衰弱しきった来訪者が来た
メアリーの助言を受けて、ドラゴンの牙製のつるはしを2つ想像錬金術で合わせる。
エンチャント付与もいいのが無いか見てみると、<採掘強化>というものがあったのでそれもついでに付与して採掘組に渡した。
「石も鉱石も溶けるように採掘出来るようになりました……すごすぎます。」
採掘出来なかったドラゴン族から感想が返ってきた、ドワーフ族でも問題なく鉱石を採掘出来るようになったらしい。
そして採掘出来なかった鉱石を採掘する、黄銅のような鉱石だ。
ある程度採掘したのでそれをオスカーに見せる、ここで一番長生きしているのはオスカーだろうという理由だ。
「これは……見たことないな。
しかしドラゴン族の牙で作ったつるはしで採掘出来ないなら相当な硬度なのだろうな、まだ在庫があるなら本気で握ってみてもいいか?」
握力に物を言わせて硬度を調べるつもりか、だが在庫はある程度あるので問題ない。
「ふんっ!!」
オスカーが思いっきり握った手に目をやると、鉱石は割れても欠けてもいない。
「相当な硬度だな、もし加工出来れば相当な業物になるぞ。
名前をつけなくてはな……オレイカルコスとしようか。」
オレイカルコス……俺の知っている鉱石じゃないな、まぁ今オスカーが名付けたんだから当然か。
俺の記憶を基に生成されたはずだが、まぁゲームで似た鉱石が出てきたんだろう。
村の武器になって、みんなの役に立つならそれでいい。
鍛冶組のドワーフはどう加工するか全員で話し合っている、役に立てることがあれば言ってくれ。
採掘の問題も片付いたので家に帰ると、ウーテが居た。
「開さんおかえりなさい、私個人のお願いがあるんだけれどいいかしら?」
内容によるぞ、特別扱いになるような願いは聞いてやれない。
「弓を作ってほしいの、ドワーフ族に頼んだのだけれど最近は弓を作ってないし色んな鉱石があるから農具や武器・防具を優先したいらしくって。
開さんなら想像錬金術で作れないかなぁ、って思ったの。」
「私に弓を借りに来たんですけど、威力の関係で初心者には貸すことが出来ないんです。
そこで、開様に作ってもらってはと助言したんですよ。」
メアリーが成り行きを説明してくれて理解は出来た、だが何故ブレスを持つドラゴン族が弓の練習をするんだ?
「私のブレスは水を出すの、敵にブレスを吐くだけで開さんが心配していた地形変化が起きてしまうくらいの圧で出してしまうから。
ブレスは最終手段に、戦闘時は弓で応戦したいなって思って……ダメかしら?」
村のことをそこまで考えてくれててダメとは言えない。
「問題ないぞ、倉庫にある素材で作れるからすぐ作ってくるよ。」
ウーテは笑顔になり、「ありがとう、開さん!」とお礼を言ってきた。
師は誰になるか心配だが、ウーテのコミュニケーション能力なら誰からでも教わることが出来るだろう。
弓を作り、ウーテに手渡す。
「ウーテさん、最初は練習用の矢でしか撃ってはいけませんよ。
鍛錬所にあるはずなので、ハインツさんを師に練習してくださいね。」
「わかったわ、メアリーさんもありがとう!
赤ちゃんが産まれて落ち着いたら、メアリーさんも弓術を教えてね!」
「わかりました、楽しみにしていますね。」
弓を握りしめてウーテはケンタウロス族の居住区へ走っていった。
やりたいことがあるのはいいことだ、村のためになることなら尚更な。
「私もなまらないよう練習したほうがいいんですかね?」
お腹に負担がかからないならいいだろうが、かかるならやめたほうがいいぞ。
「ならダメですね……。」と少ししょんぼりしていた。
今まで活発にしていた分、何もしないのは辛そうだな……。
何かメアリーの気晴らしになるものはないかと村を散策していると、ケンタウロス族から「裁縫はどうですか、体の負担にはなりづらいですし子どもが使うものを作れば気もまぎれるかと!」と言われたので勧めてみる。
「やったことないですが、挑戦してみますね!」と裁縫を習いにケンタウロス族の居住区に向かっていった。
イヤイヤしにいった様子もなかったので、向いてるか向いてないかは本人の判断次第だろう、手先は不器用じゃないはずなのでやれないことはないはずだ。
「メアリーが裁縫ねぇ、昔のあの子を知ってるからか違和感がすごいわ。」
家に来たカタリナにそう言われ、昔のメアリーが気になったので聞いてみた。
「男の子みたいな子だったわね、外で遊んだり狩りについていきたがったり。
でもその才能があるとわかってからはちゃんと訓練して伸ばしだしたわよ?」
確かに元気ではあるから、家の中で何かをするようにはあまり思えない。
想像して少しクスッときてしまった。
「でもあの元気印のメアリーが夫を作って、妊娠なんてね……まさか飛び出した子に先を越されるなんて思ってなかったわ。」
「カタリナは夫を見つけないのか?
あまりまじまじとは見てないが、プラインエルフ族の男性は顔も整ってたし。」
そう言うとカタリナは鼻で笑って首を振った。
「ダメダメ、顔がいいのは評価するべき点だけどそれだけじゃ話にならないわ。
生きていくための力がないとね、開様ほどとは言わないけど目の当たりにすると相当いいのよね……立候補しようかしら。」
「そう言ってくれると嬉しいけど、からかいすぎるなよ?」
「あら、割と本気なんだけれどね。」
カタリナの返しにブフッと吹いてしまった、この世界に来てモテ期でも来てるのか?
「私の見たところではウーテちゃんも開様とお近づきになりたそうだわ、今度相談して一緒にアタックを仕掛けるから覚悟しておいてね?」
どう対応したらいいのかわからないからやめてくれ……。
メアリーが帰ってきたらアドバイスをもらおう、初めてのことで落ち着いて対応しきれそうにない。
そんなことを考えていたら、カタリナが何かを思い出した顔をして口を開いた。
「あ、そういえば魔族領から来たと思われる冒険者が来てたわよ。
衰弱しきってたから食堂に通してると思うわ。」
おい、からかう前にそれを先に言えよ!
早く確認しに行くぞ。
オレイカルコスはオリハルコンの別名です、きっとドラゴンなクエストの三作目を想像してたんでしょうね。
隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!




