義兄 3
メイドさんや乳母さん、パパの愚痴を聞くに、元々ふくよかな体型だった兄はこちらに連れてこられたストレスのせいかどんどん太ってしまい、誰の言うことも聞かず剣の稽古も、勉強も全て放棄しているらしい。そんな兄が時間が少したった今でも肩で息をしている。私の泣き声を聞いて走って来てくれたのであろうことは明白だった。ユーリスは私の事をしっかりと守ろうとしてくれたのだ。
「何があった。」
地を這うようなその声に、私の背中を撫でていたママの手もビクリとしていた。
「何故部屋に居るはずのハルティナがここにいる!」
それを向けられた兄とメイドさんはもっと震えていて、自分の命が危ぶまれていたことを忘れ、気の毒に思えてしまった。
まあ、この状況だし、メイドさんからユーリスが私を守ってくれたことは伝わ…
「ユーリス坊っちゃまが、ハルティナ様を連れ出している所を発見し、お声をかけたのです!」
「なっ」
「驚かれた坊っちゃまがハルティナ様を腕から落とされて…」
「お前…!」
「本当です!乳母様ならご存知ですよね?私が抱きあげてハルティナ様が泣いた事はございません!それに、もし私が抱えていたとしたら、ハルティナ様は無事ではありません!」
チラリと確認された乳母は、確かにハルティナ様はこの子に懐いていました、とうなづいて、周りの様子からも、確かにユーリスならやりかねないと言った雰囲気であり、当のユーリスは悔しさからか、周りの空気からか、唇をかみ締め、拳を握っていた。
パパ、パパはそんなの信じないよね?と、見上げると、今まで見た事もないような顔をして血管が額に浮かび上がっていた。
流石の私もこれは怖い。
ルーナ、と一言口にして私をママに渡す。
ママも私の名前を口にして、悲しそうな顔をしてユーリスを見た。
「それに、ハルティナ様が産まれる前、ユーリス様はお腹の中で死んでくれないか等と不吉なことも申しておりました。公爵様の血の繋がる娘を邪魔に思われたのでしょう…」
これに関してもほかのメイドさん達が確かに…聞いたことある…など、ざわざわしていた。
今までどちらがどれだけ信用を相手に与えてきたかの違いがこれだけ如実に出るとは。
確かにユーリスは我儘で扱いづらい子供だったかもしれない。でも、彼の年齢と境遇を考えれば反抗期も相まって当たり前のことなのかもしれないし、またメイド達がユーリスに対して根を上げている等と私に愚痴るくらいなら自分が会いに行って話してこいとパパにも何回も思ったものだ。話せないとはこんなにも無力なものである。
でも、そんな私でもちゃんと意思表示はできるのだ。
振り返り、ユーリスに腕を振り上げたパパをみて思い切り息を吸い込んだ。
「うヴえええええええええええ」
「は、ハルティナ?」
手足をバタバタさせてママの腕を叩くようにもがいたいやいやをするように。驚いて振り向いたパパに困った顔のママ。
私がママの腕の中でこんなに暴れたことは無いので、ママも泣きそうになっていて申し訳ないが、これは真実を伝えたい私の足掻きなのである。




