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温泉を作るため穴を掘って地中に潜った。

「よし、それじゃあ地上で出来ることを済ませようか。」


まずは風呂場の一部を想像錬金術イマジンアルケミーで資材に戻す、後で流用出来るしこのままここに置いておこう。


もしかしたら足りないかもしれないが、その時は資材を持ってきてもらおう。


「カタリナ、ここに汚れだけを取り除く魔法陣を書いてくれ。」


「水に含まれた余計な物を取り除くんじゃなくて、汚れだけ?」


「そうだ、これはお風呂専用の水だからな。

 飲むことは出来ない、そのあたりの注意書きは掲示するし給水所も設置するから安心してくれ。」


もしかして皆お風呂に使われてたお湯を飲んでいたのだろうか……あれはウーテが出してくれてたし給水所でも使っている水と同じ成分だろうから大丈夫なんだろうけど。


問題は溶け出たミネラルをカタリナが汚れだと認識しないかどうかだが……ミネラルという概念が存在しないし大丈夫なはずだ。


俺が注文した通りにカタリナが魔法陣を書いていく、手際よく書いていってあっという間に終わった。


「出来たわよ。

 もしかして、私の仕事これで終わり?」


「ううん、まだあるわ!

 これから地中深くに行くからついてきてほしいの。」


「え、それに私必要ないんじゃない?

 地下で何もすることはないわよ?」


俺もそう思うが、何か考えがあるのだろうか。


「一番下の空間には綺麗な水にするための魔法陣が必要でしょ?」


ウーテがきょとんとした顔でそう言った――え、ウーテの能力で出した水って綺麗な水じゃないのか!?


カタリナも俺と同じ思考なのだろう、驚いた表情で「今まで飲んでたんだけど!?」とウーテに食って掛かっている。


騙されたわけではないが、教えて欲しかった気持ちは確かにあるな。


俺達の態度を見て、自分との考えに齟齬があることに気付いたウーテ。


「違う違う、私の出した水は飲めるわよ!?

 私が言いたいのは、地中に住む生物だって少なからず居るんだし……その生物がたまたま空間にぶち当たった際の死骸や排泄物が混ざったお風呂には入りたくないなぁって思ったの!」


ウーテの考えを聞いて「なるほど。」とカタリナとハモって納得。


でも飲める水を出してくれてて安心したよ、ちょっと……いや、かなり不安だったからな。


お腹を壊したりしてないから大丈夫なのかもしれないが、品質保証って精神的に大事なんだなと思い知らされた場面だった。


「それは行って魔法陣を書かないとダメね、私だってそんなの嫌だわ。

 それじゃ早速行きましょうか、それで穴はどこに空けるの?」


「この風呂場に空けるぞ、もちろん通った際の大きな穴は塞ぐけどな。」


わざわざ遠くに空ける意味も無いし、俺が説明すると2人が肩を落とす。


何か不満だったのだろうか?


「村長、それ帰りどうするのよ……。」


「え、ウーテに乗って帰ればいいんじゃないのか?」


「地下深くから水をお風呂で利用する水量を水だけの力で湧き出させるのよ、それなりの水量を出さなきゃとても利用出来ないわ。

 それを地下で使ってダッシュで帰って想像錬金術イマジンアルケミーで慌てて埋める……流石に現実的じゃないわよ?」


確かにそう言われればそうだが……何とかなる気もするんだけどなぁ。


「ミハエルさんを呼んできましょ、地下に転移魔法陣を書いてもらって作業終了後ウーテ以外が一度地上に戻って地上の整備。

それを終えたらウーテに伝えて水を湧かせて転移魔法陣で帰還、これが一番確実だわ。」


「そうね、それがいいわ。」


カタリナから代案、というより完璧な案を出された……確かにそうすれば何も慌てることなく作業を確実に出来るな。


これは思いつかなかった俺が悪いな、2人に謝ったが気にする事は無いと言われてしまう。


一応村長なんだし、こういう時に最適な判断を下せるようにならないといけないので気にしないのは無理だ。


メアリーやカタリナからそういった事を考えるコツを学ぶべきかもしれない、流澪から理数も学びたいし……ちゃんと学生時代に勉強しておくべきだったなぁ。




その後、ウーテがミハエルを呼んできてくれたので作業再開。


「さて、どれくらい深く掘るかな……。」


「え、決めてなかったの?」


どれくらい掘ればいいか分からなかったからな、流澪に詳しく聞いておけばよかった。


「とりあえず1000mくらい掘ってみるかぁ。」と呟いたと同時に想像錬金術イマジンアルケミーを発動、土は使うので一旦外に出しておくか。


相当な量だけど、小さな山が出来たくらいには多い。


「ちょ、ほんとに1000mも掘ったの!?」


想像錬金術イマジンアルケミーが発動したし、そういうことだと思うぞ?」


俺も実際1000m掘れてるかは分からない、わざわざ深さを計るなんて無駄な事したくないし。


「地下ってそんなに深かったのね……もっと浅いところに別の世界があると思ってたわ。」


カタリナがファンタジーなことを言ったのでちょっとクスリと笑ってしまった、いやここはファンタジーな世界なんだけど。


何も知らないとそう思うよな、俺も子どもの頃ずっと穴を掘っていれば裏側の世界に行けると信じ込んでいたし。


「特に生体反応はなさそうね、もし何か居れば驚くなりなんなりしてるでしょうし。」


ウーテが冷静に現状を分析、確かにその通りだな……通じてる穴はここだけだろうし周りは土・石・岩のいずれかだ。


何かが騒げば流石に多少の反応がこちらに返ってくるはず、ということは安全ということだな。


「よし、それじゃあ地中に出発するとしようか。

 ウーテ、よろしく頼むぞ。」


俺がお願いするとウーテがドラゴンの姿になる、ミズチというドラゴンの種類らしいが他の人が言う通りウーテのドラゴンの姿が一番綺麗だと思う。


俺・カタリナ・ミハエルの3人を乗せて地中を下っていく、垂直に穴を開けたので結構怖いけど。




「村長、一番下まで到着したみたい。」


ウーテの動きが止まったので何かと思ったが、多少夜目の利くミハエルが現状を把握して伝えてくれた。


流石に1000mも地中を進むと地上の光はほとんど入って来ない、松明を持ってきているがそれは空間を作ってからだな。


とりあえず最下部に着いたみたいだし空間を作って繋げるとしよう。


何も見えないが俺が思い描いた範囲は光ってくれたので錬成、この土はいらないので処分。


「よし、空間が空いたぞ。

 ウーテ、そこに着地してくれ。」


ウーテはゆっくり下りながら尾っぽで地面を探して俺達をゆっくり下ろす、空間と言っても高さ5mくらいあったので気づかってくれて助かった。


俺・カタリナ・ウーテの3人は松明に火をつけて明かりを確保、とりあえずこれで周りは確認出来るな。


「ふーっ、疲れた。

 3人も乗せて垂直の穴をひたすら下るのって神経使うのね。」


言葉にすると結構物凄い事を頼んでしまったな、本来は穴を掘るだけで終わるんだが……申し訳ない。


「それじゃ作業を開始しましょ。

 私は生活魔術の魔法陣を書くから、ミハエルさんはそっちに転移魔法陣をお願いね。」


「はーい。」


2人は魔法陣を書きだしたので俺は手持ち無沙汰になる、ウーテは俺にくっついてきたので労いの意味も込めて頭を撫でた。


「そこ、気が散るからいちゃつかないの。」


俺が撫でてウーテが抱き着いてを繰り返しているとカタリナに怒られてしまった、2人ともやることが無いので少し離れて小さくなる。


まぁ向こうは仕事をしてくれてるからな……大人しく完成を待つとしよう。


極力毎日お昼12時更新します!

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