頼もしすぎる助力
「生命力を使って想像錬金術を使うとどうなるんだ?」
生命力を消費していると言われ、怖くなった俺はシモーネに問う。
「疲れる程度なら休めば支障はないわね。
ただ、それ以上使うと気絶や寿命の減少、最悪の場合死ぬわ。」
神のやつ、説明くらいしてからこっちに転移してくれ。
会った時殴るの1発追加だ。
「疲れてたら休んでて正解だったな、そんな落とし穴があったとは。」
「私も気づけず申し訳ございません……。」
メアリーがすごくへこんでいる。
仕方ないさ、俺自身のことで目に見えないんだし。
しかしよくシモーネは気づいたな。
「私は見たものの生命力と魔力を視覚で見れるのよ。
先ほど家を作ったでしょう、あの時魔力が底をついて僅かに生命力が減ってるのが見えてたの。
気のせいかと思いクワを錬成してもらって確認し、確信を得たのよ。」
「シモーネの能力にはドラゴン族も助けられているのだ。
療養してる時は特に助かっている、どの薬草が効くかすぐわかるのだよ。」
確かに、生命力が見えるのはそういう時に役立つな。
俺も助けられた、無理はしないようにしよう。
「忠告ありがとうシモーネ。
これからは気を付けるようにするよ。」
「素敵な村を作った方ですもの、これくらいしないと。
私はここが気に入ってるわ、食事もお酒も美味しいし、氷の季節なのに活気が満ちているから。」
ウェアウルフ族やケンタウロス族の話を聞く限り、どこも今は必死に生き延びようとしているところだろう。
ドワーフ族は大丈夫そうだけど。
「うむ、ワシらにも物怖じしない開どのはいい長になれるぞ。
帰ったら他の一族の者にも紹介してよいか?」
ドラゴンの来客が増えそうだ。
「食事とお酒くらいしか無いが、それでもいいならいいぞ。
出来れば対価は欲しいがな。」
「それは無論だ、見たところエンチャント付きの武器で揃えてるが基礎能力が平凡だな。
我らの牙や鱗を武器の素材に渡そう、それでどうだ?」
「飲食に対してドラゴン族の素材がいただけるのですか!?」
メアリーが前のめりになってオスカーに問いかける。
「あぁ、鱗は勝手に取れるし、牙は生え変わりがあるのでな。
だが、それらが貴重である認識はある、友好なもの達にしか譲らんぞ?」
ドラゴン族と友好な関係を結べるなら非常に心強い。
「是非頼むよ、料理や酒のリクエストをくれてもいい。」
「ほっほ、ドラゴン族の中でも始祖であるリムドブルムのオスカーどのに認められるとは。」
デニスが俺を褒める。
照れるぞ。
そういえばリムドブルムってなんなんだ?
「すべてのドラゴンの始祖と言える種族です。
リムドブルムから派生して、他のドラゴン族が生まれたと言われているです。」
ラウラが説明してくれた、オスカーすごいんだな。
「はっは、ワシなど戦闘力だけだよ。
強さゆえに慕われてドラゴン族の長をしているがな。」
「戦闘力だけって、父さまに戦闘で勝てるヤツなんてどこにもいないじゃないか。
ドラゴン族が束になっても勝てないんだし。」
クルトが父親にツッコミを入れる。
他のドラゴン族が束になって勝てないってすごくないか?
多分目の前にいるドラゴンはこの世界最強だ。
「夫婦喧嘩ではシモーネに負けるがな!」
そこは威張るなよ。
「父さま、母さま。
ウーテに謝りに行くのは氷の季節が終わってからでもいい?」
「あぁ、いいぞ。
そのほうがラウラさんにも負担が無くていいだろう。」
「ウーテには私たちから伝えておくわ。」
「うん、ありがとう。」
氷の季節が終わったら別行動になるな。
「クルトさんが抜けるとなると、ダンジョン攻略はその後になりますね。
是非メンバーにと思っていたので。」
メアリーがつぶやく。
確かに、ドラゴン族のクルトがメンバーに入ると戦力は大幅に上がるからな。
「む、ダンジョン攻略をするのか?」
オスカーが目をキラキラさせて聞いてきた。
「えぇ、デモンタイガーのタイガ様から近くにダンジョンがあるとラウラが聞いたので。
ダンジョンコアを持ち帰るのが目的なので、通常攻略より危険なんです。」
メアリーが説明する。
「ほほう、また面白いことをするな。
どれ、友好の印を行動でも証明するとしよう。
ワシもついていくぞ。」
は?
世界最強のドラゴン族がダンジョン攻略に参加だと!?
「いえいえいえいえ!
オスカー様のお力を借りるほどでもございませんよ!?」
「遠慮しなくていいわ。
私もついていきますから。」
夫婦で来る気か!
「お力を借りるほどじゃ――」
「ワシら夫婦じゃ力不足か?」
「ソンナコトハダンジテゴザイマセン。」
メアリーが混乱してカタコトになってしまった。
あんまりいじめないでやってくれ。
「はっはっは、そんな風にならないでくれ。
最近はワシらが戦闘するほどの戦いがないのだ。
体がなまってしょうがない、運動をさせてくれんか?」
「2人が居れば百人力どころじゃない。
俺は村の住人が危険な目に合うのが嫌だからな。
俺から頼む、オスカー、シモーネ。」
「うむ、引き受けたぞ。」
「喜んでついていくわ。」
攻略が確定になったようなものだ。
一番の心配事が無くなって安心する。
「ただし、ウーテへの謝罪を先にしてもらってもいいか?
向こうもクルトのことは心配しているのでな。」
「あぁ、それはかまわないよ。」
「うむ、ありがとう。」
「ところで、ダンジョンコアを持って帰ってどうするの?
特にいい素材になるわけでもないし。」
シモーネが疑問を投げかける。
「開様の想像錬金術で、ダンジョンコアをダンジョンコアに再錬成して開様がダンジョンコアの所有者になってもらいます。」
「なるほど、ダンジョンを我が物にするのね。」
「そうです、ダンジョンの魔物はコアを守る魔物が設定出来ると踏んでます。
食糧事情が解決できるので試したいと開様がおっしゃるので。」
「えぇ、確かに出来ると思うわ。
後の問題は集団暴走ね。」
あ。
集団暴走のことを忘れてたな。
「魔物の発生量が設定出来ればいいんですが。
特になければ、最悪魔物の発生をグレースディアーのみにすれば危害は最小限になるはずですよ。」
今度はシモーネの目がキラキラしだした。
「グレースディアーが食べ放題になるの!?
私の大好物なのよ、是非ともやらなくちゃね!」
「グレースディアー美味しいですからね、では花の季節によろしくお願いいたします。」
「えぇ、もちろんよ!」
「任せておけ。」
頼もしすぎる返答だ。
時間も時間なので今日は解散。
朝。
オスカーとシモーネは朝のうちに村を発った。
「村に危害どころか、友好な関係を結べてよかったですね。」
「あぁ、本当にな。
どうなることかと思ったが安心したよ。」
「開さん、メアリーさん、みんな。
昨日はありがとう。」
クルトがお礼を言う。
「仲間だろ?
助け合って当然だ、俺たちが困った時はクルトも助けてくれよ?」
「もちろん!
これからよろしくね!」
うん、改めてよろしくな。
美味しい食べ物は何者も抗えない――。
隔日投稿(お昼12:00)していきますので追いかけてみてください!




