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第42話 マッチポンプ

 タルダに新しく作った家で眠気をこらえて殺し屋を待ったが来ない。

 どうやら、シェードは闇雲に襲ってくるタイプではないようだ。

 安心していいのか。

 それとも強敵の出現に更に守りを固めるべきか。


 神経を尖らせていると体が持たない。

 マリーが起きたので眠る事にする。


 もう、今晩からはライオンに警備を任せてぐっすり寝るぞ。


「おはよう」


 昼、太陽が上に来てから起きた。


「今日はお寝坊ね」

「昨夜、よく眠れなかったんだ」


 さあ、今日はどうしようか。

 とりあえずSランクになる為に依頼をこなそう。


 ギルドに行って、Aランク相当の依頼を見る。


「無い、一枚も無い。塩漬け依頼の一つもあっていいじゃないか」

「寝坊してるから」


「あら、Aランク相当の依頼なら、朝早くクラン・デスタスのメンバーが根こそぎ受けていったわ」


 受付嬢が不思議そうにそう言った。


「ちくしょう。早速、妨害に出たな。依頼が無いんじゃな」


 ふっ、いいだろう。

 誰を敵に回したか教えてやる。

 依頼が無ければ作ればいい。

 俺が依頼金を払って誰かに依頼させれば良いんだ。

 ただ働きになるが構う事はない。

 ポリゴンで物を作れば、物によっては飛ぶように売れる。


 さて、どんなAランク依頼を作り出そう。

 討伐依頼はそんな都合よく魔獣が湧いて出てくる事はない。

 却下だな。

 護衛依頼もAランクに頼むような大商人に伝手はない。

 これも駄目だ。

 貴重な薬草を採取。

 ライオンのAIがいくら優れていると言っても貴重な薬草を一日では見つけられないだろう。

 ただ妨害は今後も続くのだろうから、先を見越して二三、薬草採取の依頼を作るのもいいかも。

 これは保留だな。


 となれば残るのは物づくりか。

 物づくりの依頼はほとんどFランクだ。

 冒険者に頼むような物は簡単な物に決まっている。

 Aランクにふさわしい物づくりって何だ。


「Aランク相当で、ギルドで城壁の拡張工事を依頼してよ。お金は俺が寄付するから。ただし寄付の人物の名前は匿名って事でお願い」

「そんな無茶な」


「一日で拡張する自信があるんだけどな。前にも一回やった事がある」

「ギルドマスターに言ってみるけど、期待しないでね」

「うん。期待しないで待ってる」


 あー、これで一つはなんとかなりそうだ。

 海は無いから灯台はできないし。

 そうだ塔と言えば、見張り塔なんかどうだ。

 街の手前に建てれば魔獣の発見も容易い。


 建設の資金は俺が寄付する事になった企画書を書き上げた。

 これだけじゃSランクになる為のポイントが足らないな。


 薬草採取の企画書を作ろう。

 難病の人に愛の手を。

 希少薬草の依頼を俺の寄付で出す。

 採った薬草はただで薬師に提供する。

 患者が助かった場合はギルドで宣伝をする。

 ギルドの評判も上がるし、患者も助かるし、俺もポイントが稼げるしで一石三鳥だ。


 前に書いた見張り塔もギルドが寄贈したと碑に刻もう。

 城壁もだ。


 これで薬草採取を10件も出せばかなりポイントが溜まるな。

 問題は大きな功績だ。

 Sランクになる為にはAランク相当の依頼でポイントを溜めて更に大きな功績だ。


 大きな功績、こればかりは運に任せるしかないか。

 ダンジョンでもできれば一発なんだが。

 聞いた話では一年前にこの近所にダンジョンが出来たらしい。

 スタンピードも起こしたと聞いた。

 そう頻繁に起きないだろう。


 龍脈は力を使うとしばらく枯れるらしいから。

 スタンピードを起こしたダンジョンはかなり龍脈を消耗するとの事。

 期待薄だな。


「お姉さん、どうだった」

「ちょっと、長くなるんだったら、後にしてくれない」


 いかにも駆け出しという女の子の冒険者が後ろからそう言った。


「ああ、悪い。どうぞ」

「冒険者登録したい」

「じゃ、この紙に書いて。ディザ君お待たせ。優しいのね」

「女の子には優しくしてやらないと」


「まったくどこで覚えたのやら。ところで、本当に城壁の工事費を出すの?」

「本当だよ。はい、企画書」


 受付嬢は企画書をペラペラとめくった。


「どこで書類の書き方を習ったのよ」

「さあね。これ、城壁の工事費の金貨100枚。早く依頼書を貼って」


 俺は金貨が入った袋を収納バッグから取り出し置いた。


「待って今、貼るから」


 依頼書が貼られた瞬間すかさずゲットした。


「お金を寄付してから、依頼を出させて。自分で受けるのね。ギルドが貰う手数料は帰って来ないわよ」

「ほんとだ。達成金が金貨90枚になってる。まあいいや。ああ、それから、さっきの企画を通すのは明日の昼にしてね」

「寄付してくれる人の意見には従いましょう」


 上手くいった。

 よし、手早く城壁を完成させるぞ。


 城壁を作る為にポリゴンの作成依頼にお金は掛かったが、依頼をすれば9割は返ってくる。

 ふっ、どんなもんだ。

 ポリゴンの力を使えば、Aランク依頼なんて軽い。


 明日も頑張るぞ。


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