別視点幕間:ドラゴン族の里へ
僕はクルト。
今背中に乗ってるのが妻のラウラ。
両親とのケンカで飛び出して心配かけたから、ウーテに謝りにドラゴン族の里へ向かってる。
ラウラは初めて空を飛ぶからか、すごいはしゃいでる。
「クルトすごいです!」
背中に乗ってるラウラが喜んでる。
うん、可愛い。
僕も誰かを背中に乗せて飛ぶのは初めて。
ウーテに謝りに行ってるから少し気が重いけど。
ウーテは幼馴染の女の子。
ラウラには敵わないけど、可愛い子だ。
けどお互い恋愛感情は無くて、親友でライバルだって認め合ってた。
戦闘の模擬試合でも戦績は五分五分。
すごくいい子。
ミズチっていう珍しい種類らしい、ドラゴン姿は一族で一番綺麗。
でもラウラが一番。
ケンカとは言え誰にも何も言わず飛び出したのは僕が悪いし、ウーテにも心配かけた。
それは謝らなきゃね。
「グォォー!」
「そろそろ着くですね、わかったです。」
ラウラはドラゴンの姿でも意思疎通が出来る。
メアリーは出来なかったし、ラウラの特技だろう。
すごいな。
ドラゴン族の里に着いた。
まずは自分の家に行こう。
「ラウラ、僕の家はこっちだよ。」
「ついていくですよ。」
家に到着。
「ただいまー。」
「クルト!
早かったのね、ラウラさんもいらっしゃい。」
「お邪魔しますです。」
母さまが出迎えてくれる。
後ろから父さまも顔をのぞかせる。
「戻ったか、ウーテがちょうど来ておるぞ。」
え、ウーテが来てるの。
覚悟してなかったなぁ。
ラウラに目をやると、真剣な表情になってる。
切り替え早いなぁ、すごい。
ウーテがいる部屋へ。
「ただいま、それとこんにちは、ウーテ。」
「おかえりクルト、話はある程度聞いたわよ。
隣に居るのが奥さんね?」
「クルトの妻のラウラです、ご心配とご迷惑をおかけして申し訳なかったです。」
ラウラが頭を下げて謝った。
「返事もせずケンカして飛び出して、心配かけてごめんね。」
僕も頭を下げて謝る。
「ラウラさんは何も悪くないわよ、悪いのはクルト1人だから。
まったく、2人で親に結婚しないって言うだけで済んだのに感情的になるんだから。」
そうか、それだけでよかったんだ。
無理やり結婚させられると思い込んでたよ。
「ラウラさん、クルトは感情的になると周りが見えなくなるからね。
しっかり見張ってたほうがいいわよー。」
ウーテが僕を見てニヤニヤしながらラウラに助言してる。
あーもう、幼馴染なだけに悪いとこもバレてるから恥ずかしい。
「ご両親に本気で襲い掛かりそうになってるのを見てるのでわかるですよ。
気を付けるです。」
それを聞いてウーテは大笑いしている。
むー、居心地が悪い。
でも自業自得だし仕方ないか……。
「あ、そうだです。
ウーテさん、私が住んでる村の村長が謝罪の品を持っていけって渡されたです。
グレースディアーの干し肉、お渡しするです。」
ウーテが干し肉に吸い寄せられる。
母さま、今一緒に吸い寄せられようとしたでしょ。
これはウーテのだからダメだよ?
「グレースディアーのお肉!
ラウラさんの村の近くにはグレースディアーがたくさんいるのね!」
「たくさんは居ないと思うですが、狩り部隊が優先して狙ってる感じですね。
私たちが帰るとダンジョン攻略をするので、その後は食べ放題になるかもしれないですが。」
「グレースディアーが食べ放題!?
いいなぁー……。」
「村とはドラゴンの牙や鱗と引き換えに食事と酒、滞在の許可を得てるぞ。
今度行ってみなさい。」
父さまがそう言うと、ウーテは満面の笑みになった。
「クルトが村に帰るときに一緒に行くわ!
いいでしょ?」
「いいと思うけど、ちょうどいい案があるよ。」
「父さま、僕が帰るときダンジョン攻略のために村に行くよね?
その時、村の戦力がグッと落ちるから村の用心棒でドラゴン族から誰か連れて行きたいんだ。
ウーテでもいいかな?」
「ふむ、ウーテなら大丈夫だろう。
あの辺は出てもオーガくらいのものだ。」
「オーガってそんな簡単な存在じゃないんですが……。」
ラウラがボソッとつぶやいた。
ドラゴン族はオーガを脅威と見てないから……。
「やったぁ!
オスカーおじ様ありがとう!」
「食事と酒ばかりになるんじゃないわよ、村を守る仕事があるんだから。」
「わかってるわ、シモーネおば様。
そこはちゃんとやる!」
実際ウーテは強いから安心して任せられる。
「さぁ、食事にしましょうか。
村より美味しいものが出せるか不安だけれど。」
「あ、義母様。
私も手伝うですよ、調味料も少し持ってきたです。」
「シモーネおば様、私も手伝うわ!」
女性は台所へ行った。
食事の準備が出来たので、いただきます。
グレースディアーの干し肉を少し使ったみたい。
残りは家族で食べるって。
母さまが喜んでる、村に行ったら食べれるじゃないか……。
うん、久々ってわけでもないけどやっぱり母さまの料理は美味しい。
村の料理も美味しいんだけど、落ち着く味。
ふるさとの味って言うのかな?
「村の料理が美味しかったから不安だったけど、ちゃんと食べてくれてよかったわぁ。」
「義母様の料理も負けず劣らずですよ、手際もデニスさんくらい良かったですし。
私はあまり家庭的なことは得意じゃないので羨ましいです……。」
「あら、ならまた教えてあげるわ。
クルトの好きな料理もね!」
「是非お願いするです!」
母さま、すっかりラウラが気に入ってるなぁ。
険悪になるよりずっといいいけどね。
「シモーネは娘を欲しがってたからな、嬉しいのだろう。」
そうだったんだ、知らなかったよ。
「しかしクルトよ、後継ぎの為にもドラゴン族からも1人は妻を見つけるのだぞ。」
相手次第だし、まだ急がなくてもいいでしょ?
食事も終わって寝る準備。
「なら私は家に帰るわ、また明日の朝に来るからね!
村への出発、置いていっちゃイヤだよ?」
そう言ってウーテは帰っていった。
置いていかないよ、安心して。
「ウーテさんものすごい美人でしたね、天真爛漫で魅力的です。」
ラウラがちょっと心配そうにしてる。
大丈夫だよ、ウーテは妻にならない。
向こうもなる気がないだろうしね。
早く寝て、明日に備えよう。
帰ったらきっとダンジョン攻略だ、気を抜かないようにしなきゃ。
ラウラを抱きしめて一緒に目をつむる。
おやすみ。
ウーテちゃん初登場。
隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!




