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悲劇と狂乱の少女たち ――伝説ノ始動――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 学生の少女 と 実験台の少女 ――財閥連合・氷覇支部――
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第2話 実験台の少女の反逆

 【財閥連合・氷覇支部 飛空艇プラットホーム】


 私たちは小型飛空艇から降りる。


「すごい施設ですね」

「…………」


 灰色をしたコンクリートの床。銀色をした金属の壁。ここは“財閥連合社”の施設だ。こんな大きな施設を有しているなんて……。まるで軍事機関が持つような施設だ。

 小型飛空艇から降りてきた私たちに視線を向けるのは、黒い服を着た財閥連合社の兵士たち。その顔は、黒いサングラスと、布製のフェイスガードに隠れ、表情を伺うことはできない……が、なんとなく睨まれているような気がする。


「ようこそ、我が氷覇支部へおこし下さいました……。わたくしは財閥連合・氷覇支部 支部長のウォーレンと申します」

「お世話になっています。私は国際政府防衛軍のアリナスです。本日もよろしく」


 一緒に小型飛空艇から降りた女性軍人――アリナス准将が軽く会釈する。彼は私の姉弟子だ。

 一方、アリナス准将の前に進み出てきた男性が、財閥連合 氷覇支部 副支部長のウォーレンだ。


「そちらのお子さんは?」

「彼女はわたしの部下、フィルドという者です。本日は私と一緒に定期巡回をさせて頂ければ幸いです」

「ああ、そうですか。……フィルド様、どうぞ、よろしくお願いします」


 お子さんって……私は今年16歳だ。そんなに子供っぽくみえるか? これでも特殊軍の精鋭兵士なんだぞ。子供だし、女だからって甘くみられてんのかな?


「ささ、どうぞコチラへ……」


 私たちはウォーレン支部長に案内されるまま、氷覇支部の施設内を進む。その姿を財閥連合兵たちが見守っていた。いや、動きを監視しているようにも感じる……。


 財閥連合は世界最大の民間企業だ。彼らはIT、医療、金融、ロボットの分野のスペシャリストだ。ほぼ業務を独占している。その歴史は400年以上にも及ぶ。世界統治機構――「国際政府」とも極めて深く結び付いている。……深すぎるほどに。


「にしても、我が社が“生体兵器”開発の疑いをかけられるとは極めて心外ですよ」

「…………」

「我々は国際政府の法令を遵守し、安心・安全な良品製造に努めてまいりました。国際政府の元老院議会でも、派遣議員より説明させて頂きましたが、――」


 この会社には数年前から黒いウワサが流れてる。 国際政府の法に触れる事――具体的には、“生体兵器の開発”や“違法な私設軍を保持”をしているのではないか。そんな疑惑が浮上した。


「我が社が“生体兵器”の開発・製造を行っているとは、初めてウワサを耳にしたときは驚きましたよ。あの、なんでしたかな、ウワサの……」

「クローン製造計画ですね――」

「そうです、それです」

「……ウォーレン様、私たちはあなた方がそのような違法行為を行っているとは思っておりません。ですが、世論の疑念を晴らすためにも、どうか積極的な協力をお願いします」

「…………。……我が社の議員が元老院議会にて説明したこと、それが全てで御座います。疑いが晴れるまで粘り強く説明を続けていくしかありませんな」

「…………」


 私たちは黒いウワサの真偽を確かめる為に、この財閥連合の氷覇支部へ送り込まれていた。定期巡回という名目で。だけど、この定期巡回では、その黒いウワサをつかめたことは一度もなかった。今日もきっと何も掴めないだろう。



◆◇◆



 【財閥連合・氷覇支部 実験棟 廊下】


 黒衣に身を包んだ4人の男たちが、1人の少女を取り囲むようにして進んでいく。少女の手足には、鋼の枷が嵌められ、口には猿轡を咥えさせられていた。――それは、あたかも囚人のような姿であった。

 だが、彼女は決して悪事を働いたワケではない。


「はぁー、俺たちが過酷な任務に就いている間、先輩たちはこんな楽してたんっスねぇ。死刑囚を実験棟に移すだけなんて、誰でもできるよなぁ。アンドロイド部隊でもできるよなぁ」

「さっきからうるさいぞ、メタルボルト。任務中だ」

「だってよ、この前、俺たちはファンタジア地方の魔物を生け捕りさせられたんだぜ? 方や、先輩たちはここで施設内移送という“安全な内勤”。割に合わねぇよ」


 移送される彼女について述べるなら、まず、『風を操れることだろう』。


「なら傭兵に戻ったらどうだ?」

「傭兵なんて、このご時世、どこも商売あがったりだろ。国際政府やウチが、魔物討伐に部隊を派遣しているせいで、仕事が舞い込んでこねぇ」

「南方大陸ならどうだ? あそこは戦乱の地域。仕事は山ほどある」

「はッ、確かにな。だが、俺も命は惜しいね。俺は、あそこで死んだ仲間をごまんとみてきた」


 『風を操る力』。それは人間が持ちえない、魔の力だった。――その存在自体は、未知の存在とされるほどではなかった。だが、珍しき存在であることは間違いなかった。


「あそこで生き続けようとするなら、人間には無理だな。それこそ、この女のような――“魔導人パーフェクター”でないとな」


 魔導人。それは、魔法を操れる人間の名称だった。移送されるこの少女は、風魔法を操ることができた。――ゆえに、罪人でないにも関わらず、このように拘束されている。

 財閥連合社は、魔導人の力を調査し、これまで人類が手にしたことのない力を得る計画を進めていた。彼女はそのための犠牲者だった。


「なぁ、南方大陸出身の新人くんもそう思うだろ?」

「………」


 先ほどから私語を続ける男――メタルボルトは、不意に足を止め、後衛の少年に話題を振る。彼らと少女は、みな足を止める。


「おっと、お前は目の前で家族を殺されている中、逃げ出したんだったな。お前のような臆病者には傭兵は似合わないか。なぁ、そうだろ? そう思うだろ? なぁ!」

「………」


 少年は何も言わない。――その態度が、メタルボルトの癪に障ったらしい。


「なに、無視を決め込んでんだテメェ!」


 メタルボルトは、少しばかり生意気な少年を痛めつけてやろうとしたのだろう。少女の側を通り過ぎ、少年に掴みかかろうとした。

 もし、この任務の重要性を理解していたベテランがいれば、彼はもう少し長らく生き永らえただろう。彼らはメタル部隊の使い捨て人員。いずれは、任務で死ぬことになるのだろうが、まさか、こんな“安全な内勤”で命を失うことはなったはずだ。


「………! メタル――」


 前衛にいた別の男が注意を発する前に、乾いた音が鳴り響き、空中に真っ赤な液体が飛び散る。そして、屍と化したモノが、固く冷たい床に転がる。

 銃口から煙を上げるハンドガンを手にしてるのは、――拘束されていた少女だった。彼女はメタルボルトがすれ違った瞬間、彼の腰に装備されていたハンドガンを抜き取ったのだ。


「ひぃっ!」

「わ、わぁっ!」


 年若い他の2人は、突如起きた想定してなかった出来事に、震えあがる。彼らは、少女の本当の脅威を認識せず、武器を持った素人相手に、逃亡を図る。

 沈黙を貫いた少年を含め、逃げ出した彼らはみな、メタルボルトのように傭兵という経歴があったわけでもない。彼らはいずれも、戦災孤児でしかなかったのだ。


「……ねぇ、これの外し方、分かる? 最初に付けたのは君だよね?」


 猿轡を無理やり外した少女は、唯一残った少年――メタルボルトが掴みかかろうとした少年に問う。


「お、俺は……」


 さすがに、この状況で意図的に沈黙をつらぬことなど出来なくなった少年は、震えながら声を絞り出す。枷を外せば、命令違反。自分のような使い捨て兵士が命令違反をすれば、その先に待つのは、――死刑。だが、断れば、さっきのメタルボルトと同じ運命を歩みかねない。


「…………。私がこの人を殺した時点で、任務は失敗。

 君のような下っ端は、責任を取らされて始末されるだけじゃないかな?」

「…………!」

「もしこれを外してくれたら、一緒に逃げよう。さっきの話からして、君は無理やり財閥連合社の兵士にされたんでしょ?」

「………!!」


 少年は声を上げずに驚く。少女の話は的中していた。彼自身は、メタルボルトとは違い、故郷で財閥連合社に捕まり、無理やり兵士にされた。

 そして、そんな者たちは、例外なく危険で過酷な任務に就かされていた。使い捨ての道具でしかなかった。使い捨ての道具が任務に失敗すれば、――見せしめとして殺されていた。彼は幾度となくその場を目の当たりにしてきた。


「わ、わかった。その枷を外すから――」

「分かっているよ」


 少年はメタルボルトの腰から枷のカギを取り出すと、少女の手と足の拘束具を外す。

 だが、このとき、すでに2人の近くまで、騒ぎを聞きつけたアンドロイド兵士の部隊が迫っていた――。

 <<財閥連合社の人物データベース>>


 【メタルボルト】


◆種族

 人間


◆性別

 男


◆年齢

 28


◆所属

 財閥連合社 保安本部 一般兵団 メタル部隊


◆特記事項

 ・元 傭兵。一般募集で入隊

 ・怒りっぽい性格

 ・氷覇支部で護送人中に死亡

 ・本名は「ウルフ=ウォーエン」

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