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【カッパー ドラゴンロード】キプロス



●13年前、巨竜の山•山奥●

 

恩雅(えんや)様、もう一度考えていただきたい」


 静かな夜に、男の低い声が山の中に響いた。

 

「本当に、他の方法がないんですか」


 干からびた声も同じ願いを述べた。


「しく......しく......、恩雅様、お願いだから、行かないでくださぃ......」

 

 泣きながら、女の子のような高い声も彼らと共に求めた。


 空は一つ星もなく、月も叢雲に隠れている。

 ポツッ......ポツッ......ポツッ...ポツッ...ポツッポツッポツポツポツポツー

 まるで天が彼らの悲しみを感じるたように、雨が降り始めた。


「ごめんね。もう時間がないの。私、行かなければ、みんな死んじゃうよ」


 真っ白なスカプラリオを着ている、見た目は15歳くらいの黒髪の少女は空を見上げながら、答えた。

 しかし、後ろにいた三人は彼女の話を受け取る様子がない。

 

「今までのように山奥に隠れ続けばいいんじゃないですか。恩雅様の指示を従わず、外に出た愚者どもが狩人の獲物になるのも自業自得だと思います」


 ミイラのようにバンデージに巻きつけられた男が説得を諦めない。


「もし恩雅様が望んでいる未来のために犠牲が必要なことであれば、この私を生贄にしてください。恩雅様は皆の心の支え、ここにいなければならないのです」

「しく......しく......、せめて、あたしたちを連れて行って......」


 銅の鎧を身につけた武士とチャイナ服の女の子も自分の考えを口にした。


「ありがとう。でも、そんなのはダメだよ。あなた達も知っているのでしょう?」


 でも、黒髪の少女は3人を背にするのまま頭を軽く振って、彼らの意見を拒否した。

 彼女の名は【慈龍帝】恩雅(えんや)

 力と優しさの象徴として若い竜族に尊敬された存在。

 彼女は最古の竜帝の一員として数千年前からずっとこの山に若い竜族の世話をしていた。

 ひどい怪我や病気といい、他のモンスターからの侵攻といい、過去に何があっても彼女の力でさっさと解決できた。

 だが、今回は違う。

 

 他の脅威と違って、プレイヤーたちは『復活』することができる。

 つまり、彼らにとって、最後の一戦さえ勝てば、その前の戦いで何回殺されても全然良い。

 強大な【竜王】が恐怖を与えるために村や都市を滅ぼしても、レイドボスに見なされて、逆にプレイヤーたちのテンションを上げただけ。

 なので、暴力は対策にならない。


 トッププレイヤーたち(既得権益者)と交渉して、何とかしてくれるんじゃないか、という意見もあったが、すぐ否決された。

 なぜかと言うと、それと似ていることがあったからだ。

 竜族がすぐ絶滅するという事実に気づいた各国の高官はすでに《竜族保護公約》や《竜狩り限定法》などの法律を設けていた。

 しかし、それは逆効果だった。

 竜狩りの制限によって、竜の素材がもっと希少になって、その価値もどんどん上がっていく。

 その利益のため、密猟は猖獗している。

 密猟さえ止まなければ、交渉する意味がない。

 

 この現状を解決するために、彼女は決意した、

 自分の命でこの世界を変える、と。


「でも、私たちにその権限を付与したら、っ」

「おい、もういいだろ。姉さんはお前たちの未来のためにこの方針を決めた。それもお前たちが受け取れるものじゃない。 分かったら黙ってくれ」


 武士は諦めずに話し始めたが、すぐ不機嫌な声に割り込まれた。

 声の主である小学生みたいな黒髪少年は空中から透明なエレベーターを乗っているようにゆっくり降りて、恩雅の傍に着地した。


恩威(えんゐ)様......」


 武士たちは少年の言葉に刺されたように頭を下げた。

 彼らはもう反対する様子がないのと確認してから、恩威は一枚の羊皮紙を取り出して、恩雅に渡した。


「姉さん、これを」

「ありがとう......トビーくんと()のサインを......これでよし」


 何かを書いた恩雅は振り返って、武士たちに向けた。

 彼女はいつものように穩やかに微笑んでいるが、3人は何となくその笑顔で悲しみを感じた。

 この微笑みを見るのは、これが最後だ。


「もう行くのですか」

「結局、私たちは何もできない......」

「しく......しく......」


 落胆している彼らに近づいて、恩雅は子供を慰める母のように彼らの頭を撫でて、話し始める。


「あなた達は何も悪くないよ。手伝いたいなら、私のお願いを聞いてくれる?」

「「勿論!!」」

「しく......う、うん」


 恩雅の言葉を聞いた武士たちは頭を上げた。


「強くなる。そして、みんなを守る。これが私の最後の願いだ。簡単そうに聞こえるけどかなり難しいよ。できるの?」

「「「はい!!」」

「......は、はい!」


 武士たちは大声で答えて、さっきからずっと泣いていた女の子も手で涙を拭いてからちゃんと声を出した。

 彼らの様子を見て、恩雅は嬉しそうに頷く。


「よし。じゃ、座って」

「え?」

「早く」


 3人は困惑しているが、その指示に従って腰を下ろした。

 そして、恩雅は魔力を羊皮紙に注入した。


「私、恩雅、は〈七竜帝〉第四席として、【翔龍王】、【砂龍王】、【カッパー ドラゴンキング】以上三人の昇格を推薦します」


《推薦を受理しました》

《【覇龍帝】恩威(えんゐ)、【慈龍帝】恩雅(えんや)、【アビスドラゴンロード】トビーの賛成を確認しました》

《反対の意見はありません》

《では、昇格を始めます》

《個体番号#ED00124、アクセス権限4から5へ、個体名【翔龍帝】翔子へ、変更必要時間:12時間》

《個体番号#ED00063、アクセス権限3から5へ、個体名【砂龍帝】(あい)へ、変更必要時間:12時間》

《個体番号#WD00337、アクセス権限3から5へ、個体名【カッパー ドラゴンロード】キプロスへ、変更必要時間:12時間》


 メッセージが脳内で響いたあと、銅鎧の武士、キプロスの意識が闇に飲まれた。


.

.

.

.

.

.

《【世界へ】 〈竜の遺命〉によって、ゲーム内仕様の変更があります。竜に関する素材や武具の「成長性」が削除されました》




......To be continued

明けましておめでとうございます!(遅くないよ!今はまだお正月です、台湾では)



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