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6話『壁』

 遊園地なだけありまだまだ色んなアトラクションがある。

 例えばコーヒーカップに、メリーゴーランド、ゴーカートなんかもあったりする。

 どれもこれも人気アトラクションでそこそこ長い列が出来ていた。

 この遊園地自体もそうだがやはり、休日って強い。

 特にファミリー層が多いので尚更人が多いように思えてしまう。

 回転率的にはそこそこ良いと思う。

 列だって長くても数時間と待たされるわけじゃない。


 遊園地といえば……で出てくるような王道アトラクションを一通り楽しむ。

 満足度はかなり高い。

 これでもかってぐらい思いっきりはしゃぎ楽しんだ。


 正直ゆーちゃんとは壁があるなと少し前まで思っていた。

 思っていたのだが実際は壁なんてなかった。

 なんなら俺が勝手に壁を構築していたまである。


 1人で三笠優花という人物を神格化し、俺とは釣り合わない高嶺の花だと思い込み、無意識のうちに遠い存在だと認識する。

 そうして話す時も対等な立場ではなく常にゆーちゃんの機嫌を伺い、損ねぬよう時に自らを犠牲にする。

 そうやって壁を築き更に自分とは遠い人だと認識する。


 だか、今日デートをして俺は理解した。

 こうやって壁を作っていたのは俺だけでゆーちゃんは俺をしっかりと俺として……滝宮怜央として見てくれていたのだ。

 楽しい時はしっかりと楽しいと顔にだし、恥ずかしい時は恥ずかしいとまた顔に出す、不満がある時は隠さずに表情に出す。

 むしろ、彼女は俺との距離を縮めようとしてくれていたのだ。


 なぜ俺が選ばれたのかは結局分からない。

 理由は分かるがあの理由だって俺以外に当てはまる人間はいくらでも居るだろう。

 少なくとも俺をすごいと褒めてくれていた雅人は当たり前のことを当たり前にこなし、素直になれる人間だと思っている。

 だが、雅人は振られて俺は付き合うことが出来た。

 俺と雅人が同じ土俵に立ったらどの面に関しても勝てる要素はない。

 そのなずなのになぜ俺が選ばれたのか。


 「あのさ」

 「うん?」


 うじうじ悩むだけ無駄だ。

 ひとつだけ理解出来たことがある。

 ゆーちゃんは嫌々付き合っているわけじゃない。

 自分の意思で本当に俺の事を好いてくれて、一緒にこうやっていてくれている。

 だから、俺も変な疑問を残さないでしっかりとゆーちゃんと向き合いたい。


 「俺を選んだ本当の理由って何なの?」

 「素直だからだよ。自分の気持ちしっかりと表に出せるって凄いことだもん」

 「でも、それだったら俺以外の子でも」

 「ダメ。れーくんだから。じゃあさ、れーくんは私みたいな私以外の人に告白されたら付き合おうと思える?」


 真剣な眼差しで質問を質問で返す。

 まずは俺の質問に答えろと言いたいがそんな余興挟ませないぞという強い睨みに負ける。


 「付き合わない……かな」

 「でしょ? 私はれーくんだかられーくんを選んだの。それともしっかりとした理由がないと不安? 信用出来ない?」

 「いや……それは別に」

 「でしょ。なら、そうだね。秘密ってことにしとこう。恥ずかしいし」


 ゆーちゃんは両手でパタパタと顔を仰ぐ。

 そんなズルい返答をされてしまえば俺はもう何も言えない。

 結局なぜ俺を選んだのか分からないまま遊園地から帰宅しそのまま解散してしまった。

 ゆーちゃんは多分は話してくれない。

 やはり、俺を好いてくれた理由を探る必要は無いのかもしれない。

 今の俺を好いてくれている。

 だから、今のスタンスを変えなければきっとゆーちゃんは一緒に居てくれる。

 うん、それで十分だ。

 わざわざどこが好きなのか問い詰める必要も無い。

 過程より結論だ。

 ゆーちゃんは俺の事が好きで俺はゆーちゃんが好き。

 それ以上に何を求めるというのだろう。

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