魔王の約束とクズノハの歓迎会を兼ねた宴会をした。
クズノハが村に住むことが決まったので、各種族の長に報告。
俺が決めたことなら問題ないだろうということで合致、だが少し注意深く行動を見たほうがいいとの意見もあった。
気づいたときにクズノハに気を掛ける程度でいいだろうということでこれも決定。
あの後魔王はミハエルに思いっきり頭に平手打ちを食らって、少しベソをかいているが。
あれは魔王が悪かった、反省してくれ。
「さて、クズノハの歓迎会と魔王の約束を果たすため今日は宴会をするぞ。
ドワーフ族、カレーも含めた料理の準備を頼む。」
「任せてくれ、腕によりをかけて作ってやるわい。」
いつも負担をかけてすまないな、作り置きを作ってどこか1日くらいゆっくり休んでもいいんだぞ?
「村長は我らの楽しみを奪うというのか?」
趣味が仕事になっていたのを忘れていた、それなら体に無理が無い程度に楽しんでやってくれ。
村の皆はそれで助かっているからな、たまにグレーテとかが手伝いに入っているらしいけど。
「村長、我は何をすればよいのじゃ?
他の者は仕事を担っておるみたいじゃし、何もせんのは落ち着かん。」
「ダンジョンコアの作成と、人の役に立つ妖術の習得を頼んだだろ?
もしヒントが欲しいならプラインエルフ族のところに行くと、生活魔術を扱っているから何か分かるかもしれないし、単純に体を鍛える必要があるなら鍛錬所に行けばいい。」
「産業に関わらなくてよいのか?」
無理に関わる必要はないぞ、もし役立てるなら是非関わってほしいと伝えると「案外難しいの……。」と悩みながら家に帰っていった。
いずれ自分にしか出来ないことや、他の種族に混ざって力になれることが見つかるさ。
慌てなくていいと思うぞ、長く独りだったみたいだからゆっくり時間をかけて慣れていってくれ。
いつも通りの宴会のメニューにカレーが加わり、準備が整った。
「今日は新しい住民のクズノハの歓迎会、それと魔族領の長である魔王からのリクエストの宴会だ。
新しいメニューのカレーも加わっている、皆存分に楽しんでくれ。」
俺がそう言うと、ほぼ全員がカレーに向かっていった……みんなよっぽど気に入ったんだな。
魔王とクズノハも、ちゃっかりとカレーの列に……あ、新入りと来客だからか担がれてバケツリレーの要領で前まで運ばれた。
「やめるのじゃ、やめるのじゃ!」と2人の声がシンクロしながらどんどん前に運ばれている、俺も酒が入ったし面白いので止めないでおく。
「開様はカレーを食べないでよかったのですか?」
メアリーとカタリナがカレーを頬張りながらこちらに向かって歩いてきた、歩きながら食べるのは行儀が悪いぞ。
「俺は皆が楽しめればそれで、それに他の料理だって充分美味しいしカレーは酒にあまり合わないからな。」
「なるほど。」とカレーを平らげながら納得するメアリー……あれ、さっき半分以上残ってなかったか!?
「食べるの早いわね、お腹や子どもの調子は大丈夫なの?」
カタリナが少し心配そうにメアリーに尋ねる、俺もカタリナと同意見を持っているぞ。
「大丈夫ですよ、いっぱい食べて赤ちゃんに沢山栄養取ってもらわないと。
お酒が欲しい時はお酒風ジュースをもらってますし、食べ過ぎ飲みすぎがなければ大丈夫だと先輩経産婦の方々に言われてるので。」
それならいいけどな、異常を感じたり辛くなったら休むんだぞ。
俺やカタリナの心配をよそにもりもり食べるメアリー、あまり運動できないはずなのによく太らないな……。
「あの子は昔っから太らなかったわ、羨ましいわねぇ。」
そういう体質なんだろうな、俺も最近ちょっと体が重いので運動をしなきゃなぁと思っている。
ウォーキングとかジョギングとか、そういうのでいいかな?
まぁ今はそんなことより宴会を楽しもう、ただでさえ過ごしづらい氷の季節なんだし、こういう時は目いっぱい楽しまないとな。
まぁ少しずつ温かくなってるからもうすぐ花の季節になると思うけれど。
宴会が終わって夜が明ける、魔王はクズノハの尻尾に抱き着いて離れなくなったので、仕方なくクズノハが家まで連れて帰った。
クズノハの歓迎会だったのに来客の相手をさせて申し訳ない……何か埋め合わせはするからな。
なんなら家も簡易住居のままじゃないか、ちゃんとした住居に作り替えてやらないと可哀想だな。
後で材料を運んでもらって作り直すか。
「おはようなのじゃ。
昨日は馳走になった、すごく美味しかったのじゃよ。」
家で朝の体操をしていると、魔王が顔を出してきた。
「口に合ったようでよかったよ、村の料理は自慢だからな。
それよりクズノハにお礼は言ったか?」
「楽しくてお酒も入ってあんなふうになってしまったのじゃ、詫びと礼はきちんと言っておるのじゃよ。」
それならいい、一回ミハエルに怒られてるんだからその辺はキチンとしておいたほうがいいぞ?
「私もあれは冗談のつもりだったのじゃ、まさかお姉さまにあそこまで怒られるなんて……場を和ませるつもりだったんじゃが。」
あの場は和むような雰囲気じゃなかっただろ、そういうのがあまり分からない環境で育ったのだろうか。
よくよく考えれば王族だし、自分より上の立場は親しかいない環境だったんだろうな……そう考えると仕方ないのかもしれない。
「さて、出かけるとは言ったが泊まるとは言ってなかったので私はこれで帰るのじゃ。
キュウビの件はこちらで調べるゆえ、村は気にしなくて大丈夫じゃよ……何か力になってほしい時はまた声をかけるのじゃ。
あと、魚が欲しければ漁師でもギュンターでも話せばわかるようになっておる、1回の漁で獲れた魚全部を渡してもまだまだお釣りがくるから、好きな時に取りに来ていいんじゃよ。」
それはありがたい、そろそろ口をさっぱりさせたくて魚を食べたかったからな。
今度の魔族領への補充の時に声をかけさせてもらうか、改めて村の売り上げが出たら村専用の漁船と漁師を雇ってもいいかもしれないな。
クズノハからもらう予定のダンジョンコアで疑似的な海を作ってもいいな、そのほうが天候に左右もされず難破する心配も無い。
問題は海として成立するかどうかだが、次のダンジョンコアに要相談だな。
「それじゃあな、俺からも何かあればそっちに行かせてもらうよ。
またいつでも遊びに来てくれ、今度は違う料理で歓迎するから。」
魔王は「楽しみにしておるのじゃ。」と笑いながら魔族領へ帰っていった、一時はどうなることかと思ったが何とか丸く収まって良かったよ。
しかしキュウビか……どんな人物だったかクズノハに改めて聞く必要があるな。
俺から何かすることは今のところないけど、もしもに備えて知っておいたほうがいい。
クズノハに会えば聞くことにしよう、そう思って俺は空腹で鳴いている腹を押さえながら食堂に向かった。
隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!




