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Seg 07 狭間の世界~ミラクルワンダーランド~ -02-

「いややわぁ~、そげん見つめんといて~。みっちゃん、っずかすぃ~」


「……みっちゃんさんのサングラス、この落下でもずれないって、すごいですね」

 わざと、『ボケ』でやってるであろう仕草に真面目まじめな反応をされて、一瞬いっしゅんだがさびしそうにまゆが下がるみっちゃん。


「これは『そーゆー仕様』やねん♪ それに、みっちゃん『さん』やなんて他人行儀ぎょうぎいらんわな~。敬語も使わんでえーよー」

納得なっとくしました! あと呼び方言いにくかったんでたすかりますっ!」


 その間にもどんどん下へ落ちていく。


 暗闇くらやみとは不思議なもので、真っ黒というわけでなく、黒い中にも、何かがうごめいて絶えず形を変えている。

 それは、鼓動こどうのように見え、水の流れのように見え、生きているもののように見えた。


 そして、もっと不思議なのが、そんなやみの中だというのに、自分の四肢ししがはっきり見えるということ。まるで、上から明かりでも照らされているように、手に手をかざすとかげができた。

 もちろん、上を見上げてもそんなものはない。それはかれ――みっちゃんも同様だった。


 そういえば、かれはさっきから余裕よゆうでもあるのかみょうな動きばかりしている。そのどれもがユウに向けられていて、わらわかそうとしているのがかろうじてわかる。


 もしかしたら、この余裕よゆうかれが行き着く先を知っているからなのかもしれない。


「あのー!」

「……なんじゃーい?」


 返事が聞こえるのに多少の時間がかかっている。


 距離きょりでは、両手をばしたほどにしかはなれていないのだが、落下の影響えいきょうから起こる風で会話に支障をきたしているのだ。


 それでも、さけべば声は届くようで、返事はちゃんと返ってきた。


「……とても不思議な穴をひたすら落ちてますが、これはどこに続いているかみっちゃんは知ってますかー?」

「それはな、おヌシの心次第しだいやで」

 ビシッとポーズを決めるみっちゃん。


 しばらく沈黙ちんもくが空間を支配し、微妙びみょうな表情のユウと共に落下していく。


「その表情やめてっ!? スベらせたのあやまるからやめて!?」

「みっちゃんには、『真面目まじめ』って言葉がもう少し似合う大人おとなになってほしいです」

「冷たい言葉がさるっ!」

「なんでそんなふざけた言い方ばっかしてるんですか?」

「あー……そりゃなんつーか、くせになってしもてのう……ちょこちょこ直そうとは思っちょるんやけどな」

「ファイトです」

応援おうえんされた! おっしゃ頑張がんばるで!」


 何を頑張がんばるのだろう、と思うと同時に、新たな不安ががる。


 このまま落ちていったらどうなってしまうのだろう。


 通常なら、着地すべき地面があるが、仮にあったとしても、この高さ、速さで落下すれば即死そくしだ。


 では、地面がなかったら。


 延々と落ち続けるだけで終わりがない。身動きが取れないうえに何かと厄介やっかい状況じょうきょうおちいることは必至だ。


 どちらにしても解決しないことは同じだった。


 ユウがあれこれかんがんでいると、今度は、みっちゃんの方から質問が飛んできた。


「なぁ、ユウどんはどうしてミサギ殿どののとこへ来たんじゃあ?」


「え?」


 聞こえなかったのではない。確認かくにんの意味で、だ。


「ミサギ殿どののとこへ来たのはなんでじゃあ?」


「なんでって……」


 答えようとして、少し考えた。アヤカシを呼び寄せる体質のことを話したところで、おそらく理解されないだろう。


 アヤカシがほかの人には見えないのだから当然だろう。


 ユウは少し考えてから答えた。


「勉強です。ボクのにいちゃんがミサギさんと友人で、紹介しょうかいされてきたんだ」


 ありきたりな理由をよそおう。


 だが、みっちゃんをおどろきの表情にするのには十分すぎたようだ。



 ――何かまずったかな



 ユウは緊張きんちょうした。


「ゆ、ゆゆ……友人やと……!?」

「……?」

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