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ドリアードを村に抱いて連れて行ったが、それが問題だったみたいだ。

泣いていたドリアードを抱きかかえてとりあえず広場へ、流澪以外にも誰か着いてくるかと思ったが誰も来ない。


それどころか遠目に皆がまだ門の前で固まっているのが暗がりでも分かる、そんなにびっくりすることだったか?


ドリアードも口をパクパクさせたまま俺を見つめて固まっているし……一体どうしたっていうんだ。


「それより、ドリアードが言ってた人物って拓志よね?

 他にそんなこと出来そうな人思いつかないし、あの時皆が拓志を見てたし。」


「あぁ、それは俺で間違いない。

 この世界に転移したての頃、タイガがダンジョンで集団暴走したオークを一人で討伐したのを見せてもらってな……あの時主食はオークだったんだが流石に何千もの死体は処理しきれなかったから肥料として土に還したんだ。

 まさかこんなことになるとは思ってなかったけど。」


流澪と会話をしながらドリアードを広場の椅子に座らせる、まだ口をパクパクさせているので落ち着いたら話をするとしようか。


「とりあえず皆を呼びに行こう、まだ動いてないみたいだし。」


「私が呼んでくるわよ、とりあえずドリアードとの対話を試みて。

 この村の住民全員が跪く最上位の精霊よ、頼みごとを聞いて得は無いかもしれないけど断った時の損が怖すぎるわ。」


そう言って流澪は皆の所へ走っていった。


ドリアードの言葉を聞く限りは、森に栄養をどんどん行き渡らせればいいみたいだし、そこまで難しいことじゃないはず。


今は村の住民や村を訪れる人達のためにダンジョンで生成された家畜をほぼ毎日狩っているから、肥料にする素材はほぼ無限に手に入る。


なんならそのためだけに狩り部隊にお願いして狩ってきても問題無いだろう、ダンジョンは稼働している限りほぼ無限に指定した物を生成し続けてくれるし。


ドリアードが落ち着いたらそのあたりを説明して願いを聞くことにしよう、流澪の言う通り最上位の精霊だしお願いは聞いて損をする事はないはずだ。




「開様、何か変わったことはありませんか!?」


「村長、大丈夫か!?」


「村長、変な気分になったりは――」


流澪が皆を呼んでくると、妻達を始めオスカーや村の住民全員が俺の安否を心配してくる。


「何も無いぞ、どうしたんだ。」


「いや、精霊に触れたんですよ?

 何か対価を支払って契約したと同義なんです、しかも最上位の精霊だと何を対価に支払えばいいかなんて誰も皆目見当もつかないですから。

 開様の身を心配するのは妥当ですよ。」


え、そうなの?


「私はノームと契約してるけど、お願いする際に魔力を渡すという契約をしてるわ。

 魔力以外支払ってないけど、願いを聞く限りノームに損は無いから受け入れてくれてる形よ。

 村長は果たして何を支払ってるのか……自覚が無いのが怖いわね。」


精霊と契約しているシュテフィが自身の内容を説明、普通にノームを使役してるわけじゃなかったんだな。


シュテフィは魔力量に自信があるしそれでよかったんだろう、だが触れた時点で契約って俺はドリアードにどんな対価を支払ったんだろう。


「本当に変わったところは無いの?」


「あぁ、何も無い。

 至って健康だし魔力が減った感じもしない、五体満足だぞ?」


ウーテに念を押されたので俺の状態を説明する、健康なので他に言いようがないが。


「あ、ドリアード様がこちらに来てますよ。」


住民が指差す方向を見るとドリアードが走ってきている、落ち着いたみたいだな。


「ごめんなさい、放心状態になってしまって……。

 まさか不意を突かれて契約することになるなんて思ってもみませんでしたよ……大丈夫ですか?」


「大丈夫だ、それより俺も精霊に触れると契約することになるなんて知らなかったんだ……済まない。

 もしそちらの不利益になるなら契約を切ってくれて構わないぞ、完全に事故だし。」


実際精霊を使役したところで何をすればいいか分からないし、ドリアードの迷惑になるなら契約を切ってお願いを聞いたほうが村にとって有利そうだ。


だが、ドリアードは俺の言葉を聞いて首を振る。


「それは出来ません、精霊と契約した者はその時点で一蓮托生の身ですから。

 そちらの吸血鬼の方もノームと契約されてるみたいですが、ノームが世界から消えると一緒に消えてしまいます。

 それに精霊との契約は非常に特殊な事例、契約を解除する術もありませんので。」


「待て、ドリアードが仮に世界から消えるとどういう事象が起こるんだ?」


俺はその言葉を聞いて自身の寿命を考えてドリアードに質問する。


俺はどんなに頑張って生きても後せいぜい70年前後だろう、医療技術が発展していないこの世界じゃもっと短いかもしれない。


健康的な生活や食事、適度な運動は出来ているので同じくらい生きれるかもしれないが。


それに体調不良はグレーテの状態異常回復魔術やポーションで何とかなる、だが根治が難しい病気や死の危険がある病気は現状流澪の想像剣術イマジンソードプレイに頼ってる状態だ。


俺と同じように置いていく流澪がいつまで想像剣術イマジンソードプレイを使えるか分からない、俺の想像錬金術イマジンアルケミーも同様だし。


だが自然を司るというドリアードが長くて70年で消えるとなると、残された皆にどんな不利益があるか不安になる。


「そうですね、まず自然災害が増えるのが一番問題でしょう。

 世界に住む生命に著しい影響を与える災害は、私が力を使って抑制してましたので。

 次に植物が動物に悪影響を与えるようになるかもしれません、生殖活動なんかで物凄い花粉を飛ばそうとする植物もいますから。」


ドリアードはしばらく考えた後に俺の質問に答えた。


ほとんど本当の神のように世界に干渉して生命を守ってくれてるじゃないか、俺は改めて事の重大さに気付かされる。


そんな存在が後長くて70年で消えるって……何をして償えばいいんだ。


「それよりドリアード様、貴方が契約された方はこの村の村長なのです。

 この地どころか今この方は世界に無くてはならない存在……何を契約の対価に支払われているか教えていただけませんか?

 先ほどドリアード様の存在が消えた時の説明を聞いて、少しでも村長に長く生きてもらうよう尽力致しますので。」


メアリーが震えながらドリアードに説明を乞う、顔色も悪いし……本当に不安なんだろうな。


「心優しいプラインエルフ族ですね、安心してください。

 私が人と契約して支払ってもらったものは<還るべき場所>ですから、人には何の影響も与えません。

 私がこの村に住まわせてもらう事になりますけどね?」


それを聞いたメアリーは「何言ってんだこいつ。」みたいな表情をしている、最上位の精霊に向けていい表情をしていないのでやめてほしい。


「ということは、ドリアードがこの村に定住するということか?」


「そうですね、世界を見回ったり異変を感じ取ったりするとその場所まで移動しますが……解決した後は村に戻ってきます。

 先ほども言ったように契約は切れませんので、これは決定事項ですね。」


俺はその言葉を聞いて安心する、だが別の不安が出てきた。


最上位の精霊なんて高尚な者が村に住んで大丈夫なのだろうか……時間を作って話を聞いてみなければならない。


ドリアードは「それじゃ私は夜なので寝ます、森の対応よろしくお願いしますよ。」と言って消えていったし。


極力毎日お昼12時更新します!

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