7話『俺の幼馴染』
月曜日。
いつもであれば休日から平日へと代わり憂鬱な日であるのだが今回は憂鬱さなんて欠けらも無い。
学校に行けばゆーちゃんと話せる。
その事実だけでもうパーッと気が晴れてしまう。
「滝宮〜! おっはー」
右手をグーにしてすぐパーにする独特な挨拶をしてきたのは原鶴佳奈だ。
雅人と同じくらい長い付き合いの女子である。
かなり可愛いのだが恋愛対象にはならない。
長年友達やってるともう女子として見れなくなっちゃうんだよね。
「おう」
「いやはや、おめでとうございます。まさかねぇ、滝宮が三笠さんと付き合うことになるなんて思ってもいませんでしたわ〜。そもそも告白する勇気すらないと思ってたけどね」
「一言余計だ。んでも、間違ってないな。俺だって驚いてる。成功するなんて誰も思ってなかっただろうし、仮に俺が過去に行けて『成功するから告白しろ』って言ったって信じないだろうな」
ぶっちゃけ今だって実は夢なんじゃないかと思ったりしている。
そのぐらい現実とはかけ離れたような出来事なのだ。
「ちょっと何言ってるか分からないけれど。でも、凄いね。私も諦めなければ叶ったのかな」
「ふーん。原鶴にも好きな人って居たんだな。ずっと頭お花畑で恋愛とか興味無いのかと思ってたわ」
実際、原鶴は暇さえあれば俺や雅人と絡み他の人間とは必要以上に絡まない。
積極性がないというよりは自ら面倒な事項を増やさないという感じだろう。
原鶴は気の良いやつだし、コミュ力だって高い方だ。
自ら話しかけないだけで話しかけられればしっかりと会話を成立させ周りを笑顔にする。
そんなやつだが関わってきて約10年間。
原鶴の恋愛事情に関する話は一切耳にしていない。
風の噂すらないぐらい本当に何も無い。
「そりゃ私だって女の子なんだから好きな人ぐらい居るから! あ、今は居ないけどね」
「女の子……ね」
コイツの口からそんな言葉が出てくるとは思っておらず吹き出しそうになってしまう。
必死に笑いをこらえ肩を震わせていると手加減なしの手のひらが俺の脳天へ衝撃を与える。
「何!? なんで今叩いたの」
「は? 滝宮が笑うからに決まってるでしょ」
不機そうな様子を見せるが納得いかないのはこっちの方だ。
だって、突然女の子とか言い出したらそりゃ面白い。
「はー。本当に最悪。マジでありえない。なんで、こんな奴に彼女なんか出来るんだろう。よりによって三笠さんだし。意味がわからないんだけど」
ご立腹のようで口を尖らせながらズンズンと俺を置いて1人先に行ってしまう。
まぁ、そのなんだ。
1ミリも悪いとは思ってないけれどとりあえず謝っておこう。
原鶴は単純な脳みそをしているから理由付けせずに謝罪するだけで何も無かったかのようにケロッとし始める。
やっぱり女の子じゃねぇーな。
「うーん。こんな対応ゆーちゃんにしたらどうなるんだろうな」
考えただけで恐ろしい。
別れるどころか下手したら全校生徒を敵に回すことになる可能性だってある。
ゆーちゃんにはしっかりと女の子の対応をしよう。
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