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悲劇と狂乱の少女たち ――伝説ノ始動――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 学生の少女 と 実験台の少女 ――財閥連合・氷覇支部――
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第5話 2人の剣士 ――アリナスとフィルド――

計画保護のため、ウォーレン氷覇支部長を含め、氷覇支部内に存在する全生命体を皆殺しにせよ――。


 冷たい女の言葉は、施設中に発せられた。

 ケイレイトとメタルメカはもちろんのこと、それは実験棟から離れた第7応接室にいるアリナス准将やフィルドの耳にも入っていた――。



◆◇◆



  【財閥連合・氷覇支部 第7応接室】


「な、なに、さっきのは……?」


 私は立ち上り、無意識の内に、腰に装備していた剣に手をかけていた。私、少しは剣の腕には自信があるんだ。黙って殺されはしない……! それにまだ死にたくない!

 突如急変した事態。私の脳裏には、財閥連合社にまつわる黒いウワサがよぎっていた。あのウワサは真実だったのだろうか。それとも、今の放送は何かの間違いなのだろうか……?


「少し落ち着け、フィルド」

「わ、分かってますよ!」


 震える手。荒い呼吸。ガクガクする脚。怖かった。殺されたくなかった。死にたくなかった。こんなところで死にたくはない! 来るなら来い! 相手を殺してでも生き延びてやる。誰かを人質にとってヘリを奪ってやる。絶対に逃げ出してやるんだ!


「さて、と」


 今まで座っていたアリナス准将が立ち上がる。その表情に焦りはなかった。さっきの放送を聞いていなかったのだろうか? いや、そんなハズはない。彼女もしっかり聞いていたハズだ。

 そんな事を思っていると私の体を包み込むように薄い緑色のベールがかけられる。魔法のシールドだ! 私はアリナス准将の方を見る。彼女は白色をした棒状の武器――スタンロッド型の“魔法発生装置”を握っていた。


「シールドを張る事を忘れるなよ」

「あっ、す、すいません!」


 そうだった。こういう戦闘、特に相手が銃火器を持っている時にはシールドを張っておかないと、銃弾一撃で死んじゃうかも知れない。

 シールドがあれば銃弾の威力を抑えれるから、例え頭に銃弾が当たっても死ぬ事はない。私のように近距離戦をする場合には絶対に必要だ。


「さて、そろそろ敵の出番かな?」

「…………!」


 私の胸の鼓動が一段と激しくなる。寒いハズなのに汗が出てくる。体の震えがますます大きくなる。お、落ち着けッ! 私が深く息を吸い込み、吐き出した時だった。扉が左右にスライドし開いたのは。


「……………!?」


 私は扉が開かれると同時に、人間型アンドロイドに飛びかかった。機械兵士の持っていたアサルトライフルを蹴り飛ばすと、その首に剣を突き刺した。


[撃て!]

[殺せ!]


 後ろに控えていた2体の人間型アンドロイドがアサルトライフルの銃口を向け、一方的に銃撃してくる。だが、銃弾は数発で止まる。私の後ろからアリナス准将が飛び出し、一体を斬り壊し、間髪入れずにもう一体も同じように斬り裂く。


「バトル=アルファか。ウワサ通り、人間を襲うんだな」


 アリナス准将は火花と煙を上げる3体のアンドロイド兵器を見下ろしながらぽつりと言う。


 私たちは廊下に出ると、元来た道を引き返す。灰色のコンクリートでできた床を走る。少し遠いけど、何としてでも飛空艇の所まで行かないと。こんな所で殺られない。殺られてたまるか!

 私とアリナス准将が廊下を走っていると、別のバトル=アルファたちが近づいてきた。その手には、やはりアサルトライフルが握られている。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

「どけッ!」


 バトル=アルファがアサルトライフルの銃口を向けて連射する。力強い音と共に銃口から火と煙を噴き、回転しながら弾が飛び出す。アリナス准将はそれを避け、機械兵士を斬り壊す。いや、当たっているのかも知れない。それでも応接室で張ったシールドと、特殊な素材で作られた軍服――防弾服を着ているから平気なんだ。


「はぁッ!」


 最後のバトル=アルファが、頭から胸にかけて斬られ、その場に倒れ込む。アリナス准将はそこで剣を鞘にしまった。


「剣を出したままだと走りにくいからね」


 な、なるほど。確かにそうだ。

 私も剣を鞘にしまい込むと、アリナス准将の後を追って走る。もうすぐ半分くらいだろうか? 財閥連合社の氷覇本部内を走りながらそう思った。



[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 飛空艇があるところまであと少し。そんな時にまたバトル=アルファが現れたっ! しかも今度はかなり多い。合計で15体もいる。私は鞘から剣を引き抜く。アリナス准将も同じだった。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 バトル=アルファたちは、アサルトライフルの銃口をこちらに向け、射撃する。おびただしい数の銃弾が私たちを目がけて迫りくる。

 そんな銃弾の嵐の中を、アリナス准将は顔だけを腕で守り、兵士達に近づく。いくらシールドを張っているといっても目に銃弾が入れば失明してしまうからだ。同じようにして私もその後に続いた。


[撃て!]

[攻撃セヨ!]


 アリナス准将の剣が振り上げられ、機械兵士の1体を斬りつける。一撃で壊れた。更に剣で自分の周りに群がる兵士を斬る。倒れる機械兵士たち。一気に複数体は倒れただろう。

 後ろから別のバトル=アルファが、襲いかかってくる。私は飛んでくる銃弾を剣で防ぐと、軟弱な装甲で覆われた胸を斬りつける。火花と破片が飛び散る。


[殺せ!]

「邪魔だ、犯罪組織!」


 他のバトル=アルファが襲いかかる。そんな機械兵士たちも、私の振り上げる剣で次々と鉄クズへと変えられる。


[破壊セヨ!]

「どけ!」


 バトル=アルファの頭を斬り飛ばす。それだけでその機械兵士はアサルトライフルを落とし、膝を着いて倒れ込んだ。倒れる音を最後に周りから音が消える。全ての敵が倒れたようだ。


「この調子で行こう」

「ええ、アリナス准将」


 私はそう言いながら、落ちていたアサルトライフルを手に取り、天井からぶら下がっている監視カメラに向けて発砲した。

 あと少しで脱出できる。私はそう思った。でも、それは間違いだという事にこの時、全く気付いていなかった――。

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