9話『真実』
ゆーちゃんと和解して数日。
「ねぇ。れーくん。今日暇?」
昼休みに突然俺の元へとやってきた。
ニヤニヤしている。
なんだろう。
一体何を企んでいるのだろうか。
「暇だけど……」
答えつつ彼女が今何を目論んでいるのか思案するがそう簡単にわかるものでは無い。
大体この盤面で理解できるほどまだ俺は彼女のことを知っていない。
「ふふふ。じゃあ、今日私の家来ない? 誰も居ないんだ」
ちょっとだけ頬を赤らめると恥ずかしそうに視線を逸らしたーっと自席へ戻る。
何だこの小動物は可愛いな。
そんなことを考えながら授業に望むともう、家でどんなことをするんだろうと妄想に妄想が重なり授業どころじゃなくなってしまう。
えーっと、なんかテストがどうのこうのって言ってたけどまぁ良いよね。
テストなんかよりこの妄想の方が有意義だし。
時は流れ放課後。
心臓をバックバク鳴らしながら俺はゆーちゃんの家へと向かった。
彼女の家は俺の通っていた幼稚園の近くらしい。
懐かしい景色が辺りに広がっている。
「ここが私の家」
どこにでもありそうなごく普通の一軒家。
庭先には家庭菜園の野菜が鉢植えに植えられておりそこから幸せな家庭なんだろうなということがヒシヒシと伝わってきてなんだか和やかな気持ちになる。
家に上がると先に部屋へと案内してくれた。
「クローゼット絶対に開けないでね」
この変態めみたいな視線と共に釘を刺される。
まだ前科ないのになんでそんなに警戒されなきゃならないんですかね。
ちょっと不服だが文句を言わずに黙って頷く。
一々機嫌を損なわせるようなことする必要はないのだ。
「おまたせ」
お茶を持ってきてくれた。
ありがたく受けとりひと口啜る。
「いやぁ……俺さ近くにある幼稚園に通ってたからこの辺懐かしいんだよね」
「……」
「うん?」
ポカンとゆーちゃんは口を開けている。
「いや……その……」
なんだかハッキリしない感じで喋る。
急かしても意味ないなと思い、俺の心を落ち着かせる意味も込めてお茶をもう一口啜る。
「そこに見える幼稚園?」
窓から見える幼稚園は確かに俺の通っていた幼稚園であった。
「あぁ……懐かしいな。マジで。そういや、ゆかちゃんって子と仲良くてね。なんか『将来結婚しよう』とか色々言ってたなぁ……あ、でもそれあくまでも小さい頃の戯言だからね。今はゆーちゃんのことしか見えてないから!」
ヤバい地雷を踏み抜いてしまったと思い慌てて訂正する。
だが、時既に遅し。
ゆーちゃんの目からは大量の涙が溢れていた。
「あれ、泣きたいんじゃないのに……なんで。止まらない」
涙を拭いても拭いても零れ落ちる。
「あのさ、れーくん」
あー、怒られるんだろうな。
でも、今回に関しては間違いなく俺が悪い。
素直に受け入れよう。
そんなことを思いながら彼女の次の言葉を待つ。
「そのゆかちゃん私知ってるって言ったら信じる?」
晴れやかな笑顔で彼女は口を開いたのだった。
あの時の落胆した表情ではなく涙混じりの満面の笑み。
どうやら俺は見捨てられたのかもしれない。
「俺はゆーちゃんが好きだから……信じる」
もう抗うだけ無駄だろう。
それならばせめて誠心誠意込めて彼女の口にすること全てを信じてあげるべきだろう。
例え俺を遠ざけようとする嘘なのだとしても。
「そっか。ゆかちゃんってね、多分それ私のこと。優香なのにれーくんずっとゆかちゃんって呼んでたよね」
ゆーちゃんがゆかちゃん……
そんなはずは、と思ったその時あのゆかちゃんの面影がどことなくあることに気づく。
ちょっと視線を逸らすと小さな額縁に写真が飾られており、そこには幼稚園児の俺と俺の記憶の中にいるゆかちゃんが笑顔でピースをしていた。
幼稚園の桜の木の下で……
あぁ、そうか。そういうことか。
ゆーちゃんはゆかちゃんだ。
ゆーちゃんはきっと俺の事を気付いていたのだろう。
だから、こんな俺の告白にオッケーしてくれたんだ。
「ごめんね。気付くのが遅くなっちゃって」
「ううん。良いの。私凄い変わったでしょ? れーくんが私の事好きでいてくれるようにずーっと努力してたの。だから私のこと気付いてくれなかった時正直悲しかったけどでも、それでも私のこと好きって言ってくれたから」
今までで1番の笑顔。
ゆかちゃんと重ねて見てしまう。
「良いかなって!」
ゆーちゃんは思いっきり俺に抱きつきそのままファーストキスを奪っていく。
場面としては最高だ。
もう文句の付けようがない。
うん。
俺ってすげぇー幸せもんだな。
俺の彼女すげぇー可愛い。
終わりでーーーす!
お付き合いありがとうございました。
短いラブコメを書いてみたかったのでこれはこれでありかなと。
幼馴染はただの咬ませです。正直要らなかったなと思いましたが……良いでしょう()
多分そのうち違うラブコメを書き始めると思いますのでその時はまたよろしくお願いします。