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魔王との謁見、新しい事実。

「ミハエル……ミハエルなのか!?」


ミハエルの顔を見てギルド長が驚いている、面識があるのか?


「久しぶりね、昔の賭けの負けは返せそうにないわ。

 私はもう村長と契約魔術を履行してるから、村の損になる行動は取れないのよ。」


「無事だったのか……もうだいぶ昔のことだし生きてるだけで充分だよ。

 お前が巨悪の魔人になったという意見が強くてな、俺はずっと違うと信じてた。」


「あ、それは合ってるわ。」


うん、間違ってないな。


まぁ<元・巨悪の魔人>だけど、今は普通の戦えない魔族のミハエルだ。


「なんだと!?

 でも巨悪の魔人騒動は収まったんだろ、おかしいじゃないか。」


「詳しく話すと長くなるけど、私はあるダンジョンコアの守り主に操られて巨悪の魔人と呼ばれる存在になったのよ。

 ここにいるオスカーにボコボコにされた時に私の体から出て行ったけどね。」


「そうだったのか……。」


そんな魔物がいるのか、実力者だったであろうミハエルを操り破壊の限りを尽くしていったとなると完全な悪だろうな。


「まぁ、情報があったということで俺からも魔王様に報告しておくよ。

 仕事が出来たし俺も魔王様のところに行ってくる、謁見が出来るようになれば呼びに来るからな。」


「あ、ギルド長。

 少し質問があるんだが大丈夫か?」


「大丈夫だよ、どうしたんだい開さん。」


「俺はグレーテの証人とは別に魔族領に用事があるんだ。

 商人か漁師、もしくはそれを紹介してくれる人を探してるんだがいい人はいないだろうか?」


ギルド長は少し考えて「居るには居るけどすぐには紹介出来ない、また改めて訪ねてくれ。」とのこと。


まぁいきなりのお願いだし、時間を置いて対応してくれるなら十分だ。


まずは謁見を済ませてからだな、少し待たせてもらおう。


デニス、来るときに市場や食べ物を売ってるところがあったからってうろつこうとするな、ここまで来るのに多くの人を見たが全て魔族だったから目立つぞ。


質問攻めにあって見て回れないだろうし、今は大人しくしておこう。




「お待たせいたしました、魔王様との謁見の準備が整いましたので魔王城への登城をお願いいたします。」


部屋でくつろがせてもらっていると、ギルドの受付嬢から声が掛かる。


グレーテの用事もこれで終わるかな、ミハエルの表情はさらに険しい表情になったが。


後から入ってきたギルド長に案内され、魔王城を目指す。


字面だけ見ると、前の世界のゲームでラストダンジョンに向かっている感じがして違和感がすごいが、平和な城下町を見ているとゲームとは違うんだなと認識させられる。


殺伐とした世界じゃなくてよかったよ、前の世界より平和なんじゃないか?


やはり行き過ぎた文明発達は平和を阻害するのだろうか、前の世界の技術を軽々しく使わないほうがいいだろうな。


それによって争いが引き起こされるのはごめんだ。


色々考えてると、ギルド長が俺だけに聞こえるような小声で耳打ちしてきた。


「巨悪の魔人の件を魔王様に報告したんだが、先代魔王様も呼び出してちょっとした騒動になったぞ。

 かなり表情も険しいご様子だったし、何かあると思っていてくれ。」


ものすごい不穏なことを言われた、ミハエル……ほんとに何をしでかしているんだ。


操られていた際に首都で何かしでかしたんだろうか、まぁ話を聞くしかわかる道もないだろうし「わかった、覚悟しておく。」と返事をした。




城内に入り、受付を済ませるとすぐに謁見に行けるとのこと。


他に順番待ちをしている人を抜いての謁見なので、この謁見が魔王にとってどれだけ重要なのかが何となくわかる。


「冒険者グレーテ、魔王様の出された未開の地の調査から、現地住民を連れて帰りました!」


グレーテが謁見の間の門を開け、大声で跪いてそう告げた。


「うむ、入ってよいのじゃ。

 未開の地の現地住民も一緒に入るがよい、遠路はるばるよくぞ魔族領へ参ったのじゃ。」


魔王の前まで歩いていき、グレーテが改めて跪く。


魔王を見ると、とても幼い男の子だ……だが種族によってはラウラみたいなこともあるからわからないな。


俺もグレーテに倣って跪こうとすると、オスカーに止められた。


「開どのまで跪くこともなかろう、我らは初めて来た客人だ。

 魔王どのは寛大であろう、普通にしておけばよい。」


そういうものなのかな、まぁ確かに劣悪な関係にはなりたくないが、上下関係になるのも嫌だな。


そう思ってオスカーの言う通りに普通に立っていると、大臣と衛兵らしき人に睨まれたが、魔王が「あれを従えれる力はここに居る者にはおらんのじゃ、お主らドラゴン族に勝てないじゃろ?」と言うと、少し怯えた表情をしてしまった。


怖がらせるつもりはなかったんだがそうなるのが正しい、しかしドラゴン族とよくわかったな。


「グレーテよ、よくぞ帰ったのじゃ。

 お前ほどの実力者が一人で未開の地へ行ったと聞いてびっくりしたぞ、無事に帰ってきてくれてよかったのじゃ。」


「いえ……何度も死を覚悟しましたが、未開の地にあった村が衰弱した私を救ってくださったので今があります。

 村長である開さんの能力、多種多様な種族の技術と戦闘力、豊富な食糧……未開の地は少人数で集落を作りながら豊かに生活している土地でありました。」


グレーテはあの村しか見たことないから確かにそう感じるか……。


「ふむ、私が思っていた土地とかなり違ったのじゃ……だが現地住民を連れて帰ったグレーテが言うのならその通りなのじゃろうな。

 色々聞きたいことはあるが順番に終わらせるのじゃ……開どのと言ったかの、グレーテはこう言ってるが相違ないじゃろうか?」


「先ほどグレーテに軽く紹介してもらった、未開の地で興した村の村長をしている開 拓志だ。

 魔族領での礼儀を知らなくてな、多少の無礼があるだろうが許してくれ。

 グレーテの報告に補足をするなら未開の地では俺の村が特殊な例だ、通常は1つの種族のみで里を作りかなりギリギリな生活を送っている、それこそ種族間の間引きが起こるほどらしい。

 俺の村ではそのようなことは一切起こしてないがな。」


俺がそう言うと、グレーテは「え、そうだったんですか!?」と驚いている。


そうだぞ、俺の村しか見てないだろうから仕方ないけどな。


「なるほど、グレーテは本当に運がよかったのじゃな。

 して、そちらに居るドラゴン族は巨悪の魔人を退けたドラゴンとお見受けするが……貴方も村に住んでおるんじゃろうか?」


「魔王の言う通り、我は巨悪の魔人と戦い退けたドラゴン族の始祖であるリムドブルムのオスカーだ。

 確かにドラゴン族は村に住まわせてもらっている、我の家族の事情も多少あるが、主な理由は開どのの興した村が過ごしやすいのが一番の理由だ。」


「なるほど、未開の地にそのような村があるとは驚きじゃ……。

 私も興味が湧いてきた、近いうちに村を訪問させてもらっていいじゃろうか?」


魔族全員が「えっ!?」と同時に言ったので少し笑いそうになってしまった。


「しかし、魔王直々に訪問するような村でもないぞ?

 飯がうまいだけで後は他の種族の技術に助けられてる村だ、栄え方で言うなら魔族領の首都のほうが段違いに栄えているぞ。

 それに大事な人をドラゴン族の背中に乗せるのもな……もし落ちたとき責任が取れない。」


俺がそう言うと、魔王は笑いながら返事をしてきた。


「ドラゴン族が住みやすいという村に興味があるのじゃ、気にすることはないのじゃ。

 それに村へは転移魔術を魔族領に展開すれば問題ないじゃろう……そうじゃろ、ミハエル?

 それとも、お姉さまと呼んだほうがいいじゃろうか?」


……お姉さま!?


そう聞いた俺と他のメンバーは、目を見開いたままミハエルを見る……ミハエルは跪いた状態から頭を抱えて倒れこんだ。


隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!

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