別視点幕間:虎の魔物はこう懐く。
ワガハイはデモンタイガー。
他の種族からはそう呼ばれている。
この辺では恐れられてる種族だ。
人間はもちろん、魔族だってワガハイを見たら逃げる。
最近は見ないけど。
現在縄張りである森を巡回中。
ついでにご飯も探している。
そこに、ちょうどよくオークを発見。
オークに向かって飛び出していく、いただきまーす。
するとオークも珍しく向かってくる。
なんでだ?いつもはワガハイを見ると逃げていくのに。
珍しいことだが、力の差はワガハイが圧倒的上。
サクっと倒して食べさせてもらおう。
ん?
なんだこのズドドドドっていう地鳴りは。
どうやらこのオーク、近くにあるダンジョンから集団暴走してきたオークの集団から前に出すぎた1匹だったらしい。
とんでもない数が倒したオークの後ろから現れた。
圧倒的数の有利を理解してるのか、ワガハイを見ても逃げない。
どうりでさっきの1匹も逃げなかったわけだ。
簡単に見積もって3000匹以上。
絶対もっと居る。
ダンジョンから出てきたからか、体の大きな個体は武器も持っているのが厄介だ。
ちょっと、いやかなり絶望。
でもワガハイ頑張った。
いくらワガハイのほうが強くても、数の有利で何度も押し負けた。
けどガムシャラに押し返した。
なんとか残り一体、というところまで倒したがワガハイの体力もほぼ限界。
向こうは最後尾にいたのかほぼ無傷。
しかも剣持ち。
ワガハイもここで最期か、と諦めかけたその時だった。
泉のほうから、魔力を使用した流れを感じる。
このオークさえ何とかしてくれれば生き残れるかもしれない。
先にワガハイが倒される可能性もあるが、現状で諦めるよりマシだ。
一縷の望みにかけて、最後の力を振り絞りその方向へ走り出す。
オークは……もちろん来るよね。
魔力の流れを感じた場所へ近づくと家が見える。
え、なんでこんなところに家?
この森だいぶ危ないところなんだけど。
家を建てるような種族がこの森に住むとは思えない。
混乱していると家の前で完全に追いつかれ、何もなければワガハイの負けが濃厚な戦闘に。
すると家の中からすごい間抜けな声が聞こえた。
この家の住人が中に居る。
だがあんな間抜けな声を出すなら大した力はないかもしれない。
でもここに家を建てる種族なら知性も力もきっとあるはず。
助けて、お願い。
そう思っていた瞬間、魔力を感じたと同時に目の前のオークが肉と骨と内臓になった。
剣は使い手を失い地面に落下。
……。
え、なんで?
啞然となる。
声のした方向を見ると人間と目が合った。
すると何かをワガハイめがけて振りまいてきた。
何をする!やめろ!
そう思った矢先、全身の傷が無くなった。
え、嘘?
何をした?
そんな薬あったっけ?
というか人間や魔族の使う上級魔法でも、瀕死の傷を一瞬では治せないはず。
すごすぎない?
ここに来てビックリしか起きてないんだけど。
ビックリしすぎて人間を再び見つめる。
色々考えることはあるけど、まずは腹ごしらえ。
食べて休んで、体力回復しなきゃ。
まずは内臓から。
いただきまーす。
肉より先に内臓から食べれるのはいいね、ワガハイ内臓が好き。
うん、美味しい。
お腹が空いてたのもあってすぐに無くなってしまった。
お肉も食べよう。
薄くなってて食べにくい、あの人間の魔法かな?
…ん?
オークの肉ってこんな美味しかったっけ?
めちゃくちゃ美味しいんだけど、今までで一番美味しい。
この味もあの人間が何かしたのかな。
つくづくすごい、飼ってくれないかな。
内臓も食べておこう。
ん、こっちも美味しい。
人間にも肉を持っていこう、助けてくれたからね。
人間は少し考えて肉を受け取った。
もっと持ってくるから待ってて。
その後人間は、そのあたりの木から木を割ったものと、細長い枝のようなものを作り出した。
ん?
今何したの?
魔力は感じた、でも魔力だけでそんなこと出来る種族見たことないんだけど?
細長いものに肉を刺し終えると、火で肉を焼き始めた。
傷も回復して腹ごしらえも済んだが、虎生最大の戦闘で疲弊していたので休みたかった。
身体も冷えていたので火に当たらせてもらおう。
この人間はワガハイを襲わない、そんな気がする。
あったかーい。
あ、人間の食事が終わった。
泉の方向に向かおうとしている、ワガハイも水飲みたい。
水を飲み終えると、また人間が道具を木から作り出し、枯れ葉を集め始めた。
ワガハイの寝床?
そこまでしてくれるの?
飼われちゃうよ?
というか、飼ってください。
ワガハイより絶対強いもん、長い物には巻かれたい。
お肉美味しくしてくれるし。
仲間と会えたら教えてあげよう。
皆元気かな?
おや、枯れ葉を集め終えたみたい。
ならワガハイも……。
入れない。
この扉狭くて頭しか通らない。
人間、助けて。
そう思って見ていると、扉が2枚になった。
これでワガハイも通れる。
やっぱりこの人間はすごい、一瞬で建物を改造するなんて。
いや、もうご主人。
飼われるって決めたから。
ご主人すごい。
ご主人、一緒に寝よう!
作者お気に入りのキャラ、べた慣れネコ科っていいですよね?
隔日投稿(お昼12:00)していきますので、是非ブックマークして追いかけてください!