行方をくらましたリッカを発見したので話を聞いた。
リッカが居なくなったと聞いて1時間。
魔術に通じた人ほぼ全員に、魔術適性の無い人間が突然魔術を使えるようになることがあるか、と問いかけてみた。
結果は全員分からない、というもの……誰もそのような現象を聞いたことがないらしい。
顔を覆い隠す理由の足掛かりになるかと期待したが、これで完全に振り出しだな。
だがそれが原因の一つとして有力なのは間違いじゃない、この村の有識者全員が知らない現象だ――それによって起こりえる事は未知数でもある。
わざわざ顔を隠すという事は、何か見られたくない事が起きているだろう……それをリッカだと判別出来たのは声を聞いたからだろうか。
誰にも見られたくない、隠したいという人にこんな事をするのは少し気が引けるが――リッカの前に瞬間移動するとしよう。
まずはリッカの身の安全が最優先だ。
いくら強くなったからといっても何があるか分からないからな……後でいくらでも怒られるとしよう。
そう覚悟してリッカの下へ瞬間移動を試みる、無事で居てくれたらいいけど。
「きゃっ…誰?」
瞬間移動をした先は村の近くの森だ。
その森でもひときわ目立つ大樹の下に、顔を布で覆い隠している人物が居た。
声を聞く限りリッカだろう、普段の勇ましい事とは違った華奢な女の子を思わせる声色だが。
「リッカ、急にどうしたんだ。
皆心配して探してるぞ?」
「村長だったのね……ごめんなさい、気が動転しちゃって。
今朝鏡を見たら、自分の変化に理解が追い付かなかったんだ……。」
思ったより落ち着いていてよかった。
怒られるような事は無さそうだが、声を聞く限りかなり参っているのが分かる。
とりあえず話を聞いて、現状確認をしないと。
「変化って、魔術を使えたことじゃないのか?」
「それは皆に見せてたから違うよ。
僕自身それは嬉しかったし、ミハエルに見てもらったけど威力も申し分ないって認められて嬉しかったもん。
でも、もしかしたらそれが関係してるかもって今なら思う。」
俺の予想は当たっていたか、他に原因が思い当たらないのもあったけど。
だがそれで顔に変化が……いや、そもそも今のリッカは目以外全ての肌が隠されているのに気付く。
適正が無い人間が魔術を使えるようになると、そこまで肌に影響が及ぶのだろうか……リッカも女性なのに。
ポーションで治ればいいけど。
それを確かめる為にも症状を確認しないとな。
「その……今リッカは目以外の全ての露出を無くしているが、それを外して俺に見せることは出来るか?
俺の力で治してやれるかもしれないし。」
「すぐに治さないと約束してくれれば見せるよ。」
「どうしてだ?
俺の見る限りリッカは辛そうだろう、治すのが普通じゃないのか?」
「確かに村長の言う通り辛いし全てを受け入れれてない。
けど、この事実が世界に周知されるまではこの姿で居るべきだとも思うんだ。
この変化を望む人、望ましいから回避する人――それぞれに知識を有する必要があると思う。」
リッカの目は真剣そのものだった、表情が見えないのに眼力だけでそう思わせるのだから相当だろう。
他の人の事を考えているからだろうか、普段は冒険者を目指す元気いっぱいの女の子だが、ここぞという時は王族の血が働きかけているのかもしれない。
当の本人がそこまで言うんだ、俺が守ってやらないわけにもいかない。
「分かった、約束しよう。」
「ありがとう。
僕の姿を見ても、そこまで驚かないでくれよ?」
「俺はこの世界に転移させられて驚きっぱなしだよ。
それに今は神だぞ、そんな簡単に驚くものか。」
「ふふ、そうだったね。
それじゃ見せるとしようか……いずれ村の皆にも見せなければならないし。」
そう言いながらリッカは肌を隠していた布を徐々に取っていく。
まずは頭からか……と、見えてきたな。
……。
「えぇぇぇぇ!?」
リッカの変化を目の当たりにした俺は、さっきの驚かない自信なんて綺麗さっぱり消え去って驚くことしか出来なかった。
そんな冷たい目で見ないでくれよ、こんなの驚かないほうが無理だろう?
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