1話『恋をしています』
校舎裏に寂しく1本だけ咲いている桜が散り始めたこの頃。
桜の花びらが地面に落ちても俺の気持ちは高まっていくばかりだった。
俺は滝宮怜央。
ピッカピカの高校二年生だ。
早速だが俺には好きな人が居る。
高校入学したその日に一目惚れしてしまった。
茶色っぽさの残る髪色で後ろ髪は腰辺りまで伸びており、前髪も伸ばしているのだが邪魔らしくいつもピンク色の可愛いピン留めをして前髪をズラしている。
まぁ、一言で言ってしまえば美少女だ。
もちろんそんな可愛い子なわけでモテないわけが無い。
俺が知っている限り何人もが彼女へ告白しそして玉砕した。
俺の知り合いも突撃してぶっ壊れている。
その様子を間近で見ているが故に告白という後一歩が中々踏み出せない。
告白しなくたって見ているだけで癒されるのだからそれで良いだろうと思う。
思うのだがそれでもやはり彼女を自分の……自分だけの者にしたいと思ってしまう。
もう、恋のコップから想いが溢れ出ているのだ。
彼女は教室にいる時はあまり表情を顔に出さない。
それでも顔が良いという一点だけでクラス内カーストは上位になる。
自然と周りに人が集まり、彼女を有効的に活用しようと目論む女子やワンチャンを狙っている男子などが集まる。
後者に関しては俺も同じような立場なのであまり文句は言えない。
彼女は彼女で今のポジションに不満は無いのか嫌そうな顔をすることはない。
もしかしたら嫌という感情すらも隠しているのかもしれないがそうであれば俺はお手上げである。
そもそも俺に何か出来るとも思ってないけどね。
何はともあれ、何を考えるにしろ頭の片隅に彼女の顔が思い浮かんでしまう。
そのぐらい俺の想いは膨張してしまっている。
ここまで来たらもうやることはひとつしかない。
「はぁ……告白しよう」
想いを伝えて振られて一旦この気持ちをリセットする。
簡単にリセットできるものでは無いと分かってはいるがそれでも今に比べれば幾分かマシになるだろう。
根拠はどこにも無いけれど。
「怜央ついに告白するのか? お前もついに俺たちの仲間だな」
ガハハと豪快に笑い飛ばしたのは厳木雅人である。
俺の肩をポンポンと叩く。
彼こそが彼女……三笠優花に告白し振られた俺の知り合い第1号だ。
コイツは中々のイケメンでモテている。
はっきり言って俺も気が狂ったらいけちゃうかもしれないってぐらいにはイケメンだ。
そんなコイツでさえも振られている。
俺が告白したところで成功しないのは最早必然と言っても何らおかしくない。
「あぁ。そうだな。しっかりと慰めてくれよ」
「オォ……? なんかやけに素直だな」
「成功するなんて思ってないからな。振られにいくんだよ」
俺はそれだけ雅人に伝えると席をたち三笠さんの元へと向かった。
三笠さんの席へ到着する。
まだ告白するわけじゃない。
放課後に呼び出すだけだ。
それなのに心臓が張り裂けそうになる。
ひとつ深呼吸をし、心を落ち着かせる。
やはりキョドってしまうのが1番恥ずかしい。
だからゆっくりと、そしてはっきりと……
「あの……今日校舎裏にある桜の木の下に来てもらえませんか。お話があります」
「え……あ、うん。分かった」
三笠さんは首を傾げながら承諾する。
俺は軽く会釈をし自席へと戻った。
俺の体を包み込んでいた緊張感から一気に解放されそのまま机に突っ伏せてしまう。
良く頑張った俺。
今日は特別に高級アイスでも買って帰ろう。
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