別視点幕間:高難易度(?)ダンジョンの主の心情。
アタイは吸血鬼族、なのは覚えている。
名前は……久しく呼ばれてないから忘れてしまった、自分で自分の名前を呼ぶことはしないし。
使役している魔物からもご主人としか呼ばれない、それに知人や友人は全員死ぬか封印されたからアタイの名を呼ぶ人物はもう居ない。
その使役している魔物とも長い間会ってないけど。
理由は私も魔物もお互いの場所まで辿り着けないから、まさかダンジョンに侵入者が入らないと拡張するために必要な力が手に入らないなんて思わなかったし。
それを知らないまま入り口から私の部屋まで思いつく限り悪質な罠を仕掛けたら、誰も通れなくなっちゃった。
それなのにもう必要な力が足りなくて罠の撤去も出来なくなったのよね、最悪。
初めに教えてくれたらこんなことしなかったのに!
入り口あたりに改造に成功したオークとオーガ、それに昔の吸血鬼族の仲間が連れて来てくれたナーガを配置しているからこのダンジョンに侵入してくる奴なんていないし、もう!
最初は侵入者も居たんだけどね、配置してる魔物が強いからすぐにそういう噂が広まったんだろうなぁ。
報告を聞く限り魔物しか入って来てないみたいだったけど、知恵と理性を獲得してない魔物でもそういった情報やそれを広める事が出来るんだって当時は喜んでたっけ。
今となっては後悔しかない、何故か。
仕掛けた罠、多くし過ぎて使役している魔物どころかアタイですら突破出来ないから。
吸血鬼族だから日光を浴びなくていいけど、自分の名前を忘れるくらい長い期間ダンジョンに篭りっぱなしだと辛くもなってくる。
それにしてもダンジョンコアが何でも望む物を生成すると行った時に、もう出たくないからトマーテを私が住む場所に生成するようにしておいてよかった。
過去に生成するようにしたものはずっと生成され続けるらしい、これがアタイ最大の幸運。
ここから出れないけど。
魔族と人間との戦争で帰る場所も仲間も居なくなったし、残った書物と研究材料でずーっと時間を潰してるけど……如何せん思いつくことは全てやったので正直暇。
あーあ……ちょっとした刺激でもいいから、何か変わったことが起きてほしいなぁ。
――なんて思ってたら入り口に居るオーガから連絡が入る。
魔力を使った遠隔会話だ、これも完成させておいてよかった技術の一つ。
「ゴシュジン、スッゴイ、ツヨイ、ヤツラ、ココノマエ、ジンドッタ。」
カタコトだけど、ここまで喋れるオーガは私が使役しているこの子達だけだろう、えっへん。
えーと、なになに……。
ご主人すっごい強い奴らここの前陣取った、と。
ふんふん。
すっごい強い奴らってどれくらいかしら、こっちの戦力もかなりの物なんだけど。
「どんな種族が居るの?」
「ドラゴン、デモンタイガー、ニンゲン、エルフ、リザードマン、ケンタウロス、ジュウジン、キュウケツキ。」
なるほどなるほ……吸血鬼!?
まさかアタイと同族が生きてるなんて、封印が解けてその団体と暮らしているのかしら。
それとも吸血して支配下に……いや、ドラゴン族が居るならそんな事が出来るとも考えにくい。
「ゴシュジン、アイツラ、セメテキソウ。」
そうよね、そんな強そうなやつらがダンジョンの前に居るってことは入り口を守ってるこの子達をどうしようか話し合ってるに決まってるわよね!
「白い布を棒に巻き付けてそれを見えるように振りなさい。
それと武器は全て地面に置いて、ナーガはとぐろを巻いて後ろ向きになってね。
それに気付いてくれたらあいつらに襲われないから。」
とりあえず長くここを守ってくれてたこの子達が傷つくのだけは避けないと、降参の意思がきちんと通じてくれればいいんだけどね。
でも報告を聞く限り知恵が充分にある種族ばかり、それに吸血鬼族も居るだろうから大丈夫だろう。
とりあえずこのダンジョンに招いて遠隔会話で意思疎通を図らないとね。
ここの罠……全部突破出来る実力者なら嬉しいなぁ。
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