魔族領に出荷する食糧が準備出来た。
魔族領から帰ると外はもう夜。
全員お腹も空いていたので食堂に行くと、魚の仕込みと晩御飯が出来ていた。
俺たちを待っていてくれたらしい、ありがとうな。
全員揃ったので魚を含めた晩御飯を食べ始める、初めての魚はどうだろうか……?
結果として魚は大好評、肉と違ってそこまでしつこくなりづらいのもいい所らしい。
生はかなり抵抗があったみたいだが、俺が食べてるのを見て周りも恐る恐る食べだした。
こちらも焼きと全然違う味で美味いと分かると皆どんどん食べ始める、好評で何よりだ。
それにしてもドワーフ族恐るべし……前の世界で使っていた刺身醤油より美味しい刺身醤油を1日で作るなんて。
いったい何をしたんだろう。
「酒に合いそう、これだけでワシらは必死になれる。」
確かに美味い魚は酒に合う、さすがだな。
今回は大丈夫だが、妊娠している人は食べ過ぎないようにと注意喚起をする。
主にメアリーから残念だという声があがったが、妊婦には皆より魚が少ない代わりの肉料理を作ってもらえるということで話は収まった。
「赤ちゃんの分まで栄養を取らないといけませんから!」
もちろんだ、自身のストレスにならないためにも食べたいものを腹いっぱい食べてくれ。
食堂で皆の意見をまとめると、魚は定期的に食べたいで合致した。
俺としても嬉しい、本当に美味しかった……背伸びして料亭に行って食べた味以上のものだったぞ。
そう言えば、ギュンターが村の食材は高価なものになると言っていたな……緊急事態の時に負担になっても悪いから今回は魔族領で民間に出回ってるものと同額程度で取引をするか。
取引に備えて、こちらもすぐ対応できるよう準備しておかないとな。
事情を説明して、狩り部隊には時間の許す限り狩り続けてきてもらうことに。
ドワーフ族とプラインエルフ族には獲物の解体、冷蔵と冷凍を頼んだ。
内臓は肥料に回すから、余裕があればケンタウロス族に運んでもらおう。
タイガ・レオ・トラにもある程度は与えて大丈夫だからな。
そして俺とカタリナとケンタウロス族、そしてミノタウロス族を呼んで野菜の収穫と種の仕分けをどんどん進める。
どれくらいあればいいんだろう、とりあえず2つ目の貯蔵庫を作ってそれも満杯になるくらいまでやっておけば足りるのかな?
魔族領の総人口を聞いておけばよかった、今行っても先日の話し合いのまとめで忙しいだろうし……目分量でいいか。
「村長ー!
貯蔵庫がそろそろ満杯になります、どうされますかー?」
それを聞いて俺は想像錬金術用の素材を入れてる倉庫に行き、2つ目の貯蔵庫を隣に錬成。
「今作った中に新しく入れていってくれー、それも満杯になったら一旦魔族領の依頼に向けた作業は終了にしよう。」
もう住人は驚きもせずどんどん運んで、冷凍・冷蔵の生活魔術をかけていっている。
寂しいような、慣れてくれて嬉しいような不思議な感覚。
でもちょっと休憩、ポーションを飲んでるから疲れはないが……そのポーションのせいでお腹がちゃぽちゃぽ鳴っているから。
休ませて、というかトイレで水分を出させてくれ。
2つ目の貯蔵庫がいっぱいになった、とりあえず魔族領が一番急いでいるであろう食料の準備は出来たかな?
そう言えば農作物が不作だと言っていたな……原因は分からないが土の栄養が無くなりかけているのかもしれない。
一応肥料も多めに作って渡すかどうか決めてもらおうか、もし要らなくても村で使うことも出来るし。
もし肥料で解決しないなら現地に行って原因を調べてみるのもいいかもしれない、ドラゴン族のおかげで空路も利用できるからな。
そのあたりは魔王が訪問して問題をまとめてくれているだろう、準備は出来たしそれまでは普通に生活をしていればいいさ。
貯蔵庫も2つともいっぱいになったし、食事しながらチビチビお酒を飲んでまったりするのもいいな。
最近は出ずっぱりでゆっくり出来ていなかったし、メアリーも連れてきて一緒に食べよう。
そう思って家に帰りメアリーを呼んで、食堂に向かっていると狩り部隊が食堂裏のダンジョンから出てくるのが見えた。
大猟の獲物と共に、すごいやりきった感が出ている表情で。
貯蔵庫はいっぱいだ、もう入らない。
……ドワーフ族、肉パーティーの準備をしてくれ。
余剰分の肉をふんだんに使って色んな肉料理を作ってくれた、今日は遠慮せずに食べてくれ。
「村長、これ魔法陣の見張りや警備にも持っていってあげていいですかー?」
もちろんだ、どんどん持っていってやってくれ。
ドラゴン族とミノタウロス族が腹いっぱい食べても余りそうなくらい量があるからな。
「んんー!
魚もいいですが、やっぱり肉もいいですよね!」
メアリーがウキウキで肉料理を頬張っている、お腹いっぱい食べるのは良いが食べ過ぎないようにな。
するとドワーフ族がメアリーに酒を持ってきた、妊婦に酒は良くないんだが……この世界では知られていないのだろうか?
「大丈夫じゃよ、妊婦に酒を勧めるほどワシらも知識がないわけじゃないからの。
これは妊婦向けにワシらが作った酒味のジュースじゃ、開発に苦労したがかなり味は酒に寄せれたと思うぞい。」
いわゆるノンアルコール飲料か……ドワーフ族本当にどうなってるんだ。
「ホントですね、きっちりお酒の味はしますが全然お酒臭さがないです……これは酔いそうにないですし料理にすごく合いますよ!」
久々にお酒の味が楽しめてメアリーもご満悦だ、需要はあるだろうしこれはいいもの作ったな。
するとカタリナと顔を赤らめたウーテがメアリーに近づいて話しかけだした。
「村長、夫婦団らんのところ悪いけどメアリーを少し借りていいかしら?」
話すことがあるんだったら構わないぞ、でも終わったらメアリーが戻ってきてくれると嬉しい。
「それはもちろんよ。
じゃあメアリー、ちょっとこっちに来て相談に乗ってくれるかしら。」
「えぇ、わかったわ。
もっと開様と一緒に食事したいから手短にお願いね?」
ここ最近は忙しかったからなぁ、魔族領の対応が始まるとまた少しの間村を空けるだろうし……一緒に居られる間は目いっぱい一緒に居てやりたい。
メアリーは15分程度で戻ってきた、ちょっと顔を赤らめて帰ってきたが何を話したのだろう。
「開様には関係ありますが、いずれ分かるので内容は黙秘しますっ!
私としては嬉しさもありますが……ゴニョゴニョ……。」
どんな内容だったんだ……後半は聞き取れないくらい小声だった。
まぁ分かるなら待っていればいいか。
ちらりとカタリナとウーテを見ると、カタリナは嬉しそうにニヤけていてウーテはさっきより顔が赤くなっている。
そんなカタリナの表情を見て、少し前にからかわれたことを思い出した。
まさかな。
肉パーティーも終わって片付けも終わり、皆が寝静まる時間。
メアリーはちょっと気になることがあるので、シモーネのところに行ってくると家を出ていった。
なんだろうな、と思いながらドワーフ族からこっそりもらっていたお酒をちびちび飲みながらメアリーの帰りを待つことに。
すると、コンコンと家の玄関をノックする音が聞こえてきた。
メアリーならそのまま入ってくるはずだが、誰だろうな?
「はーい村長、この前言ってたことを実行しに来たわよ。」
「よっ……よろしくね……!」
誰だろうと思い出てみると、カタリナとウーテだった……この前言ってたことって……まさか本当に!?
その日はメアリーは帰ってくることなく、2人に求められるがまま事を終えて気が付くと眠りに落ちていた。
隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!




