義兄
まだまだ私はぼんやりと日々を過ごしながらHPを伸ばそうとしている赤子である。
昨日は寝返りをうてるようになった上、ごろごろするごとにHPが減って経験値が入っていることに気づき、ふんふんごろごろしていたら、称号乳母さんが慌ててたので人がいる時はやめておこうと思った。
そして先程、人が居ないのを確認してふんふんしていたとき、ピロンと音がなりステータスを見たところなんとレベルが上がっていた!1から2だから上がりやすいのだろうかとステータスとにらめっこしていたら、ガタン!と音を立てて扉が開いた。
何事かと驚いていたら、少年が部屋に入ってきていて、ベッドの仕切りの間からこちらと目が合ったのだ。
「ふーん。お前が俺の妹か。」
その言葉で合点がいったが、一応ステータスを見てみることにする。
〘 ユーリス 性別:男
称号:ハルティナの義兄
Lv:3 HP20 MP6 〙
やはり、兄であったか。
なぜ名前を知っているかというと、この屋敷にはおしゃべりなメイドさん達が多いようで、赤子の私が理解していると思っていない彼女達が、ハルティナお嬢様は可愛いわ、ユーリス坊っちゃまとは大違い、とか、またユーリス坊っちゃまが我儘を言って〜とか、色々愚痴を私の部屋で話していたからである。
まだ見ぬ自分の兄は相当やんちゃらしいと思ってはいたのだが、兄に続いて入ってきた乳母さんが、坊っちゃま!ここに来てはいけないと!と慌てていたので確かにやんちゃらしい、と納得した。
ベッドの高さギリギリで目が合う兄もまだ幼く、おそらく5歳くらいではないかと思う。やんちゃ盛りではないか。
興味津々とばかりに仕切りの間から伸ばされた手に、にこりと笑って手を伸ばした。
「!」
「いーいー」
兄妹仲良くやろうという意思で伸ばし、両手でその手を握ってみたものの、兄はその手を動かさないのでにぎにぎと握ってみる。
やはり自分の手は小さく、兄の手は自分より大きかった。
「あら…お嬢様はお兄様がわかるのかしら。」
「!だよな?今にーにーって言ったよな!?」
興奮気味に乳母を振り返りそういった後、ハッとしたように、私の手を振り払って部屋を出ていってしまった。払われて行き場のない手をよしよしするように、乳母がさすってくれたので、泣くのはやめておいた。
「お嬢様は本当に賢いお方ですね…」
そりゃ、普通の赤ちゃんじゃないもんなーとぼんやり思っていたが、その手が暖かくていつの間にか眠っていた。