第6話 剣士たちの脱出
【財閥連合・氷覇支部 飛空艇プラットホーム】
私とアリナス准将は柱の陰から、飛空艇プラットホーム全体を見渡す。私たちがこの施設にきた時、ここで飛空艇から降りた。
[第E4部隊を集めました]
その時にいたのは兵士たちだった。しかし、今いるのは兵士じゃなかった。いや、兵士だが……。
[はい、奴らを確認し次第、射殺します]
いるのはバトル=アルファたちだった。それも100体ぐらいはいる。全員がアサルトライフルを手に持っていた。さっきまでの敵の数とは全く違う。さすがにこれじゃ勝つことは出来ない。
「アリナス准将……」
「まぁ、こんな事だろうと思ったけどさ……」
そう言いながらアリナス准将は何かを取り出す。丸くて濃い緑色をした物体だ。これはハンドボム……!
「んじゃ、やりますかね」
そう言いながらアリナス准将は魔法発生装置を使い、私たちにシールドを張る。それが終わるとハンドボムを投げた。
それは空中で孤を描き、バトル=アルファの軍勢の中に落ちる。数分で眩しい光と共に爆発する。建物が揺れ、煙が上がる。一部の機械兵士が吹き飛ばされる。
「今だ!」
アリナス准将は剣を引き抜くと混乱を起こした軍勢に突っ込んで行った。私もその後に続く。
[敵を確認!]
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
生き残ったバトル=アルファが、一斉にコッチに向けて射撃を始める。大量の銃弾が私達目がけて飛んでくる。アリナス准将と私は剣を振るって、銃火器を持つ機械兵士を斬る。
「どけぇ!」
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
機械兵士が近づいてくる。いや、私たちが近づいて行っているんだ! 銃口が服に当てられた状態で発砲されると正直凄く痛い。でも怯んだらそこで負ける。私は近づいてきた機械兵士から順に斬っていく。
「くっ、このッ!」
[破壊セヨ!]
金属で出来た彼らの体はそこそこ硬い。私たちの持つ剣は特殊な剣で金属をも斬れ、相手は耐久力のない装甲。……とはいっても、何十体も斬っていると腕が痛くなる。次第に痺れてくる。
「はぁッ!」
機械兵士の頭、腕、足などを斬って倒していく。彼らの胸や腹部を突き刺して壊す。そこから血が噴き出す事はない。出るとしたら電気か、破片か火花だけだった。
「フィルド! 飛空艇に乗り込め! 目的はコイツらを全滅させることじゃない!!」
「は、はい!」
そ、そうだ! コイツらを全滅させても仕方ない。あの飛空艇に乗り込んで政府首都グリードシティに帰還すればいいんだ。そうすれば私たちの勝ちだ!
ふと私は来た道を振り返る。そこからは大量の機械兵士が押し寄せてきていた。援軍だ! 彼らは射撃しながらこっちに走って来る!
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
援軍のバトル=アルファによって、元々いた機械兵士も撃ち倒される。敵味方関係なしか。なんてヤツらだ。……まぁ、兵士は機械で生きた人間ではないのだから、別にいいのかも知れないが。
「フィルド!」
「うッぐ、少し待って下さい!」
アリナス准将と一緒に飛び出したハズなのに何故かいつの間にか、かなりの遅れを取っていた。私の周りには凄い数の機械兵士が! お前らどけッ!
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
「くっそ……!」
群がる機械兵士軍団。彼らは私に射撃が効かないと分かったのかとっ捕まえようとしてくる。彼らの金属で出来た細腕が私に迫ってくる。彼らは私を抑えつけようとする。そのせいで進みにくくなった。
「ふっ、ぐぅっ! たす、け……!」
もうダメだッ……! 機械兵士たちが私を床に押さえつける。床の冷たさが右のほっぺたに伝わる。機械兵士の1体が私の手から剣を奪い取る。殺されるっ! 死にたくないけど、もう抵抗できない。私はもう逃げられない……!
私の心に状況に対する絶望と、死への恐怖が浮かんだそのとき、私を押し倒していたバトル=アルファの頭が撃ち抜かれる。
「…………!?」
私は銃弾が飛んできた方を見る。アリナス准将の持つハンドガンから白い煙が上がっていた。彼女がそれを使い、コイツを狙い撃ちしたらしい。
「どけっ!」
アサルトライフルをぶっぱなし、周囲の機械兵士を撃ち倒していく。アリナス准将の助けもあって周囲のバトル=アルファは次々と倒れて行った。
私は立ち上がると、射撃しながら走る。……あまり、射撃は得意じゃないんだけどな。
「よし、あと少しだ! 頑張れ!!」
「は、はい……!」
私は群がってくるバトル=アルファを撃ちながら突破していく。その間にアリナス准将が、私の後方にハンドボムを投げる。爆発が起こり、床が揺れる。後ろで煙と炎が上がり、たくさんのバトル=アルファが倒される。
私が飛空艇の近くまで来ると、アリナス准将が先に中に入って行く。私は飛空艇の近くまで来ると、後ろを振り返り、アサルトライフルで追って来るバトル=アルファを撃ちまくる。あんまり、命中率は悪くないのだが、これだけ数がいれば必ずどれかに当たる。
「出発するぞ!」
「イエッサー!」
私は飛空艇に乗り込む。それと同時に扉が閉まっていく。飛空艇はゆっくりと動き始める。大量のバトル=アルファが嵐のごとく銃弾を浴びせるもムダだ。そんな攻撃じゃ壊せない。
飛空艇は次第にスピードを上げ、氷覇支部から飛び出そうとする。長方形状をした巨大な出入り口から飛び出そうとする。
コッチに向かって射撃をつづける機械兵士を引き壊しながら、飛空艇は外に飛び出した。外は吹雪の夜だった。
「やった!」
「まだだ!」
「え?」
え? どういう事? 後は政府首都のグリードシティに撤退すればいいだけじゃないの? なんかマズイ事でも……?
「後ろから来るぞ!」
「…………??」
私は後ろを振り返る。この飛空艇には後ろの扉にも窓がある。そこから、今まさに飛び出した氷覇支部を見る事が出来た。……私はアリナス准将の言いたい事が分かった。氷覇本部から幾つもの砲身がコッチに向けられていた。撃ち落す気だ!
「や、ヤバいですよ……!」
「だろうな!」
砲身から煙が上がり、砲弾が空気を切って飛んでくる。それも1つじゃない。幾つも飛んでくる。何十発もの砲弾が飛んでくる。飛空艇の側を飛んでいく。あんなのが直撃したら一発で雪山に墜落してしまう!
「ど、どうし……!」
そう言いかけた時だった。大きな爆音が鳴り響き、飛空艇が大きく揺れる。立っていた私はバランスを崩し、その場に倒れ込む。
それと同時だった。赤いランプが点灯し、警告音が鳴り響く。そして、飛空艇は激しく揺れながら、フラフラと高度を落としていく。ヤバい! どこかがやられたんだ!
「フィルド! しっかり捕まってろ!」
砲弾の雨の中、飛空艇は進む。炎を上げながら、徐々に高度を下げながら! このままだと雪山に墜落する! 墜落したら死んでしまう!
でも、今の私たちでは、どうにもならない。この状態でグリードシティに行く事すら不可能だった。……私達たちはもう……!
「墜落するぞ!」