新しい集会所で話し合いをした。
陽の季節のデパートが開催される数日前。
家の近くが空いていたのでそこに集会所を仮設置、そしてそこで初の話し合いを開催。
議題はこの集会所の場所が適切かどうかと、村の面積拡充。
それと、デパートで扱う商品に釣具を追加したいという声がドワーフ族から出てきた。
後者は値段次第という事で、話し合いの後に釣具の市場調査へ出発するとのこと。
実際ドワーフ族は金属こそ俺が想像錬金術で作った物を利用しているが、性能は既に前の世界の品質を超えている。
特に凄いのはリールだ。
一番難しいところなのに前の世界より巻き取りやすくて糸が絡みづらい、そして故障が少ないし飛距離にも影響している。
50g程度のルアーで200m前後飛ぶなんて思いもしなかったぞ、流石に焦った。
閑話休題。
「集会所に関してはこの位置でいいと思うぞ。
他の者はどう思う?」
オスカーが話の流れを戻すためか、集会所の位置に関して意見を出してくれた。
適当に建てただけだが問題無いらしい、でもここってアクセスが悪くて他の人が大変な気がするんだけど。
だが、俺の考えとは裏腹に次々と賛成の声が挙がる。
「俺の家は他の種族の居住区と独立してるし、不便じゃないか?」
「そもそも話し合いの頻度も減っていますし、村長の負担が減るならそれで賛成です。
不便と言ってもそんな変わったものではないですし。」
ハインツが俺の言葉に返事をすると、他の皆がうんうんと首を縦に振る。
そういうなら……まぁいいけどさ。
「それより村の面積拡充が問題ですね。
村長の意見をそのまま適用すると森の木を伐採しないといけませんし……そうなるとドリアード様がお怒りになるかと。」
「何も対応しないならちょっと怒るわよ?」
ハインツが問題提起をする、そして懸念事項通りにドリアードが返事をした。
だがその問題に関しては想定済みだ、俺だって考え無しに意見を出したわけではない。
「伐採した分他の場所へ植林するさ、それで問題無いだろう?」
「普通ならそれで問題無いんだけどね……。
村長が森の土に栄養を混ぜ込んだでしょ、あれがまだ残ってるらしくって木の成長速度に差が出ちゃうわ。」
「なら植林したところに同じことをすればいい。
あれくらいやろうと思えばいくらでも出来るし――狩り部隊の協力は必要だけど。」
それを聞いたドリアードは考え込む様子を見せて黙り込んだ。
ぽつりと「その手があったわね……。」と呟いている。
それくらいは気づいてほしかった、村の食糧事情にも左右されてくるからいつでも使える手というわけではないけれど。
マックスが来て食糧事情が少しピンチになるかと思ったが、特に問題も無いし……少し頑張ればいつでも出来るとは思うけどさ。
「魔物の生息域も潰してしまうがそれは良いのか?
最近は敵対してないという報告があがってきておる……下手に恨みを買う必要もないと思うが。」
「うーん、そこなんだよな。」
オスカーの言う通り最近は魔物との対立は激減している、その報告書は俺も目を通した。
どうやら敵対しても利が無い事を理解したらしく、最近は遠出する住民に手を振るくらいには友好関係を築けているらしい。
魔物だと侮っていたが、想像以上に社会性があってびっくりした。
だが村が手狭になっているのも事実、それに人口は徐々に増えているから将来は今より手狭になるのは明白だ。
「あのー、それならアタイとオークで交渉しましょうか?」
あれこれ悩んでいる所に意見を出してきたのはウルリケ。
「可能なのか?」
「アタイの実験の成果が正しいなら、そこまで社会性を築けている魔物はここに居る種族のように話し合いが出来るまで理性が芽生えているはず。
オークやナーガみたいに改造してないから断言は出来ないけど……通訳はオーガに任せるから護衛も兼ねれるし適任だと思うの。」
「分かった、それならお願いするよ。
今はコロポックル族のところでホーニッヒを作ってる、行ける時に声をかけて一緒に行ってくれ。」
俺はウルリケとの会話は終了したと思い、妻達と話そうとしたがウルリケは違うらしく「え、えっ?」ときょどっている。
何故かと問うとコロポックル族の所に行ったことないそうだ……ずっとあそこで仕事してるのに会いに行ってなかったのか。
帰る場所はシュテフィと住んでる家だから問題は……いや、コロポックル族の養蜂所は施設区にある。
もしオーガやナーガが家に帰るなら、少なからず他の来訪者の目に入るだろう。
しかし問題になってない……何かあるのかもな。
「あの子達村に来てたんですね……やっと会える!」
まさかのウルリケがそれを知らないとは思ってなかった。
いつでも会えるから声をかけてくれ、オーガの主人がウルリケだというのもコロポックル族に伝えておくから。
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