、顔をしかめていた。


「あらあら。お口に合わなかった?」

「どうもユウの奴、教会の飯が全く味付けされてないものばっかり食べてたせいか、ちょっと味付けした料理ですら味が濃いって思っちまうらしい。最初にその事に気が付いた時はマジで驚いたぞ。ギルドで売ってるクズ野菜のスープでしょっぱいって言ったんだからな」

「嘘、そんな状態だったの?教会って本当にクズね~。それじゃおかゆとかの方が食べやすいかしら?旅の途中はどんなもの食べてたの?」

「ぶっちゃけ味付けのしてないただ焼いた肉とか、何のドレッシングも使ってないサラダとか、そんなもんしか食べてない。と言うかこっちが心配になるレベルで少食だからこれからせめて平均摂取量ぐらい食べれるようにしたい」

「……本当にナナシが勇者を助けたのは良かったと思うわ。勇者ちゃん、ちょっとずつ食べれるように頑張ろうね」


 ベレトはそうユウに向かって言うと、ユウは不思議そうな表情をしてから頷いた。

 納得している様子はなく、ただ何となく頷いた感じではあるがまだマシだろう。

 食事が終わって一緒にユウの部屋に行く。とりあえずベレトの部屋に行くのはユウを寝かしつけた後だな。

 それまでほぼ無感情のユウに何かやる事があるかと考えてみる。


 俺はこのゲームは常にソロだった。

 最初は無謀に何も考えず突っ込んであっさり死んだ。その後はゲームだけど現実リアルと変わらない感じで慎重に動きながらも、ゲームだから現実では出来ない犯罪を犯して楽しんでいた。

 そんなプレイをしている事を他のプレイヤーに知られるのはそう時間はかからなかった。国から犯罪者の烙印を押されれば殺したり捕まえる事で賞金が出たし、大きな罪を犯していれば名声も上がる。

 様々な目的で俺は自称ヒーローのプレイヤーに追いかけまされ、逆に殺して更に罪を背負っていたのがこのゲーム内の俺の人生。

 だからゲームで誰かに何かを教えてもらう事も、教えてあげる事もした事がない。

 そんな俺がユウを強く育てると言うのは非常に難易度が高い様に感じる。


 そう思いながらベッドの上であおむけになっていると、ユウに突っつかれた。


「どうかしたか?」


 俺が聞くとユウは不思議そうに聞く。


「愛って何?」

「………………哲学だな」


 愛とは何か。

 ぶっちゃけ俺は知らん。

 少女マンガみたいな純愛?それとも結婚したいと言う感情?それとも家族愛のような性別にとらわれない愛?

 どれも俺にとっては違う。

 違うと言うよりはしっくりこないか。もちろん少女マンガの様な純愛はきっとみんな憧れるから王道と言われるわけだし、好きだから好きな相手と結婚したいと言う感情が湧くのも分からない訳ではない。

 でも俺の中ではそうでないと言うか、個人的に違う気がすると言えばいいのだろうか?


「とりあえずなんで急にそんな哲学的な事を聞いてきたんだ?」


 よく分からないがせめて理由ぐらいは知りたい。

 そんな気持ちで聞いてみるとユウはあっさりと答えてくれた。


「私には『愛』と言うスキルがある。でも使えない。この国の“愛”に触れれば何か分かるかと思った」


 初めて一言ではないセリフ言ったな。ちゃんと喋れたんだな。

 そして確かにユウにはそんなスキルがあった事を思い出す。

 そして『愛』と言うスキルはどんな効果なのか確かめてみる。


 ――スキル『愛』――

 美徳系スキルの1つ。

 使用者が真に愛す者のステータスを2倍にする。

 自身に使用は出来ない。


 あ、だからあいつ1人弱くて1人だけやけに強かったのか。

 俺を捕まえに来た6人のプレイヤーのうち1人だけ特に弱いのが居た。パーティーを組んでいるのに1人だけ弱いと言うのはあまりなく、昔からパーティーを組んでいる者達ほどレベル差はほぼないので1人だけ弱いと言う事はない。

 逆にパーティー内で1人だけ強いと言う場面も滅多にない。滅多にと言うのはパーティー内でエースとかリーダーとか呼ばれている奴が少しだけ強いと言う事はあったが、ずば抜けて強いと言う事はなかった。


 だが俺を捕まえに来たパーティーでは1人だけ弱いのと1人だけずば抜けて強いのが居た。

 弱いのは補助系の魔法をメインで使っていたので、後衛のバフ担当だから戦闘能力は大した事がないっと勝手に納得していたが、どうやらこいつがスキル『愛』の所有者だったのだろう。

 そしてその『愛』の影響で強くなっていたのがあいつだった。

 だ~からあんなちぐはぐな感じなのにバランスよかったのか。

 いや~納得納得。


 でもユウは『愛』を使えないと聞くとこの真に愛す者というキーワードが重要なのだろう。

 真に愛すって難易度高そうだな……お母さん系なら自分の子供、とかでも大丈夫そうな気がしないでもないが。


「なるほどね。真に愛す者って所が分かんないのか」

「分かる?」

「いや、俺も分かんねぇ。と言うか考えた事もねぇ」

「サキュバスは知ってる?」

「う~ん。知ってるかもしれないけど……ユウがそれを聞いて納得する答えが返ってくるかどうかは分からないからな……結局自分で見つけるしかないんじゃないか?」


 正直こういう哲学的なことに関しては結局自分自身で見つけるしかないと思う。

 仮に俺が愛と言うものを知っていたとしても、それをユウに語って納得させることが出来るかと聞かれると俺にはできない。

 そんな才能があったらとっくに詐欺師にでもなってる。もしくはペテン師にでもなっていただろうか?


 とにかく俺にはそんなにうまく回る口は持っていない。

 そしてスキルに書かれている真に愛す者、この意味がまったく分からない。

 さっき考えたように恋人的な意味なのか、それとも家族愛のような物なのか、想像すらつかない。

 だからと言って俺が知っている愛がユウにとって、スキルの言う真に愛す者なのかどうか……


「見付けられる?」

「分からん。俺に言える事はとりあえず生きてみろって所だけだ。愛って奴を求めて、探して見付かったらそれでよし。見付からなかったら……もうちょい生きればいい」

「……分かった」


 俺の先延ばしとも言える答えにユウはあまり疑問を持たないようにベッドで横になる。

 と言ってもまだ眠くないようで天井をぼんやりと見ていたので、俺は隣になって肘をつきながらユウの事を寝かしつけた。

 そのままつい眠ってしまい翌朝ベレトにずっとじっと見られる事になったのだった。

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