ウルリケがとんでもない技術で出産の手伝いをした。
ウルリケは瞬間移動にびっくりしながらも正気を取り戻して出産施設へ。
必要な物があれば言ってくれと伝えてあるので、俺はしばらくここで待機する。
ウルリケの道具は今ハインツが持ってきてくれているところだ、申し訳ない。
「こちらがウルリケさんの荷物全てです。
しかし……よくわからない器具がありますね……大丈夫なのでしょうか?」
「今はウルリケの知識にかけるしかないさ。」
実際俺が見てもよく分からないし……強いて言うならSF物の映画やアニメで見たようなものがある。
容器に液が満たされてて、その中に生物が入れられてるアレ。
まさか子どもがこの中に入るのだろうか――培養液がどうとかって言ってたし。
不安しかないけど、ウルリケの目と言葉には自信が宿っていたからな。
信用するとしよう。
しばらくしてウルリケは荷物を選別しに戻って来た。
外科手術に使うような道具も見えたな……この世界の医療技術レベルでそんな事をして大丈夫なのだろうか。
「村長さん、中に入る人から聞いたのですがポーションというどんな傷も苦しみも消えるという、にわかに信じがたいものがこの村にはあるとか。
それって栄養はありますかね?」
「ポーション自身に栄養は無いと思うけど……断言は出来ないな。
材料はもちろん知ってるんだが、何であそこまで効果が出るか俺にだってわからないんだよ。」
ウルリケにツッコまれて考えたが、俺が作っている中で一番意味不明なのがポーションなのに気付く。
どういう原理であんなことになってるんだ、アレ。
「そうですか――ですが傷や苦しみが消えるなら使わない手はありません。
ポーションをいくつか用意してもらえますか?」
「分かった、すぐ持ってくるよ。」
俺は倉庫に瞬間移動して、傍にあった袋にポーションを詰めれるだけ詰めて出産施設に戻る。
「これで足りるか?」
「多すぎですっ!」
少なすぎるよりはいいだろう、と押し通してウルリケには持って入ってもらったが……よくよく考えたら100本は超えてたし確かに多すぎかもしれない。
ごめん、ウルリケ。
ウルリケが本格的に出産施設に入って2時間ほど経ったろうか。
また何か必要な物があるかもしれないので出産施設の前で待機しているが、時々「おぉー……。」という感嘆の声が聞こえてくる。
中の状況は一体どうなってるんだ、さっぱり分からない。
カタリナと子どもは無事なのだろうか。
心配と不安が胸を渦巻いている、中の様子を覗きたいがこの村での出産は完全男子禁制だからなぁ。
夫くらいはいいと思うんだけど。
なんて考えていると、ガチャリと扉が開いて中から誰かが出てきた。
「村長、出産が終わりました。」
出てきたのはウルリケだった、頭と口元に布を巻いてたから誰か分からなかったよ。
「どうだったんだ、カタリナと子どもは大丈夫なのか?」
ウルリケの肩を掴んで少し興奮気味に聞いてしまった、向こうもちょっと怯えてたし悪い事をした。
「ぴっ……経過観察は必須ですが、母子ともに術後の体調は良好ですよ。
お子様を抱くのはもう少し先になりますが、これはカタリナさんに了承を貰ってるのでご理解ください。」
「どういうことだ?
体調は良好なんだろう?」
「現在カタリナさんの血液を基にした人工培養液にお子さんは浸かっている状態なんです。
早くお腹から出てきてしまった以上、成長は未熟ですから……もう少し胎内に似た環境で成長を待ってからになりますね。
あ、呼吸に支障はありませんし栄養も培養液から取れるのでご安心ください!」
SF物の機材に似てるなとは思ったが、まさか本当にその通りに使用用途だとは思わなかった。
何でこの文明レベルで俺が前にいた世界より進んだ技術を持てているのだろう……しかも電気も無しに。
時たまこの世界の人が持つ技術には驚かされるものがある。
「一度どうなってるか見たいんだが、入って大丈夫か?」
「まだ片付けやらしていますのでダメだと思います。
私も村長さんに報告しに来ただけですので。」
「分かった、大丈夫なようになったら呼んでくれ。」
「はい!」
ウルリケは報告を終えて施設の中に戻っていく。
カタリナも子どもも無事で良かった、一時はどうなることかと。
とりあえず一安心していいだろう、カタリナはポーションを飲んで回復しているはずだから、俺はカタリナの好きな食べ物と飲み物を用意しておくとするか。
俺が今出来るのはそれくらいだし――さて、食堂に向かうとするか。
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