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食糧の出荷が終わった。

村に帰ると既に保管庫の前に荷車を置いてケンタウロス族とミノタウロス族が待機していた。


準備が良くて助かる、しかしそこそこな時間魔族領に居たがいつから待ってたんだ?


「30分ほど前から待っていました、あらかた仕事も終えて手空きの者から待機していってたんです。」


なるほど、無理に待機してなかったのならそれでいい。


「それでは今から順次出荷を行っていくぞ、ミノタウロス族は荷車に食糧を積んでくれ。

 ケンタウロス族は積み終えたら出発、向こうの荷下ろしもあるからミノタウロス族は何人か魔族領へ向かってくれ。」


「「わかりました!」」


俺の指示の下ケンタウロス族とミノタウロス族がどんどん作業を行っていく、さすが力自慢のミノタウロス族だ、積んでいくスピードが半端じゃない。


これ無理だろうという量の荷が載った荷車を涼しい顔で運んでいくケンタウロス族も流石だ、予定していた時間より早く終わりそうだな。




保管庫の半分くらいを運び終えたころだろうか、魔族領から戻ってきたケンタウロス族が俺を呼んだ。


どうしたんだ?


「魔族領側の受け入れがパンクしそうだそうです。」


一気に運び過ぎたか……しかしこちらは運ぶものはまだまだあるしなぁ。


「わかった、向こうにギュンターは居たか?」


「ギュンターという方かどうかはわかりませんが、恰幅のいい魔族の方が必死に指揮を執っているのは確認しております。」


うん、ギュンターだな。


「ちょっと話してくる、皆も少し休憩を取っていてくれ。

 俺が戻り次第作業再開ということで。」


「「はーい。」」


そう言って皆飲み物をもらいに食堂へ向かっていった、お酒は飲み過ぎないようにな。




魔族領へ入ると、今まで運んだ量のほとんどが積みあがっていた。


ほとんど運べてないじゃないか……これじゃ冷蔵や冷凍が解けて質が悪くなってしまう。


「ギュンター、ちょっとプラインエルフ族を呼んでくるからもう少し待っていてくれ。

 すぐに戻るから。」


俺を見て安堵の表情を浮かべてたギュンターに声をかけて、村へ引き返した。


すぐにプラインエルフ族を呼んで魔族領に戻り、プラインエルフ族に冷凍と冷蔵をかけ直してもらう。


「ギュンター、ほとんど運べてないが何かあったのか?」


「こちらへ入ってくる量とスピードが途轍もなさ過ぎますぞ……魔族の力では捌ききれないのですよ。」


種族の身体能力の差か、そこまで頭が回らなかった……すまない。


「わかった、出荷部隊の一部を魔族領の搬入に回すことにする。

 運ぶ場所とその他諸々の指示、種族間のトラブルの監視は魔族領に任せても大丈夫か?」


「大変助かります、もちろんそのくらいのことはさせていただきますぞ。

 一部のガラの悪い魔族以外とはトラブルも起こりますまい、それにケンタウロス族やミノタウロス族の方々の体躯を見てケンカを売ろうというヤツも居ないと思いますぞ。」


確かに、あの2種族の体格は筋骨隆々でとてもじゃないが勝てる気がしないからな。


安全とわかっていると何も怖くはないが、知らないと軽い畏怖を覚えるくらいにはすごい筋肉。


「じゃあその流れで、こちらも休憩を取らせているから終わり次第すぐに作業を再開するから、その時にケンタウロス族とミノタウロス族を魔族領に行ってもらうようにするよ。

 プラインエルフ族は運びきれてない食料の冷凍と冷蔵を引き続き頼む。」


「わかりました。」


こんなことになるなら先に魔族領に保管庫を立てて置けばよかったかな、でも保管庫に入れてまたそこから搬出するなんて今は二度手間だしこれでいいだろう。


次からはあらかじめ倉庫を作れば楽になるはずだから、そうするか。


俺は村に戻り、作業再開の指示を皆に出した。




出荷作業もほぼ終わり、ほとんどのケンタウロス族とミノタウロス族が魔族領の応援側に回っている状況。


もうここまで来ると俺が村側ですることは無くなっている、ギュンターに状況を確認しに行くか。


「ギュンター、食糧の量は足りそうか?」


「数日は楽々越せそうですが、氷の季節を越える備蓄となると魔族領全体には行き届かないと思いますぞ……。」


やっぱりそうか、最初に来た時に見たが首都だけでものすごい人数の魔族とすれ違ったもんな。


多めに作ったつもりではあるが、まぁ足りないものは仕方ない。


「わかった、とりあえず今日はすべての魔族が飢えることはないと思っていいんだな?」


「もちろんです、相当な量でしたので貧富の差を問わず全ての魔族に食糧が数日分行き渡っておるはずですぞ。」


それならよかった、今日の対応はこれで充分だな。


「その数日の間に俺はこの土地に保管庫とプラインエルフ族の配備を進める。

 保管庫に食糧の搬入をしてプラインエルフ族が冷凍と冷蔵を担当、魔族領には食糧引き渡しの受付をお願いするよ。

 必要ならミノタウロス族、ケンタウロス族も配備するからそれは当時になってから言ってくれれば対応するから。」


「魔族領も今回の氷の季節を越えることが出来そうですぞ。

 魔族を代表してお礼申し上げます、ありがとうございます。」


大丈夫だ、俺がすると言ったことだし値段の計算なんかは魔族領に丸投げしてるんだから。


ピンハネをされるかもしれないが、まぁ魚が手に入ればそれでいいし、しないだろうなという信用もある。


「途中から見させてもらっておったが、見事な手腕と相当な量じゃったの開どの。」


声が聞こえて振り返ると、魔王が居た。


領のトップが一人でこんな人が多いところに来て大丈夫なのか?


「大丈夫じゃ、こうしてお忍びで外に出るのは慣れておるからの。」


ちっとも大丈夫に聞こえなかったけど、まぁいいか。


「この度の対応は本当にありがたいのじゃ、数日は暮らせるという民の声が聞こえただけでも一安心じゃよ。

 先ほどのギュンターとの話を聞く限り、数日後にまた食糧が運び込まれるということじゃが……。」


あぁ、俺がここに保管庫を建ててさえしまえば後は今日の対応とほぼ一緒だ。


それに出荷と配るのを同時進行しなくていいから当日はもっと楽に対応出来ると思うぞ。


「それは非常にありがたい、このトラブルを越えてもここには足しげく通うものも出そうじゃの。

 何せちと食わせてもらったが味が非常に良い……私の新しいお気に入りじゃ。」


魔王のお墨付きを頂いた、ここまで美味しいと言われるとかなり嬉しいな。


「ギュンター、未開の地に払う計算は任せるのじゃ。

 すべての食糧を終え、集計が終われば数字を城に提出するようにの。」


「御意でございます。」


今日のところはこれで終わりだ、帰って食べて飲んで休もう、さすがにちょっと疲れたからな。


俺は皆に撤収の号令を出して、食堂に向かっていった。


隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!

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