リッカに連れて来られた場所が驚きだった。
リッカにせがまれて引っ張られながら連れて来られた先は――どこだここ。
転移魔法陣を通ったのは分かったから知ってる場所のはずなんだが、俺はこの場所を知らない。
綺麗なコテージのような建物がいくつか、それに立派な船が2隻停泊しているのが見える。
本当にどこだここは……海の近くなのは分かったし魔族領のどこかだろうか。
「どうだい村長、すごくないか?」
リッカは鼻を鳴らしながら自慢げに言い放ったが、俺は何が何だか分からない。
「すごいって、何がだ?」
「ふふっ、その反応が一つの褒美みたいなものだよ。
ここは途中から僕が主体になって開発した場所なんだ、エルケさんや流澪さんにも意見はもらったけどね。」
エルケや流澪も関わっている……まさか、嘘だろ?
「ここ、パーン族の上位に開拓を頼んでいた島なのか!?」
あまりに立派過ぎる、確かに開拓と地図の作成を頼んだがここまでやれとは言ってないぞ?
素直にすごいとは思うし、そのまま褒めてやりたいが……リッカに注意しなければならないこともあるな。
「リッカ、ここの開拓はパーン族の上位に与えた罰だ。
確かにいい出来だが罰の途中で手を出すのはいただけないぞ。」
「それなら問題無いさ、初期の開拓と地図の作成が終了したのはエルケさんが確認済みだ。
それにコロポックル族と協力した魚漁の技術も確立している、今はホーニッヒの収穫が繫忙期らしくて一旦休止してるみたいだが。
僕が携わったのはそこまで終わってからだ、流澪さんのリゾート地という言葉の意味を聞いて僕なりにやってみたんだ。
改めて聞こう、ここはすごくないか?」
また報告漏れだろうか、それとも少し積みあがっていた未確認書類にその件があったのだろうか……もし後者なら怒れないな。
週に1~2日は書類に専念する日を作らないと、今後こういうことがあったら困るし調整しなければ。
さて、ワクワクした顔で俺の返事を待ってるリッカに返事をしてやらないと可哀想だな。
「すごいぞリッカ、ここは俺が知ってるどのリゾート地よりも綺麗な場所だよ。
しかし……こんな開発をしてどう活用するつもりだ?
他の来訪者を入れるにしても、漁港のすぐ近くじゃあまり喜ばれないんじゃない気もするけど……。」
「ふふ、あの港はただの港だし停泊している船は遊覧船だから安心してくれ―ーちなみに遊覧中に釣りも体験出来るよ。
漁港はまた見えない場所にある、そこにはこれより立派な漁船が停泊中さ。
ここまで話すと分かったと思うが、ここは非日常体験をしてもらう場所にしようと思っている。
村長が知ってるリゾート地というのは、そういう体験をする場所なんだろう?」
あんな大きな船がまさか遊覧船だとは思わない、パーン族の上位が作ったのかコロポックル族とダークエルフ族が協力したのか……どっちにしてもすごいな。
しかしここまで見事にリゾート地を体現するのは凄い、この世界にはそういう文化は無いと思ってたんだが。
それに釣りが出来るとは、釣竿はともかくこの世界にリールなんてあるのだろうか。
それに釣り糸も……ただの糸じゃとてもじゃないが釣りには適さないし。
だが釣りという文化がある以上何かあるんだろう、今度体験させてもらうとしよう。
「リッカがここまでしてくれてるとは思ってなかった。
リゾート地としても完璧だよ、俺も使いたいくらいだ。」
実際使いたい。
「ふふ、最高の褒め言葉をありがとう。
まずは村の住民に使ってもらうつもりだ、告知と体験者を募るのはこの後ラミア族にお願いするとして――村長にもお願い、というか許可を出してもらいたい事があるんだよ。」
「どうしたんだ?」
「ここで過ごす際の食糧についてさ、倉庫はあるからいいけどこの島だけで自給自足というわけにも行かなくてね。
村から一部流用させてほしいのと、それと魚漁で獲れた魚を島で使う許可もほしいな。」
どんなお願いが来るかと思ったら至極普通のお願いだった。
「それくらいなら問題無いぞ、シュテフィの能力を使った倉庫じゃないならその都度持っていってくれて構わないよう話を通しておくさ。」
「流石村長、即断即決に感謝するよ。
それじゃあ僕はパーン族の上位と今後の話し合いをしてくる、無理矢理連れてきて申し訳なかった……でも早く見せたくてね。
それじゃあ。」
リッカはそう言って漁港がある方向へ走っていった、俺は手を振ってリッカと別れる。
しかしこれはすぐにでも見せたくなるだろうな、よく今まで我慢したものだよ。
だが……獲れたて釣りたての魚と新鮮で美味しい野菜と肉にコテージ。
俺、というか全男子の憧れが詰まった場所が完成している。
しかも釣りが出来るんだろ、好きな人にはたまらない環境だ。
こうしちゃいられない。
俺だけの釣り竿を作って来なくちゃ、それにリールとルアーも。
早めに遊覧船を出してもらうとしよう、今から楽しみだ!
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