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リッカと合流し、人間領へ到着した。

村から飛び立って2時間ほど経過、もうすぐ未開の地を越えて魔族領へ入りそうな所でふと気が付く。


「今回は転移魔術を使わなかったんだな、理由があるのか?」


近くに居たメアリーに問いかける、より早い対応を目指すなら転移魔術を使ったほうがかなりの時短になったと思うのだが。


「念のためです、リッカさん達が転移魔術を使わずに魔族領を目指していたら合流したいと思っているので……流石に無いとは思いますが。」


なるほどな、リッカは村で鍛錬をしているからこの辺りの魔物とも渡り合えるかもしれないがシモンという王子は戦闘が出来るかどうかすら不明だからな。


もし転移魔術を使わず魔族領を目指していたら危険だ、この判断はもし外れていても正解だろう。


俺も下を見ようと思ったが結構な高度を飛んでいるので怖くてすぐやめてしまった、遠目の利く人がちゃんと見てくれているらしいので任せることにする。




魔族領の首都に差し掛かっても2人の姿は見えず、何らかの方法で海を渡っているか見落としの両方の可能性があるので、1組のドラゴン族とウェアウルフ族が港で待機することに。


もし見落としならここで留まってくれていたらいいからな、問題の解決は俺達が済ませるし……主に俺以外の皆だけど。


もし海を渡っているとなると航海士も無しに沖合に出るなんて自殺行為に等しい、発見次第すぐに辞めさせないとな。


そう思いながら洋上を飛んでいると小舟が浮いてるのを見つけた。


「リッカさん発見です!

 それに隣にはもう一人、恐らくあれがシモンさんかと……しかしこんな小舟で人間領まで行こうとするなんて死ぬ気ですかね?」


ウェアウルフ族から辛辣な言葉が聞こえた、死ぬつもりはないだろうが感情が爆発して正しい判断が取れてないのかもしれない。


2人もこっちに気付いたしとりあえず引き上げよう。


「村長、それに皆……私達を探しに来たんだろうが止めないでくれ。

 兄上と大臣……いやもうそう呼ぶのも腹立たしい2人を許せないんだ、処刑されてもいいからあの2人をこの手で……!」


リッカの小舟へ近づき一旦2人をオスカーの背に乗せる、こんな小さな小舟じゃ流され続けてしまうからな。


「別に探しに来たわけじゃないぞ、探してはいたけどな。

 俺達の目的もその王子と大臣だ、そこまで怒っているという事は事情を知ってるんだろ。

 それだけじゃなくダンジュウロウの救出もあるけど、王子と大臣については必ず捕えるから2人は村に戻っていてくれ。」


「これは人間領の問題だ、私達も向かう!

 危険があろうともあの2人の首を刎ねる!」


完全に怒りで頭に血が上っているな……。


「そのような状態でダンジュウロウの言いつけを守れるのか?

 何かの拍子に言い合いになって、言語道断と言われたものを喋る可能性は全く無いと言い切れるか?」


「っ……それは……。」


口止めされてる内容は冗談のようなものだが、父であり王の命令を確実に守れる状態ではないと認識させる。


今のリッカは完全な興奮状態、村の住民なら止めれるとは思うが肉親や家臣を自分の意思で傷つけ命を奪おうとするのは良くない。


その時は良くても後で絶対に心の傷になるだろうからな、リッカも一時的だが村に住んでいる住民だ――俺はそういうことを望んでない。


第一武力で王子と大臣を殺そうとは思ってない、もしその2人の命が誰かの手によって奪われるなら、それは人間領の法だろう。


流澪にはきっちりと謝ってもらうがな、そのために捕えるんだし。


その後はダンジュウロウを救い人間領に2人の身柄を引き渡す、俺達がするのはそこまでだな。


「分かったら一度村へ帰ってくれ、いいな?」


考えながら少し落ち着いた様子のリッカへ帰るように促す、それを聞いたリッカは首を横へ振った。


「嫌だ、武力は振るわないし父上の命も守る。

 だから私とシモンも連れて行って、王族としてこの問題を見届けたい気持ちがあるから。」


「もういいんじゃない、連れて行ってあげたら。

 今はこうしてる時間も惜しいんじゃないの?」


流澪から正論を突きつけられる……確かにそれもそうだな。


「分かった、2人の確保とダンジュウロウの救出は俺達がやるから。

 リッカとシモンは城内の案内を頼む、一応地図はあるけど指示のほうが早い場合もあるし。」


「分かった、任せて。」


オスカーの背に2人を乗せて人間領へ向かうため出発、ダンジュウロウ……無事で居てくれよ。




人間領へ到着、港や都から結構な悲鳴が聞こえて来る。


「うわぁぁぁ!

 ドラゴン族が逆襲に来たぞー!」


待て、そんなつもりはないから……というか流澪が魔族領と未開の地へ侵攻したのはもう領民にも伝わっているのか。


「違います、人間領を襲いに来たわけではありません!

 私達はダンジュウロウさんが冤罪で囚われているため救出、及びそれを企てた主犯を捕えに来ただけです!

 危害を加えるつもりはありませんのでご安心ください!」


メアリーが弓を下ろし跪いて領民へ声をかける、それを見た領民は悲鳴をあげるのを止めて、少し警戒しながらもメアリーへ少し近づく。


「ダンジュウロウ様が冤罪……?

 城から出された号外では敵と繋がり人間領の衰退を企てたって……。」


「父上はそんな事をするために未開の地を訪問したんじゃない!

 王女である私、リッカがその証人だ!」


領民の言葉を聞いたリッカが声を荒げる、何もしないとは言ったのに……だが今はこの上ない説得力のある証人だ。


「リッカ様!?

 ……分かりました、リッカ様がそう仰るならこの方のいう事を信用いたします。

 私達下々の者もダンジュウロウ様がそのようなことをするはずがない、と些か疑問に思っていたところはありますので……。

 ダンジュウロウ様をお救いいただけるのですか?」


「俺はここにいる皆が住む村の村長、開 拓志だ。

 ダンジュウロウを救うためにここまで来たから、それは間違いなく完遂するよ。

 それにこの問題を企てた人物以外に危害を加えるつもりはない、ちょっと城に向けて威嚇行為をするが都や港に被害は無いようにするから安心してくれ。

 ただ、今は船を出すのはやめておいたほうがいい……ちょっと怖いことが起きるから。」


「分かりました、ダンジュウロウ様をよろしくお願いいたします……。

 船は今出ておりませんが、漁師にはそのように伝えましょう。」


そう言って今度は領民皆が頭を下げてダンジュウロウの救ってくれと頼まれる、ここまで慕われている王を冤罪で投獄するなんて無茶なことをしたもんだ。


そんな事をしても下の人間は着いてくるはずがない、そういう歴史はこの世界には無いのだろうか?


「では城へ向かいましょう、ウーテさんは海を手筈通りに!

 他の者は城の中庭へ着陸、その後ダンジュウロウ様を救う部隊と王子と大臣の捕縛部隊に分かれて行動を!」


「「「「「わかりました!」」」」」


メアリーの指示で皆が一気に動き出す、城内には俺達が人間領へ来たことは知られているだろうし……双方怪我無くこの問題が収まればいいけど。


俺はそんな心配をしながらオスカーの背に乗って城へ向かった。


極力毎日お昼12時更新します!

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