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キュウビに案内してもらいながら人間領を見て回った。

人間領の滞在が決定し、俺・メアリー・オスカー・シモーネ・キュウビ・流澪の6人で人間領を観光することに。


城へ招待してくれた王子曰く、夕暮れくらいに帰れば食事を用意してくれるとのことなのでそれまではキュウビの案内を受けながら人間領を回ることにした。


「ここが人間領の商店街だ、雨除けはつけてあるが村のように光を通す素材では無いので少し薄暗い。

 あの発想は無かったから少し悔しいが……ここでは軽食も出しているから食べながら回ることも出来るぞ。」


確かに簡単なものを食べながら買い物をするのは楽しいし魅力的だ、だが村の食事はドワーフ族と元スラム街の住民の魔族に一任してある……食堂を分けるのも渋っていたし村でこの案をもらうのは厳しいかもしれないな。


いや、食堂の厨房で作って他の種族が運んで店頭に出せば再現は可能かもしれない。


多少冷えても美味しく食べれる軽食、何か考えておいたほうがいいな。


「売ってる物は武具や農具から工芸品、衣服に装飾品だな。

 シュムックをあしらっている物もあるが大体は玻璃だ、人間領では玻璃の採掘が盛んに行われているのでそれを生かしているぞ。

 たまに明るい色や黒色、それにシュムックに相当する水晶もあるが。」


玻璃、聞いたことはあるがどんなものかは見たことが無いと思いながら店頭を覗いてみると恐らく水晶だ。


水晶って透明な物だけじゃなく色がついてるのや黒色もあるんだな、黒曜石とかだろうか。


そもそも水晶がシュムックだとは思ってたが人間領では扱いが違うんだな、同じ鉱物だし綺麗な物は全てシュムックだと思っていたよ。


メアリー・シモーネ・流澪の3人は水晶を扱う店にくぎ付けだが、今日はお金が無いので我慢してくれよ。


「何か仕事探してこようかしら」とか呟かなくていいから、そこまで欲しいならダンジュウロウやキチジロウに交易の品目に追加してもらうよう頼めばいいだろ。


「そういえば蒸気機関があると言っていたよな、それはさすがに見せれないか?」


男として興味がある、俺が物心ついた頃には蒸気機関なんて稼働してなかったしそれこそ歴史やファンタジーの場面でしか見たことが無い。


機械なんかは好きだからもちろん興味がある、エネルギー効率が悪いから衰退したんだろうが内燃機関が出るまでは一線級で稼働していたものだし見ておきたいぞ。


「もちろん構わんが、時間が足りないぞ。

 せっかく見せるなら技術士も交えて、しっかりと説明したいのもある……それに村長からの意見も参考にさせてやってほしい。」


「それは嬉しいが、意見なんて出せないと思うぞ?」


熱機関なんて俺の専門外にもほどがある、多少の歴史とピストン型とタービン型があるくらいしか知識が無い。


それにもともと俺は文系だから理系の話はそこまで得意じゃない、自分でそう思い返すと少し悲しくなった。


もっと化学式や元素なんかに詳しければこのスキルを活かせたんだろうな……流澪にそのあたりの勉強を教えてもらえたら教えてもらおう。


18という事は学生の可能性は充分にある、勉強から離れて久しい俺より知識があるはずだからな。


俺の返事を聞いたキュウビは少し残念そうだが、そこは諦めてほしい。




3人のウィンドウショッピングも終わり次の施設へ。


「ここが王族も通う教育施設だ。

 領民はここで適性検査を受けて、その適性に合った職の知識と技術を専門的に学べる仕組みを取っている。

 王族は施政や戦闘時の指揮、武術訓練なんかを行っているな――後半は冒険者と似た者をするが内容は別なので組分けは別だが。」


教育施設……学校のようなものか。


だが適性検査があるから専門学校や職業訓練学校寄りの施設だな、キュウビに色々見せてもらったがかなり良く出来た施設だと思う。


何よりこれに似た施設が村にも欲しい、今は種族ごとに仕事を分担しているがもしかしたら適正な仕事を割り振れていない可能性がある。


種族で仕事を分け続けていると、日の目を見ない才能に気付かないまま時間だけが過ぎていくかもしれない。


この施設を見るまでそんな考えに辿り着けなかった自分が少し恥ずかしくなった、やはり慣れというものは怖いな。


視野も思考も狭まってしまう、これは村に帰ったら皆と相談しないと。


その後は工房や食事処を見せてもらって終了、食事処では新作の試食が出ていたのでいただいたが非常に美味しかった。


どこか懐かしいけど食べたことない味、いずれドワーフ族を連れてくるかキチジロウにレシピか料理人を連れて来てもらって技術交換をしたいものだ。


転移魔術を展開出来てないから人間領に来訪するのはかなり手間だし……だが、いずれはダンジュウロウと話したことを進めて気軽に来訪出来るようにしたい。


新作だけでもこれだけまた食べたいと思えるんだ、他の料理もきっと美味しいんだろうな。


俺が試食した料理に思いをはせているといつの間にか城に到着。


「未開の地の方々と御前様ですね、お部屋の準備が出来ておりますのでご案内させていただきます。」


城に入ると使用人と思われる人が数名立っており部屋に案内される、人間領はかなり和を思わせる文化だが……使用人は前の世界で言うメイド服だ。


何と言うかアンバランス、いやこれはこれで眼福なんだけど。


「開様、使用人の方々を変な目で見てませんか?」


メアリーがジト目で俺を睨みながら不機嫌そうな顔を向けてくる、ソンナコトハナイカラアンシンシテクレ。


でもあの服、妻達が着るともっと似合うだろうな。


そんなことを思っているとおっさん化してきたんじゃないかと思い、結構な自己嫌悪に陥ってしまった。


「拓志、絶対メアリーさんにコスプレさせようと思ってたでしょ。

 でもメアリーさん美人だから仕方ないかもね、メイド服なんて着たら前の世界の男なんてガン見すると思うわ……女の私だってすると思うし。」


今度は流澪からジト目を向けられるが、多少の理解は得られてるみたいなので安心する。


確かにメアリーみたいな女性が前の世界でコスプレしてたら注目の的だろうな、それくらいメアリーの容姿は整っている……胸元の果実も含めて。


メアリーは「こすぷれ、めいど……?」と俺達の会話を理解出来なかったのか訳が分からない顔をしている、その2つの単語は覚えなくても問題無いから忘れてほしい。




部屋に案内される、まさか全員個室だとは思ってなかったが。


「では、食事の準備が出来ましたらお迎えに上がりますのでごゆっくりお休みください。

 お連れの方々とお楽しみをしていただいてもよろしいですからね。」


使用人は笑顔で口元を抑えながら爆弾を投げて仕事に戻ってしまった、さすがに知人の家でそんな事はしないぞ。


ここ城だけど……そう思うと大人が利用するホテルみたいだな。


いかん、思考が色々ピンクに染まってしまっている!


呼ばれるまで少し目を瞑っていよう、そうすればきっと煩悩も消えて仮眠を取れるはずだ。


そう思って布団に飛び込み目を瞑る……疲れていたのだろうか、それから数分も経たない間に眠りに落ちた。


極力毎日お昼12時更新します!

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