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キプロス 戦 (上)

キプロス視点

◆◇◆◇◆◇

ナカル視点


 ジッ......


 一瞬、13年前の事は目の前に再生した。

 キプロスはあの夜を忘れない。


 意識がなくても、なんとなく感じた。

 目覚めた後もすぐ恩威(えんゐ)から聞いた。

 恩雅(えんや)がこの世を去ったことを。


 自分たちが彼女の犠牲を阻止できなかった。

 弱すぎて、身代わりさえならなかった。

 悔しかったが、逝った者は戻れない。


『強くなる。そして、()()()()()()


 せめて、彼女の願いを叶えたい。


 強い意志を持って、キプロスは目の前に空気を蹴って粒子放射線を避けた人間を見つめる。

 そして、怒りが爆発した。


  [Dragon killer v3.0]

    愚かな竜よ、我が血肉になれ。

    MP+1815、STR+72600、AGI+54450

    この武具を装備している状態で竜族以外の目標を攻撃した場合、

   装備者に即死効果を与える。

    この武具で攻撃する時、目標の防御を無視する。

    竜族討伐数によって、ステータスを強化する。

   現在の討伐数:72600

  [I can fly〜〜]

    【翔龍帝】の遺骸から作った靴。

    AGI+9200、END+730、RES+220

    魔力消費0で〈飛翔〉使用可能。

    空気から毎秒5MPを獲得する。


 〈鑑定〉で見た装備情報によると、この人間に奪われた同胞の命は7万以上、しかも、その一つは自分の友である【翔龍帝】、翔子。


(まるで悪魔のような人間だ。いえ、悪魔より残酷だ)


「おのれぇ!翔子を殺したのも貴様か!」


 咆哮しながら、キプロスは翼を振って、銅の破片を弾幕のように撃ち出した。



「............」

 

 人間の口が動いたのは見えたが、聞き取れなかった。


(風のせいか?......まあ、いい。悪魔の囁きなど、聞かない方がいい)


 キプロスは疑念を頭から追い遣って、戦いに専念する。

 今までの技は全部避けられた。

 空中で自在に行動できる相手に当たるために、もっと隙間のない攻撃が必要のようだ。

 ああいう技は周囲のドラゴンを巻き込む可能性もあるが、今のキプロスにとって、それは些細なことだ。


(ここであの人間を仕留めなければ、どれだけの被害者が出るのは想像できない。やるべきことは、それだけだ)


 そう思って、キプロスは大量の魔力を角と翼に入れ込む。


「〈エレクトリック ストーム〉」


 そして、狂風の刃が周囲の一切を切り裂き、電気の流れが空気さえ焼き尽くした。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「危なっ......」


 太陽のように輝いているプラズマの巨大球体を見て、ナカルが声を漏らした。

 【カッパー ドラゴンロード】から大量の魔力を感じた瞬間、彼は危機を察し、〔真珠の槍〕を逆方向に投げ出して〈シフト〉で距離を取った。

 そうでなければ、彼はもうデスペナルティを受けただろう。

 でも、まだ安心できる場合ではない。


「逃がさんぞ!!」


 球体が消えた後、ドラゴンロードが叫んで、またビームを撃って来た。

 ナカルはそれを回避しなから、頭を捻る。


(......さっき、ドラゴンロード自身は球体の中心にいる......ってことは、風属性と雷属性による攻撃が効かない......)

 

 ドラゴンロードは確かに恐るべきだが、勝てない相手でもない。

 焦れずに戦況を分析して、ちゃんと戦術を組み立てれば、勝算がある、とナカルは信じている。


(近接攻撃でダメージを稼ぎたいだが、それは〈シフト〉のクールダウン完了まで我慢だ。 今は遠距離から氷属性の攻撃をして、やつの行動を緩めるのはベストだろう)


 そう考えて、ナカルは魔法を発動する。


「《ブリザード ランス》!」


 そして、千本の氷の槍が飛ばされて、巨大なドラゴンロードの全身に当たった。

 その鎧のような外皮を貫通するのはできなかったが、白い霜がその体を覆って、蜘蛛の糸のようにその動きを止まった。


「ぐ......小賢しい!」


 ドラゴンロードは叫んで、自分の外皮に電流を流した。

 ジュール熱を利用して、霜を溶かすつもりだろう。

 しかし、そんなに簡単にはいかない。


 《ブリザード ランス》はナカルの自創魔法だ。 

 このゲームでは、魔力で作った槍も槍という武具にカウントされる。

 なので、【真の魔槍使い】によるバフやスキルも受けれる。

 ナカルはそれを利用して、〈フロスト ランス〉で作った氷の槍をに〈槍が雨の如し〉というスキルを発動する。

 〈槍が雨の如し〉は一本の槍による攻撃の威力を百分の一にして、百回同時に攻撃するスキルだ。

 元々は単体攻撃を範囲攻撃に変えるためのスキルであったが、この場合では別の狙いがある。

 〈フロスト ランス〉は刺さった敵に〈フローズン〉の異常状態を与える効果がある。

 攻撃の威力は百分の一になるが、この効果は変わらない。

 つまり、〈フローズン〉を百回掛けることができる。

 《ブリザード ランス》に使われた〈フロスト ランス〉は10本。

 目標が巨大のため、ミスも少ない。

 そう考えると、掛かった〈フローズン〉は約1000回。

 ドラゴンロードでさえ、短時間で全部溶かすのも無理だろう。


 しかし、自分の力に自信があるのか、受けた〈フローズン〉の回数が異常に多いことに気づかなかったのか、巨竜は咆哮して、そのまま銅片の弾幕を撃ち出した。

 

「Grrrrrrrrrrrrrr!」


 咆哮は意気軒昂(いきけんこう)だが、翼の動きが遅すぎて弾幕はナカルに届かなかったまま重力に捕まえて地面に落ちて行った。

 元々ナカルは「防御も要らないな、ラッキー」と思ったが、すぐ気づいた。

 この戦いは自分のため(ハンティング)ではなく、友人を守るため(ディフェンス)である、そして、その友人はまだ地面にいる、と。


(しまった! スリッパ!)


 慌てて下を見ると、彼女は【黄水晶の亀】の下に隠れて、銅片の雨から自分を守ったようだ。


(良かった......これは俺のミスだ、後で謝らなちゃ)


 自分を叱咤して、ナカルは戦場をずらすために飛び出した。


「逃がせるか!」


 遅いだが、ドラゴンロードはちゃんと後ろについているようだ。


 彼らはそのまま別の空域まで行った。




To be continued......



▼▽解説コーナー▽▼


《ブリザード ランス》=〈フロスト ランス〉10本 +〈槍が雨の如し〉

             + 槍を飛ばすための風魔法 

 ちなみに、もし空を飛んでいる鳥とかを巻き込んだら、ナカルは即座[Dragon killer v3.0]の効果でデスペナルティを受けます。範囲攻撃を使う時は気を付けないといけませんね。


 ジュール熱:抵抗がある導体に電流を流したときに生じる発熱であるジュール効果によって発生する熱エネルギーのことです。(ref:wikipedia)

ご高覧いただき、ありがとうございました!


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