マーメイド族の移動がスムーズに出来るようになった。
マーメイド族が村に来て3日。
村にも少しずつ馴染めたみたいで一安心、比較的臆病な種族なのかかなりオドオドしていたからな。
陸上に住む種族ばかりで委縮していたのもあると思うが、この村の住民はそういう事をあまり気にしない様子。
それが分かったのか普通に接しているし過ごしている、今はマーメイド族の住居に小舟を浮かべて、それに乗ったプラインエルフ族が生活魔術をマーメイド族に教えているのも見えた。
生活魔術が使える種族が増えるのは嬉しい事だ、それにマーメイド族の仕事の中で漁船の掃除をささっと終わらせてやることも出来る。
それと族長が要石というものを村の中心に設置したいと言ってきた、理由を聞くとこれに魔力を込めれば魔術障壁が展開出来るらしい。
防衛策が増えるのは大歓迎だ、魔力量に応じて広さや丈夫さを調整出来る優れもののようで、住民の総魔力量ならものすごい魔術障壁になりそうだと少し興奮していた。
気持ちは分かるが、それを使わない時が来ることを願っているよ。
マーメイド族の仕事に関しては神殿建設イベントが終わってから交渉することにした、魔族領も忙しいだろうし人間領に行くとどれくらい帰って来れないか分からないからな。
かなり大仕事だしすっぽかすわけにも行かない、それにかなりの神の信仰を増やすいい機会だ……これを機に一度この世界へ顕現してくれないだろうか。
まだ2発殴るという気持ちが収まっているわけじゃないからな、感謝はしてるんだけど。
それからウーテが居る間にご両親へ挨拶も出来た、泣いて喜ばれるとは思わなかったけど。
ドラゴン族から見ると劣等種である人間でいいのかと聞いてみた、ウーテからは怒られたがドラゴン族というくくりで見れば大事なことだと思ったからな。
返事としては問題無いらしい、全ての人間を許可するわけではないが俺なら全く問題ないと言われて素直に嬉しかったな。
思い出しながら少しニヤついていると、カタリナから「何考えてるの……?」とちょっと引かれた、そんな気持ち悪い顔してたか……?
ちょっとショックを受けながら着替えをして、ダークエルフ族の工房へ向かう。
今日はダークエルフ族とドワーフ族、それにマーメイド族を交えて陸上移動に使う道具を作る計画をするからな。
村の移動はいずれ水路を配備する予定だから後回しでもいいが、魔族領と人間領を勝手に改造するわけにも行かないので陸上移動をする道具は必須。
車椅子のようなものが一番だと思うので草案はダークエルフ族とドワーフ族には伝えてある、後はマーメイド族が使いやすいかどうかだ。
工房へ到着すると既に試作品が3つほど出来てた、仕事が早すぎる。
草案しか伝えてないのに、ほぼ前の世界の車椅子と同じものが出来てるし……違うと言えば材質くらいか。
「軽く丈夫なもののほうが移動しやすいと思っての、オレイカルコスを丸い筒状にして骨組みと車軸、それに車輪の中心に使った。
タイヤというものは流石に再現出来なくてな、この車輪に合うものを村長に作ってもらうつもりじゃ。
座る場所は動物の皮を鞣したものを利用しておる、強度に難があればワイバーンの皮も余っておるのでそちらに変えることも可能じゃな。」
「私たちは村長の草案を参考に設計したものを木で試作品を作って、ドワーフ族に改良していただきました。
思った以上の物が出来て満足ですね、後はマーメイド族に試乗していただいて、改善点や不満を聞いてそこから改良していけばいいものが出来るかと。」
この村の技術者が有能過ぎる、今日俺が来る意味が無かったくらいだ。
俺の想像としては作れずに居て想像錬金術で車椅子を作って、それを再現してもらうつもりだったんだが……そんな必要はないな。
アストリッドも試乗しているが「快適ですよこれ!」とスイスイ乗り回している、もうこれが完成で良さそうな出来。
「アストリッドさんそう言わず、何か不満な点はないですか?」
ダークエルフ族がアストリッドに問いかける、向上心の塊みたいな技術者だな。
「いえ、ほんとにありません。
腕が疲れるくらいですがこればかりは仕方ないですね、足がある種族だって歩けば足が疲れますから。」
「なら完成で良さそうね、量産は出来そうかしら?」
「任せておけ、マーメイド族の人数分くらい明後日には出来ておるぞ。」
うん、本当に俺が必要なかった。
だが安心して陸上を移動できる道具が完成したのを確認出来ただけでもいいだろう、というかオレイカルコスが便利素材過ぎる。
「オレイカルコスと鉄以外の鉱石が邪魔ならダンジョンコアに伝えて省いてもらおうか?
その2つ以外使って無さそうに思うんだが。」
「何を言うんじゃ村長、それ以外の鉱石を使って合金を作りより良い素材の研究をしておるんじゃから増やしてほしいくらいじゃよ。
今は錆びなくて手入れもそこまで難しくない、それでいてそこそこに硬い素材が見つかっておるからそれの合金を研究しておるんじゃ。」
そんな素材あるのか、プラチナとかが真っ先に思いつくが……アラクネ族が喜びそうだな。
機会があればイェンナかティナに伝えておくか、装飾品の素材としては持ってこいだろうし。
それはそれとして、ちょうどアストリッドが陸上移動を出来るようになったので村の水路について色々意見をもらおう。
「なぁ、この車椅子借りて行っていいか?」
「設計図もあるし使った素材も覚えておるから問題ないぞ。」
「よし、ならアストリッドはそれに乗ったまま俺と外に来てくれ。
村の主要施設に水路を引いてマーメイド族の移動を楽にしたいと思っているから、意見を出してほしいんだ。」
「分かりました、お任せください!」
2人で工房を出て村全体を歩きどう水路を引けばいいか、深さや広さはどれくらいがいいかの意見を出してもらった。
俺が思っていたものと概ね一致しているな、違うところと言えば思ったより深さが必要だったことくらいか。
蓋をすると水路の意味が無いし、水路の周りにはきちんと柵をして誰かが落ちたりしないよう対策をしないといけないな。
マーメイド族が出入りする場所はスロープにして車椅子でも移動出来るようにすれば問題無いはず、結構大掛かりな改造になるが魔力量も相当増えたので大丈夫だろう。
今は皆仕事をしていてあまり出歩いていない、意見をキチンと覚えている間に済ませてしまうか。
そう思って想像錬金術で水路を一気に作り上げる、水もマーメイド族の住居から徐々に流れ出してきたので問題無さそうだ、住居と水路を繋げて循環させているので水量も大丈夫だろう。
「え、ちょ、え?
何が起きたんですか!?」
「あぁ、これは俺が神からもらった想像錬金術というスキルだよ。
マーメイド族の住居もこれで作り上げてる、俺の魔力と素材を消費して俺が知ってるものを作ることが出来るんだ、これがあるから村の皆は俺についてきてくれてるんだ。」
アストリッドがものすごいキョロキョロしている、初めて想像錬金術を見て気絶しなかったのは良かった……また忘れてたよ。
さて、誰か落ちないうちに柵も作らないと……倉庫に行って柵を想像してそのまま水路に設置。
これで完成かな、後は車椅子が必要数出来ればマーメイド族が村を移動するのも楽になるはずだ。
水路の出口にはいくつか車椅子を置いて使いまわしてもらうのがいいな、帰る時はきちんと戻してもらう事にはなるが。
出たとこから戻るだろうし問題は起きないと思っている、もし起きたら対策を考えるか。
「アストリッドの意見を聞けて良かった、もう住居に戻って大丈夫だぞ。」
水路に入ったり触ったりじーっと見つめてるアストリッド、よっぽど想像錬金術が不思議でたまらないのだろうか。
「村長すごいですね……そりゃドラゴン族も村に住むわけです。」
「ありがとう、素直に褒められたのは久々だよ。」
ストレートだったので少し照れてしまう、そんな俺を見たアストリッドもつられて笑っていた。
「村長の力のこと、マーメイド族はほとんど知らないはずなので伝えておきます、実のところ不審に思っていたり海のほうがいいんじゃないかと思っていたりする一族も居るので。」
「誇張しすぎるなよ、俺はこの力しかないからな。」
そう言ってる間に水路を使って住居に戻っていくアストリッド、きちんと伝えてくれればいいんだが変に伝わらないといいな。
さて、俺はそろそろ神殿建設イベントの自己紹介を考えないとな……開催までもうすぐそこだし。
台詞を考えると言っていたのに、企画書にはドラゴン族に乗って登場したのちに自己紹介としか書かれていない。
こういうの考えるのは苦手なんだけどな……もし思いつかなかったら妻たちを頼ることにするか。
しばらく毎日2話投稿します!




