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2話『告白した結果』

 放課後を迎える。

 いつもであれば待ちに待った放課後なのだが今日に関しては来て欲しくなかった。

 ずっと授業が続けば良いのにと思うレベルだ。


 理由は簡単。

 刻一刻と告白が迫っているのだ。

 覚悟したとはいえやはり自ら振られにいくのは結構精神的にきつい。

 まだ、僅かな可能性がある方が良かった。


 「……つら」

 「部活終わったら俺暇だから呼んでな。パーッと遊ぼうぜ。辛いことも忘れられるさ」


 雅人は「じゃっ」と右手をヒラヒラさせると机に置いてあったテニスラケットを手に取り教室から去る。

 まぁ、最悪雅人に泣きつけば良いやと高を括り前を向くことにした。

 自分のために告白するのだ。

 三笠さんという学校のマドンナを自分の中から消し去り別の女の子を好きになる。

 うん。何にも悪くない。




 待ち合わせをした校舎裏にやってくる。

 風が吹く度に地面に落ちた桜の花びらが舞う。


 緊張をほぐすために他のことを考えようとするが最終的に告白のことを気にしてしまうためかえって緊張してしまう。

 はやく告白してはやく振られてはやく綺麗さっぱり忘れたい。


 「ごめんね。待たせちゃった?」


 顔を上げるとそこには三笠さんが立っていた。

 荷物を持っている。

 下校するついでに寄ってくれたのだろう。

 まず、来てくれるだけでありがたい。


 「えーっと……待ってないよ。俺も来たところだから」


 アハハと適当なことを口走る。

 今までシミュレートしていたことなんてこの一瞬で全て頭の中から消去してしまう。

 どんな言葉で告白しようかとか色々考えていたのに真っ白で次の言葉が見つからない。


 「そっか。良かった」


 次の言葉を探していると三笠さんが先に微笑みながらそう口にする。


 「あのっ」

 「はい」


 今自分がどれだけ頬を赤らめているかは分からない。

 ただ、今なら頬で焼肉でも出来るんじゃないかってぐらい頬が熱いことだけは分かる。

 もう既に辛い。

 でも、一言でも良い。

 思いさえ伝えることが出来れば全てが綺麗に終わってくれる。

 なら、もう取り繕うことなんてやめて自分の気持ちを正直に伝えるべきだろう。

 どうせこれから振られるんだ。

 今更格好付けたって意味が無い。


 「入学したあの日から……ずっと好きでした。一目惚れです。どこに行く時も三笠さんが近くにいると自然と目で追いかけてしまっていました。そして日が経つにつれてどんどん好意は上がっていき大好きへと変わってしまいました。付き合ってくださいなんて烏滸がましいことは言いません。むしろ思いっきり振ってください。思いが伝えられればそれで満足なので」


 言いたいことは全部言った。

 まぁ、あわよくば付き合いたいとは思うが明らかに住む次元が違う。

 付き合うよりは好きなアイドルを追いかける……所謂推し的な感じで見ていく方が健全な気がする。

 だから、多くは望まない。

 この今俺が抱いている気持ちを伝えられるだけで十分だ。


 答えは分かりきっている。

 振って欲しいとは思ったがやはり次の言葉を聞くのは堪える。

 どうせ答えは変わらないのなら聞きたくない。

 そんな気持ちが芽ばえる。

 今ここで立ち去れば答えは聞かずに済む。

 そんな邪念さえも生まれてきたその時。


 「入学したその時から……?」


 三笠さんは寂しそうな顔をする。

 あぁ……やっぱり引かれちゃうよな。

 そりゃ好きでもないただのモブ男に1年間も一方的な思いを抱かれていたのだ。

 普通に気持ち悪いよね。

 死にたい。

 でも、ここで逃げたら意味が無い。

 せめて、彼女の口から「ごめんなさい」の一言が出てくるまでは耐えなければならない。

 聞かないときっと、まだ可能性あるかもしれないなんて甘ったれたことを考えてしまうかもしれないから……


 「はい。可愛い子が居るなと」

 「私の事外だけ? 中身は?」

 「正直どんな子なのか掴めてないかな」

 「そう……まぁ、そうだよね。うん。仕方ないかな」


 三笠さんは桜の木を見上げながら歯を食いしばる。

 そこまで気持ち悪かったかな……


 「でも、私の事好き?」

 「そりゃ好きですとも。勇気出して告白してるわけだし」

 「そっか。それなら良いよ。私の事もっと良く知って」

 「はい。これでやっと……」


 これで全て終わり。

 そう思って立ち去ろうとするがなにか引っかかる。

 あれ、俺今振られたのか?


 「彼女になってあげる。なってあげる代わりに私の事中身もしっかりと好きになってね」

 「……え」


 思わぬ展開に開いた口が塞がらない。

 何この展開。

 罰ゲーム? それともドッキリ?

 どっちにしろ高校生とは思えない質の悪い悪戯だ。


 「嫌だ?」


 三笠さんは寂しそうな顔をする。

 俺はブンブン首を横に振った。

 何はともあれ好きだった高嶺の花である三笠さんを独占できるのだ。

 もう、ここまできてあれこれ勘繰るのはバカバカしい。


 「フフっ。良かった。よろしくね」


 三笠さんの幸せそうな笑顔。

 俺はこの笑顔を一生守ろうとこの桜の木に誓った。

 そして……雅人ごめんな。

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