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別視点幕間:別視点幕間:高難易度(?)ダンジョンの主の心情。(2)

「ゴシュジン、アイツラ、ザンネンガッテル。」


降参の意思表示をしてから少し時間が経った後、オーガから遠隔会話が飛んできた。


残念がってる、ってどういうことかしら……ダンジョンの外に居る奴らは吸血鬼族が居ながらあたりの魔物や種族を虐殺する蛮族ってこと?


信念や目的があれば侵略をしてたけど、何の理由も無くそういうことをする種族じゃないって本能が覚えてるんだけどな。


だが本当に蛮族ならそれで危険なんだけど、この子達を逃がす場所が無い。


向こうがこちらに友好的な態度を取ってくれることを祈りましょうか。




――残念がっていると遠隔会話が飛んできてから10分ほど経過。


もう何時間も経ったように思うけれど。


自分の名前を忘れるくらい長い間ここに居るけど、それでも時の流れを遅く感じている。


まだ外に居た頃に自分で1日を定義して作った時刻計というものが10分経ったのを指し示しているからそうなのだろう。


ここに篭ってる間に何度か修理したから正確かどうかは分からないけどね、外に出れないから調整の仕様が無いし。


殺されてないといいな……オーガとは言え会話出来る人が居なくなるとアタイはいよいよ狂ってしまいそうになる。


そもそもオーガがこんなに長寿なのが奇跡なんだから、生体の研究ってやっぱり大事よ。


完全な孤独になるかもしれない状況で恐怖に怯えながら色々考えていると、オーガから再び遠隔会話が飛んできた。


「ゴシュジン、アイツラ、ナカヨクシテクレル、ラシイ。

 イマカラ、ゴシュジン、タスケニイク。」


「……本当?」


「ホントウ、モウ、ムカッタ。」


オーガ達もこのダンジョンの難しさは分かっている、一度私に会いにこようとして大怪我を負ったからね。


その記憶があってもその人達を見送ったという事は、どうにか出来ると感じたから……?


ちょっと期待していいのかしら。


アタイ、今すっごいニヤけてる表情してるんだろうなぁ。


久々誰かに会える、外に出れるかもしれないのが嬉しい。


でもまずは向かってる人達が無事にたどり着くのを祈ろう――神に祈るなんてアタイの種族的にも信念的にも有り得ないことだけど。


今日くらいはいいよね?




祈りを捧げだしてどれくらい経っただろうかと思い、時刻計をちらっと見ると30分が経過している。


もう丸1日は経ったイメージだったのに、全然じゃない。


今日は本当に時間の経つ早さが遅く感じるわ。


いつもが早いと言われたらそうじゃないんだけど、大体書物を読むか反復実験の再開――それにルーン文字で動かしている機具の調整くらいだし。


もうすっかり慣れた事しかやってないから普段は普段で遅い、でも今はそれ以上だ。


緊張と興奮から来るものなのかしらね、それなら逆に早くなりそうなものだけど。


とりあえず今はオーガから新たに報告があるまで祈るとしましょうか、ここは1日やそこらで突破出来るような難易度のダンジョンじゃないもの。


自分で言っておいてなんだけど、世界で一番難しいダンジョンだろうし。


えっへん。


……今は威張っちゃダメな事だけど。


なんて一人で馬鹿な事を考えていると、奥でズズゥン……と地響きのような音が聞こえてくる。


何だろう?


まさか助けに来てくれた人達――そんなわけないか。


まだ30分程度、そんな速度でここまで辿り着けるわけ――


「む、吸血鬼族……ということはここが最奥か?」


「イケメンおじ様!?」


突如目の前に他人が現れてびっくりしてしまう、とんでもない失礼な反応をしてしまったような気もするけど。


「夫の顔が褒められるのは嬉しいわね。」


「全くだ。」


後ろから奥様と思われる2人の女性が笑いながら顔を出してくる、お二人もすっごい美人。


その後続々と人が詰め寄ってきて過去最高の人口密度になった。


え、あれ?


「待って、もしかしてこのダンジョンを30分足らずで攻略したの!?」


「そうよ、ここに居る全員の力を駆使して全ての罠を破壊しながら来たわ。

 ダンジョンの特性上一日経てば修復されるから早く出ないと……それと、やっぱりウルリケだったのね。」


「あなたは……吸血鬼族。

 確かナーガを召喚してくれた……。」


「シュテフィよ、仲間の名前も忘れたの?

 お久しぶり、ウルリケ。」


吸血鬼族がウルリケという名前で私を呼ぶ、という事は私の名前はウルリケ?


そういえば昔、そう呼ばれていた気がする……それにシュテフィ。


よく実験室に訪問してきてた吸血鬼族の中でも最強だった人、気味悪がっていたけど私の実験を否定しなかった数少ない人でもある。


今まで忘れていた記憶が次々と蘇ってきた。


気付けば私はシュテフィにしがみついてワンワンと泣き叫ぶ、涙なんてとっくに枯れたと思ったんだけどな。


「さて、と……とりあえずここにある荷物全部持ってダンジョンを出るわよ。

 また破壊するの面倒だからね。」


「わぷっ、ちょっと……!」


シュテフィは泣いている私をヒョイと抱きかかえる、ちょっとこれってお姫様抱っこ……!


と恥ずかしがった直後、毛布のようなものに簀巻きにされて他の荷物と一緒くたにされて積み上げられた。


いくらなんでもひどい扱いじゃないかな!?


もっと人肌と感動を味わいたかったのに……と不貞腐れていたがここの荷物が5分で纏められた後にものすごい速度で移動しだしたので納得。


私はこんなこと出来ません、荷物扱いでいいです。


自分で動かなくていいんだから楽ちんだと捉えよう。


速すぎて怖いのを除けば利点しかないわ、怖さという欠点が大きすぎるけど。


私、生きて出れるよね?


毎週火・木・土更新になります!

詳しくは活動報告をご覧ください!

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