別視点幕間:やっとの思いで未開の地にある生活圏にたどり着けました
未開の地に来てからそこそこな日にちが経った。
集落はおろか話せる人すら出会えてない、食料も底を尽きかけているわ……。
本格的にヤバい、本当に未開の地には先住民は居ないのかと絶望していると、目の前に集落が見えた!
生活技術がある、少なくとも魔物ではない誰かがあそこに住んでる!
少しふらつく足を必死に前に出しながら、視線に映る集落を目指した。
着いた……やっと落ち着いて休める……と思っていたが集落の入り口に看板がある。
「なになに……ドワーフ族は移住した、用がある種族は街道の先にある村まで……!?
ここには誰も居ないの!?」
絶望したが、明らかに整備された道の先に村がある……それが分かっただけでも幸運。
それだけじゃない、移住したと言っても住居は残っている……使わせてもらおう。
食料を少しでも残してくれてたら嬉しいけれど……それは流石にないわよね。
住居を見て回っても、使えそうなものは特に残されていなかった。
でも屋根のある場所で寝れる、それだけのことで涙が出る……本当に怖くて心細かったから。
まだ少し明るかったが、食料は次の食事で完全に底を尽いてしまうので、休めるうちに休もうと毛布に身をくるみ無理やり寝ることに。
目が覚めると、日が昇る少し前。
肌寒さが残る時間だが、村を目指すために食事を取る。
あの街道がどれだけ続くかわからない、けどあれだけ整備されてる道ならそんな長くはないはず。
そう考えて最後の食糧を消費した。
1日歩いても村は見えない、でも街道は続いてる……嘘でしょ……。
オークも居るから気配遮断は切らせない……でも魔力も尽きかけてる。
あの大岩まで行ったら休もう……目に見える目標を立てて、意地で前に進む。
大岩に着いた瞬間、倒れるように眠ってしまった。
目が覚めると周りは明るくなっていた、ろくな野営の準備もしないまま外で寝たのは初めて。
無事でよかった……魔物に見つからなかっただけでも運がいいと思うしかないわね。
あの集落にあった看板の文字に希望を抱いて先に進む。
大岩の先を見ると村が見えた……ちょっと頑張って岩の裏を見てたら村を見つけれたじゃないのよ!
昨日の私のバカ!
なんて思ったが、動けなかったのは事実だし今生きてるのも事実。
なら今村を目指せばいいのよ、足はふらついてるけど。
必死に歩いて、視界もぼやけているけど村の前に着いたのは何となくわかった。
誰かに声をかけられたけど、何て言ってるのか上手く聞き取れなかった。
あぁ……言葉を話せる誰かがそこに居る。
「何か……食べ物を恵んでくれないかしら……。」
安心して力も抜けた私は、そう伝えるだけで精いっぱいだった。
気が付くと食堂のようなところで卵粥とスープを出してもらった。
美味しい……生きててよかった……!
涙をこぼしながら出してもらった食事を食べていると、空腹が満たされて元気になっていくのがわかる。
やっぱり空腹は心身ともに不調になる最悪の状態異常だわ。
生きてる幸運と食事の有難さを嚙みしめていると責任者らしき人たちがこちらに来た。
エルフと人間……かしら?
魔族領の海を越えた先にある大陸に住んでる人間がどうしてここに、しかも未開の地で他種族を束ねているってどういうことかしら?
でも今はそんな疑問よりお礼よね、今後どういう扱いを受けるか不安だけれど……。
頭を下げてお礼を言うと、人間の方はこの村の村長らしい……身体能力も魔術適正も他種族に劣ると言われる人間が村長とは驚き。
それよりも驚いたのは、魔族領に行きたかったから村長が出発するまでここに居ていいですって!?
願ってもない提案だわ!
でも魔族領に入ってさようなら、より冒険者ギルドまで付いてきてもらって証人になってもらったほうが確実よね。
そう提案してみると即座に快諾、やった……!
花の季節になってからの出発らしいが何も問題は無い、家も準備してくれるという超優遇っぷりだし。
それどころか仕事を手伝わないと村に損をさせてしまうので仕事を手伝うと言うと、後で振り分けるとのこと。
食事も終わり、一度村長の家に行くことになったので食堂を出ると、ドラゴンとデモンタイガーがこちらに向かって歩いてきていた。
文献でした見たことがない、1匹でも都市が滅ぶ伝説の災厄なのにそれが2匹……!?
この村も終わりよ……。
私は恐怖のあまり気絶してしまった。
気が付くと村長の家の布団の上だった。
私、何かすごく怖いものを見た気がする……村は大丈夫なのかしら!?
大丈夫らしい、よかった。
それより今、家の建設予定地の整地が終わったって言わなかった?
そんな長い間気を失ってたのかと思ったら、村長のスキルですぐに終わるらしい……なるほど、建築系のスキルで他種族を助けて束ねているのね。
人間が村長を出来るのも納得だわ、土木は時間・力・知識・技術すべてが必要な労働だから一手に担ってくれるならありがたいだろうし。
要望を聞かれたが、一時的な住民にそこまで手間をかけさせるのもどうかと思うので最低限の要望を出しておく。
すると村長が倉庫に行ってしばらくすると、家が目の前に出現。
私はまた気絶しました。
気が付いて家が目の前に出来た夢を見たと伝えると、村長の奥様であるメアリーさんに現実ですよとたしなめられた。
私すごく恥ずかしい声で驚いちゃったと思う……「ひゃぁぁぁっ!」って!
家は本当に完成したらしいし、お風呂という水浴びも出来るらしい。
着替えは家に運ばれて、使ってもいいとのこと。
……ここが楽園ですかね?
首都の宿屋でもここまでサービスされませんよ?
しかも温かいらしい、冷たい水で体を洗うのは辛いときもあったから楽しみだわ。
楽園どころの騒ぎじゃなかった、ここは天国!
死んだ後に行く場所だと言われても何も疑問じゃないわ、ご飯は美味しいし、自分の家はあるし、お風呂という最高の施設がある……。
魔族領で富と名声を得てもここでの生活は再現出来ないわ、魔王様だって知らないんじゃないかしら。
帰らなくてもいいかな……私ここに一生居てもいいわ。
いや、村長に魔族領を案内しないとダメなので一度は帰らないとダメね、それまでは仕事しなきゃ。
メアリーさんと一緒になって特技を聞かれたので一通り使えるスキルは伝えた。
気配遮断スキルに回復スキル、後は短剣を使った近接戦闘。
メアリーさんの表情が微妙……え、足りないの?
動物程度なら狩って解体して持ってこれますよ!?
狩りは村だけで事足りるどころか余るらしい……部隊を分けてドラゴン族と鍛錬しても充分ってどういうことなんでしょうね?
ホントなのかな……。
回復は傷だけかと聞かれたので状態異常もある程度は、と伝えるとつわりは抑えれるかと聞かれた。
え、わかんないです……今度試してみますか?
メアリーさんには「是非!」と念を押された……つわりってやっぱり大変なんだなぁ。
さて、お風呂を出て村長にお礼と挨拶をして寝よう。
明日から仕事、頑張るぞ!
グレーテちゃん視点やっと終わりました!
隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!




