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メガイラ  作者: 高村
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1/郷田彩香の視点、疑問の提起と指針の決定

 世界はもっと広かった。そしてもっと美しく、完全な姿をしていた。私にはどんな可能性だって許されていたし、何にだってなれた。世界と同じように完全だったのだ。それはたった数年前までずっとそうだった。私はずっとそれが続いていくと思っていた。そのはずだったし、それが正しい有り方だったのだ。この世のどこかでそれは保障されていた。決まっていたはずだ。

 どこで誤りが生じたのかは解らない。でもどこかでそれは起きた。あるいは私の知らない世界で起きたのかも知れない。何れにしても、それはもう起ってしまったことであり、取り返しがつかないことである。私はこれから、それを元に戻さなくてはならない。何故そうなったかは、もう大した問題ではないのだ。

 今は、彼女に対して如何どう対処するのかが問題である。彼女は私をこれから如何するつもりなのだろう。いったい私と彼女には何が必要なのだろう。かつてあんなにもはっきりとした姿を見せていた世界がこんなにも不明瞭なものになるだなんて、予想もしていなかった。此処が何処か、それすらも分からなくなりそうだ。私は眩暈を覚えた。足元がぐらりと揺らいでいる。いったい私に何ができるというのだろうか。

 あれから一年近く経った。私は彼女と出会い、すぐに私は彼女に対して深い親愛の感情を持った。私は彼女と長い時を過ごして、その間に彼女は父とも会っていたという。彼女の生活がどういうもので、そこに何があったのかは解らない。そして彼女は私に、子供が出来たと話した。父の子だと言った。私はそれが理解できず、そのうちに父は死んでしまった。父は私に何一つ言い残してくれなかった。彼女は姿を消し、私は叔父に引き取られた。

 彼女の真意はとうとう解らなかった。子供が本当に父の子だったのかすら私は聞くことができなかった。何故彼女と父が知り合ったのかすら分からない。彼女は子供を産んだのだろうか。凡ての終わりは本当に唐突だったのだ。

 彼女は今どうしているのだろう。あの綺麗な貌を歪めて笑っているのかも知れない。彼女は私が憎かったのだろうか。私はあんなに、彼女が好きだったのに。何のつもりで、私に近付いたのだろう。彼女さえ私の世界に来なければ、私の完全な世界は生き続けただろう。たとえ彼女の言った通りに、それが欺瞞に満ちたものであろうとも。彼女は今どこにいるのだろう。彼女は私から何を奪っていったのだろう。完成された少女は私の何が必要だったのだろう。

 今の私には何一つ分からなくなってしまった。もう一度彼女に会うべきだろうか。おそらく、そうすることには何も意味がないだろう。それでも私は、彼女に会いたいのだ。この感情は既に私には制御できないくらいに、膨張してしまった。私は彼女に会わなくてはならない。

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