キュウビが見つけたダンジョンの攻略へ向かった。
肌寒い朝、今日はダンジョン攻略へ出発する日。
早めに出発したいとのことだったので、いつもより早めに起きて朝食と軽い運動を済ませた。
家に帰り着替えをしてバックパックを持って家を出ようとすると「開様、お忘れ物ですよ。」と少し眠たげなメアリーの声に呼び止められる。
振り向くとメアリーは上着と毛布を持ってきてくれていた。
「最近肌寒いですし、上空はさらに冷え込みますから。
防寒具が無いと風邪をひいてしまいますよ。」
「忘れてたよ、ありがとうメアリー。」
「気が付けてよかったです、道中もダンジョン攻略中も気を付けてくださいね。」
そう言ってメアリーは俺にキスをした、新婚さんみたいで少しドキドキしてしまったが男として憧れない人は居ないシチュエーションだったので嬉しい。
「じゃあ行ってくるよ。」
「行ってらっしゃいませ。」
俺はメアリーに見送られながら皆の待つ広場へ向かって歩いていった。
「済まないな、待たせてしまったみたいだ。」
広場に到着すると俺が最後だった、いつも皆集合時間より早く来てるからすごいな……俺ももう少し気を付けたほうがいいのだろうか。
「大丈夫だ、ついさっき集まったところだからな。
皆忘れ物はないか?」
オスカーが持ち物の確認を促す、装備はともかく食糧なんかは忘れてると生命の危機だからな。
担当しているケンタウロス族がきっちり持っているらしい、それなら安心だ。
「ドワーフ族とアラクネ族から装備を使った感想を教えてくれって言われたけど、もう既に上々だって聞いてたんじゃないかしら。」
「あれは鍛錬所での試し打ち程度らしいですよ、実際の戦闘で役立つかどうかを教えて欲しいのだと思います。」
シュテフィとアラクネ族が玻璃を使った手甲と装飾品を装着して会話をしている、確かに鍛錬と実践じゃ違うからそこの確認は大事だよな。
元々冒険者にテストをしてもらう予定だったみたいだが、ちょうどダンジョン攻略が発生したので村の住民で済ませようという事なのだろう。
「そうだ義父様、最近戦闘には参加してなかったですが……私のハーフドラゴンの能力で使う属性が分からずじまいなのですよ。
もしよかったら見てもらってもいいですか?」
「うむわかった、ダンジョンに発生する魔物も大したことはないから適当に使ってみるとよい。
その時見て判断しよう。」
ダンジョンコアを手に入れるだけじゃなく他の目的も遂行される、案外実入りのあるダンジョン攻略になりそうだ。
ダンジョンに到着、途中休憩も挟んだりしたがかなり時間がかかったな。
早朝に出発したのにもう夕方前だ、ドラゴン族だけならもっと早いんだろうが……他の人を背に乗せてるからかなりスピードを落として飛んでくれたのだろう。
「これから少し休憩をして、その後ダンジョン攻略に向かおう。
早めに終わらせて帰りたいのもあるしな。」
オスカーが部隊を仕切ってくれて、皆もそれに従ってくれるので非常にやりやすい。
本来は村長である俺が指示をするべきなんだろうけど、こういった命に係わることは熟練者にやってもらうのが一番だ。
俺もいつか出来るようにオスカーの動向はちゃんと見ているけどな、有事の際に出来ないというのは嫌だし。
「では私達は見張りに回ります、他の皆さんは休んでいてください。」
「ウェアウルフ族やケンタウロス族、それにリザードマン族はいつ休むんだ?」
「今回はこういった休憩や就寝の際に見張りをするのが主な役目ですから。
戦闘はラウラ様やシュテフィさん、それにラミア族の試し打ちで終わりそうですし、交代で休むようにするので心配はいりません。」
なるほど、それでいつもより人数が少ないんだな。
そういう事なら安心だ、俺も疲れて歩けないとならないようにしっかり休ませてもらうことにする。
それから30分ほどして出発することに、二度目のダンジョンだが今回も俺は見るだけだろうな。
だがラウラの能力や攻撃魔術を用いた戦闘を見るのは初めてなのでワクワクしている、オスカーやシモーネのような絶対的な力ではないだろうが。
でも魔法に憧れない男なんて居ない、男なんて大人になっても心は少年だし。
ダンジョンに入り歩を進めていると「この先に魔物が居るですね、どうするですか?」とラウラから報告があった。
「まずはラウラ様の能力を使ってはどうでしょうか、魔物1匹程度では分からないかもしれませんし。
装備の使用感想については1匹2匹対応すれば分かると思いますので。」
ラミア族がラウラに進言する、その横でシュテフィが「え、そんなので分かるかしら……。」とこぼしながら不安げな表情を浮かべていた。
日常的に魔術を使うか使わないかの差だろうな、シュテフィは鍛錬以外だとダンジョンで採掘をしているだろうし……。
「分かったです、じゃあ能力をぶつけてみるですよ。」
そう言ったラウラはプラインエルフ族の姿から角や牙、羽を生やしハーフドラゴンの姿になる。
いつ見ても羨ましい姿だ、本当にどうやったらなれるんだろう。
「行きますよ、はぁっ!」
力を込めてラウラが口から能力を放つ、ダンジョン内が暗くてよくわからなかったが黒色の何かが先に居る魔物へ向かって飛んでいった気がした。
「……っふぅ。
魔物の反応消えたです、確認しにいくですよ。」
そういってラウラが先陣を切って確認へ向かう、ラウラの能力を見たオスカーはついていきながら何か考え込んでいる様子だ。
やはり一度見ただけでは分からないのかな?
魔物の死体を確認すると、土手っ腹に風穴を空けて倒れている魔物が1体……見たことない種類だがこれは何という魔物だろう。
「どうですか義父様、私の能力の属性分かったですか?」
「うぅむ……思いつくものはあるがどうにも考えにくい。
そのようなドラゴン族は居らぬのでな……もう一度確認させてくれ。」
ラウラへの解答を濁すオスカー、周りの人達もラウラの能力を見て少しざわついてる様子だ。
その事にラウラも気づいたのだろうか、少し不安になりながら次の魔物が居る場所で歩いている。
「皆珍しがってるだけだろ、属性で差別するような人達じゃないのはラウラも知ってるだろ?
だから安心していいぞ。」
ラウラに小声で声をかける、少し怖かったのだろうか俺の言葉を聞いたラウラは俺に抱き着いてきた。
クルトに怒られるぞ?
「村長、ありがとうです。」
「どういたしまして。」
ラウラは元気が出たのかまた歩き始め、次の魔物を発見したのを告げて能力を使用した。
「やはりか、ラウラ殿の属性が分かったぞ。」
「ホントですか!?」
「うむ、最初見た時は驚きから正しい判断は出来なかったが今回は間違いない。
ラウラ殿の属性は無だ。」
無って……無属性ってことか?
周りからは「やっぱり……。」という声が聞こえてくる、皆も最初見た時に予想は出来ていたのだろう。
「無って、そんなことあるはず……!」
シュテフィがオスカーの解答に口をはさむ、珍しいだけどあり得ることじゃないのだろうか。
「ワシもそう思ったが間違いない、ラウラ殿の属性は無だ。
これはまた……ラウラ殿自身の索敵魔術と併せるととんでもない戦力が生まれたものだな。」
「無属性ってそんなにすごいのか?
俺の中では火でも水でもない、物理的な衝撃を飛ばしてるイメージなんだけど。」
疑問に思ったのでオスカーに聞いてみる、俺のイメージでは別に何かに軽減されるわけでもないがダメージを増加出来ない器用貧乏な属性なんだけどな。
「その認識は違うな、無属性はその威力が完全に減衰するまで当たったもの全てを消し去るのだ。」
それを聞いたラウラが「え、えぇっ!?」と驚いている、そりゃ驚くよな。
「誇っていいぞラウラ殿、無を有する者はこの世界の歴史でもそう居ないだろう……少なくともワシの知る限りでは1人しかおらん。
そやつは既に逝ってしまったがな。」
属性が分かって驚きのほうが大きく喜べずに混乱するラウラ、まさかそんな属性だとは思ってなかったんだろう。
ラウラを落ち着かせるためにも今日はここで野営をすることになった、明日には落ち着いてるといいんだけど。
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