儀式を終え、俺は神になった。
「神にな~れっ☆」
俺を神にする儀式を行うなんて言うからどんな大仰な儀式だろうと思ったら、神はクルクル回り出して俺を指差しながら決めポーズ。
そしてさっきの言葉……ふざけてるのか?
「おい、ふざけるのも大概に――」
「あ、儀式終わったよ。」
さっきのが儀式かよ!?
え、もしかしてもう俺って神になってるの?
「シモーネ、どうなんだ?」
生命力と魔力を視認できるシモーネに確認を取る、流石にさっきのは信用出来ない。
「村長の生命力と魔力が見えなくなったわ……。
こんなことは二度目よ、一度目はそちらの神様ね。」
ということはやっぱり――。
「信頼するドラゴン族からの言葉で安心出来た?」
「とりあえずは、な。
だがあの儀式はもう少し何とかならなかったのか……。」
「僕なりの茶目っ気だったんだけど、お気に召さなかったかな……あいてっ!」
やっぱりふざけてたのかよ!
それを聞いた俺は神の頭を拳骨で小突く、もう同じ神だしこういう事をしても問題無いよな?
「うわぁ……本当に神様になったのね。」
ドリアードが俺を見ながら自分の中で変わったであろう力を感じ取っている。
神になるとこういうのも分かるのか、便利なのかそうじゃないのか分かんないな。
「羨ましいですねぇ、私ももう少し力があれば……と思うことは多々あったので。」
「それならイフリートにも力を与えるよ、それでこの世界の管理をよろしく頼むぞ。」
俺はイフリートの言葉を聞いて即座に力を与えた、仕事をしてくれる大精霊には力を与えてないと駄目だと思うし。
「ちょちょちょ……あまり強くし過ぎると自分より力を持っちゃうからね?
大精霊は神の半身のようなものなんだから、強くなると制御しきれなくなるよ?」
俺がイフリートに力を与えたのに慌てたのか、神が焦ったように助言をくれた。
そういうのも早く言ってほしかった、まあそれを聞いても後悔はしてないけどな。
「俺は大精霊を信用してるさ。
もし俺に反逆を起こして来たら村の食事は金輪際食わせないだけだし。」
「「絶対に逆らわないことを誓います。」」
ドリアードとイフリートは口を揃えて俺に跪いて頭を下げる、そこまでしなくても逆らわなければいつも通りでいいから。
「うわぁ……食ってそこまで強いんだね。
盲点だったなぁ、でも今後に生かせばいいか。」
「そういえばお前はこれからどうするんだ?」
「僕は次の星を探したり他の神から紹介してったりするよ。
一応目途は付いてるんだけどね……それはそれとして、お前っていうのは流石に先輩に対して失礼じゃない?」
「名前を知らないから許してくれ。
神っていうのも俺が包含されるし、何て呼べばいいか分かんないんだよ。」
「それもそうか……ついでだし僕の名前を教えておくよ。
僕はオホヒルメノムチ、これでも結構偉いんだよ?」
難しい名前だな、俺も神になったしそういう名前を名乗ったほうがいいんだろうか。
でもそんなこと言われてもすぐには思いつかない。
「さて、それじゃ僕はこれで。
念じれば僕と念話が出来るから、困ったことや分からないことがあれば聞いてくれていいからね。
返事が無い時は何かしてるから、後で折り返すから安心して。」
色々考えているうちに神……じゃない、オホヒルメノムチはここから去るような口ぶりで話しだす。
問題は解決したようなものだしいいんだけど、せっかく顕現出来たんだからもう少しゆっくりすればいいのに。
また殴りそうになるかもしれないけど。
「分かった……神にしてくれてありがとう。
これでこの世界が救えるよ。」
とりあえず感謝を伝える、こればかりはオホヒルメノムチが居ないとどうしようもなかったし。
「僕としても愛着のある世界だから滅ばなくてよかったよ。
もし君も猪谷 流澪も神になるのを拒否したらこの世界は滅んでたし……たまに遊びに来るからね!」
案外切羽詰まってたんだな、思ったよりすんなり決断出来て良かった。
「その時は歓迎するよ、もうここの神じゃないんだし次は料理でも食べて行ってくれ。」
「それもそうだね、次はそうさせてもらうよ。
それじゃ、またいつか!」
神はそう言い残して消えていった……まだ神になった実感はないけど。
「開様……いえ、神様。
その、お気分はいかがでしょうか……?」
メアリーが恐る恐る俺の顔色をうかがいながら質問してくる、物凄い余所余所しくて悲しくなるんだけど。
「いつも通りでいいよ、神になっても俺は俺だし。
俺はずっとこの村で村長をするつもりだ、オホヒルメノムチもそうしていいって言ってたし。」
俺の言葉を聞いたメアリーは安堵の表情を浮かべる、それと同時に他の村の住民も。
ただ流澪だけはナイフを構えてブツブツと何かを呟いている……どうしたのだろう?
「流澪、どうしたんだ?」
「ん、ちょっとね。
ついでに質問していいかしら?」
「どうしたんだ?」
流澪の表情は真剣そのもの、恐らく俺が神になったことについてだろうけど。
「勝手に神をやめて居なくならない?」
「もちろんだ。」
「本当に?」
「本当だって。」
「……分かった、信じるからね?
裏切ったら許さないんだから。」
そう言った流澪はナイフを振り下ろした……そして想像剣術が発動したのを感じ取る。
何を切ったんだろうか、そう思った矢先流澪がすごい苦しみだしてそのまま倒れる。
一体どうしたんだ!?
「誰か、俺の倉庫からポーションを!」
「ワシが行ってこよう!」
俺がポーションを頼むとオスカーが全力で取りに行ってくれた、その衝撃で神殿が少し壊れたけどそんなのは後で直せばいい、
それより流澪だ……あんなこと言った後こんな風になるなんて本当に何をしたんだろうか。
とにかく流澪を救う事を最優先にしないと……頼む、死なないでくれよ?
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