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恋人賞  作者: 楼
1/7

冬の雪山

 夜の帳が降り昼の間に降っていた雪もすっかり止んだ冬の夜。


 連なる田舎の山々の中でも頭一つ抜けた小高い山の上。

 

 そこから見る風景は絶景そのもの。

 南は無限に広がる山の頂き北はこれまた無限に広がる水平線。 


 春一番に吹かれると西の桜が桃色に咲き。梅雨が開けると辺りは緑に染まり。

 台風が過ぎると東の紅葉が色づき。雪が降り始めると霜が降り銀世界が訪れる。


 そんな地元の人間しか知らない穴場中の穴場。どこの誰が決めたが知らないが、ここの風景はネットへの掲載は禁止。旅行者にも教えてはならない。


 そんな隔絶された自然の中に一人の少年が佇んでいた。

 その首からは一眼レフを下げている。


 少年は山頂にそびえ立つ樹齢200年と言われている一本杉の下で、三脚で固定したカメラを構えている。

 水平線とその上に広がる満点の星空をモニターに収め、シャッターをきる。


 モニターに映る写真の出来栄えに1人で満足し、鼻息をふんと鳴らす。

 今度は山側を取ろうと杉を回り南側にカメラを向けシャッターをきる。


 霜が降りた木々の世界は幻想的で神秘的で寂しげに見える。だが写りこむうるさいぐらいの星空が大自然を物語っていた。


 そして杉の下から体を出し降り積もる新雪を踏みしめる。持ってきていたマットを雪の布団の上に広げ、その上に仰向けに寝転ぶ少年の視界は満天の星空に支配されている。

 カメラも構えず、ただ見ているだけ。


 氷点下に近い気温の中寝っ転がる少年は何も考えず何も聞かず何も視ようとしなかった。


 ふと見下げた視線の先に構える一本の杉____枝の一つ一つに霜が降りた白の化身。


 その圧倒的な存在感に少年は惹かれた。

 そんな少年の高揚を言い表すかのようにその頭上では星がふり始めた。

 もともと少年の目当てはこの流星群。


 ひとつ、またひとつと星が大気圏に入りは燃え尽きる。

 大自然の奇跡に魅せられた少年は半ば反射的にカメラを構えフィルムに写真を溜めていく。


 降り注ぐ流星と月光に白く煌めく樹氷を同時に枠に写していく。


 興奮が抑えられず聞き取れなかった悲鳴。

 空から星以外のそれが降ってきていることも知らず少年がシャッターをきり続けること数分。




ボスッ____。

 何かが雪に埋まる音に、少年は振り返る。白い新雪に出来た小さな人型の穴に近づいていく。


「ばあっ!」


 穴から何が勢いよく飛び出した。

 その少女の髪は長い金髪で、目はルビーの様に紅い。どことなく幼く見える顔立ちは整っていて、まるで人間には見えなくて……。


「天使?」


 少年はそんな言葉をぽつりとこぼした。

読んでいただきありがとうございました


ぜひ次回も読んでいただければと思います

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